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  • 執筆者の写真昭二 西村

ブランディングとマーケティングの違い

更新日:2023年12月4日

総合大手広告代理店に17年勤め、広告トータルプラニング会社を設立した著者としては、「ブランディングは、売れ続ける仕込みづくり」で、「マーケティングは、売る仕組みづくり」という表現が最も適していると思います。更に、ベン図のように考えると「ブランディングはマーケティングの中心に位置する」とお考え頂ければと思います。


これらの「ブランディングとマーケティングの違い」について、4つの視点に基づいてご説明していきます。


本稿はこのような方におススメ!

✔ ブランディングとマーケティングの違いがわからない

✔ マーケティングは実施してきたがブランディングが必要な気がする

✔ ブランディングはユーチューバーのものだと認識していた


 

目次:ブランディング戦略とマーケティングの違い



 

「ブランディングとマーケティングの違い」はずっと曖昧だった

ブランディングとマーケティングってそもそも違うのか?どこが違うのか?結局ブランディングってイメージ戦略であって、マーケティングの一部であるプロモーションの「イチ手法」ではないか?とこれまでも多くの方にとっては曖昧だった両者。


その曖昧さは、ユーチューバーやインフルエンサーたちがとみに「ブランディングとは」と語るようになって、より言語的に整理されなくなっているかと思います。著者が総合大手広告代理店に勤務していた17年間のうち、「ブランディングって商品ではなくイメージ広告」「ブランディングってCMで創り上げるもの」という間違った解釈が蔓延していたと感じています。


幸いなことに、この長年続く不況の日本において、著者は多くの「成長ブランド」を担当してきました。その経験から、「ブランディングとマーケティング」を整理し、かつ「成長しやすい定義」を見出すに至りました。それは、一概に表現すると「ブランディングは、売れ続ける仕込みづくり」で、「マーケティングは、売る仕組みづくり」となりますが、どういう点に立脚するかでより具体化されますので、4つの視点に基づいてご説明していきます。


4つの視点とは「目的」「対象」「要素」「主体者」となります。それぞれについて詳細はご説明しますが、凡そ下図のようになります。

ブランディングとマーケティングの違い

 

「ブランディングとマーケティング」は【目的】が違う

1つ目の視点は、「目的」です。マーケティングは「マーケット=市場」が言葉の中に含まれています。しかし、ブランディングは市場を超えていきます。少し概念的ですので、NIKEでご説明いたします。NIKEと聞けば、ロゴを中心とした「あらゆる商品」を思いつくでしょう。スニーカー、スパイク、バスケットシューズ、帽子、Tシャツ、パーカー、そしてそれらを身にまとったアスリートたち。。。


マーケティングはこの「商品」の方に着目した考え方です。例えばスニーカーの場合、NIKEのスニーカーが戦う市場は「スニーカー市場」となります。スニーカーの中でVANSやNEW BALANCEという競合と戦うにあたり、シェアは何位で、販路構成はどうなっていて、価格帯はどうなっていて、などを、それこそ日本やヨーロッパなどの国やエリアそれぞれで分析して、市場でシェアを拡大する、または市場自体を大きくするための4P(別のマーケティング・ミックスでも可)戦略を構築します。常に、消費者、競合、自社と3つの視点で市場を見て、具体の4P戦略に落とすこととなります。これがマーケティングです。スパイクはスパイク市場、帽子は帽子市場、と商品によって、市場が異なりますので、その市場ごとに分析して戦略構築することが必要となります。


しかし1点、非常に重要なことがあります。それはマーケットには必ず「栄枯盛衰」が存在するという点です。タピオカミルクティー、一時はあれだけブームになって、今は下火になっています。このように市場には必ずライフサイクルが存在します。このプロダクト・ライフ・サイクルと呼ばれる、栄枯盛衰がマーケティングには存在するのです。よって、永続的に「同じ市場」であり続け事は難しく、マーケティングは「(イマ)売れる仕組みづくり」となるのです。


ただし、ブランディングは異なります。そのブランドを時代にあわせてか、未来を先取りしてかは別にして「今までのブランドの、世の中に対する役割を変える」ことができます。この「世の中に対する役割の変化」をリブランディングと呼びます


先のNIKEの例のようにあらゆる商品、つまりは市場に対して、ブランドは存在できます。ブランドの価値がその市場にどのような影響を及ぼすかによって、ロゴを大きくしたり小さくしたり、サブブランド展開をしたりと手法については数多ありますが、市場のカテゴリーを超えていくことができます。これをカテゴリー・エクステンションと呼びます


つまり、複数の市場に立脚できるがために、一つの市場の栄枯盛衰だけに影響を受けることなく、ブランドさえ強ければ生き続けることが可能です。まさにNIKEが好例です。つまり、ブランディングとは「売れ続ける仕組みづくり」となるわけです。ここでよく広告代理店やクリエイターが語る「ブランディング」と根本的に異なることがおわかりになるかと思います。


NIKEの事例で言うと、「有名アスリートのCMを創りましょう!」が彼らの定義する「ブランディング施策」です。本来的なブランディング施策は「世の中に対する役割を、言語とビジュアルで規定する」ことであり、それはCMなどのプロモーションは最後のことであって、合議でディスカッションして規定し、社内からきっちりと浸透させ、最後に社外に対してプロモーションを行うというステップを踏みます。このあたりの詳細は「【完全版】ブランディング戦略とは」をご覧頂ければと思います。

ブランディング

売れ続ける仕組みづくり

マーケティング

売れる仕組みづくり


 

「ブランディングとマーケティング」は【対象】が違う

2つ目の視点は、「対象」です。マーケティングの対象は「価値」です。価値を、どういう商品で、いくらで、どういう販路で、どういう手法で伝達するか、が4P(Product、Price、Place、Promotion)に代表されるマーケティング・ミックスとなります。商品、つまりProductが決してマーケティングの対象ではありません。「価値を具体化したもの」が商品です。


「デジタルマーケティング」を標榜される方の中には、極めてプロモーションに立脚した視点で、つまりは販路や価格帯や、それこそ商品を軽視した論調が散見できます。それは「価値」を対象としていないからだと著者は考えています。確かに、インターネットの普及によってD2C(Direct To Consumer)ビジネスが隆盛し、「売り方」の方がフォーカスされやすい環境にはなったのだと思います。


どう言うか、に視点が行き過ぎて、そもそもの「価値」が明確化されていないケースが多いのではないでしょうか。マーケティングの対象は「価値」であり、それをいくらで、どういう商品で、どういう販路で、がまずあってのどういう手法で伝達するか、の順番になります。


一方、ブランディングは「価値観」が対象になります。少し曖昧に感じるかもしれませんが、このブランドが「なぜ存在し」「何を目指していて」「どういう世の中を作りたくて」「どういう人の課題を解決するのか」「そのためにどういう名前で」「どういうロゴで」などを規定することになります。


つまり、「価値を創るもととなる考え方」であります。本項冒頭で「ブランディングはマーケティングの中心に位置する」とした答えがここにあります。著者は、マーケティングの上位でも一部でもなく中心にブランディングは位置する、と整理するに至ったのは「成長を続けるブランドがそのような思考だったから」に他なりません。


その「価値観の具体化と計画」がブランディング戦略となります。ブランディング戦略立案についても、詳細は「【完全版】ブランディング戦略とは」をご覧頂ければと思いますが、マーケティングの対象は価値、ブランディングの対象は価値観と整理頂ければと思います。

ブランディング

価値観

マーケティング

価値


 

「ブランディングとマーケティング」は【要素】が違う

3つ目の視点は、「要素」です。事業の3要諦は「ヒト」「モノ」「カネ」です。マーケティングはマーケティング・ミックスの4Pに「ヒト」「モノ」「カネ」のすべてを駆使して「売れる仕組み」を作る活動です。実は「ヒト」「カネ」の問題から商品化できないものは多々存在します。


これまで食品メーカーであったなら、急には通信キャリアにはなりませんし、税理士事務所にもなれないと思います。前者は「カネ」が問題になり、後者は「ヒト」が問題となります。現行保有している資産の中から実現可能で、可能な限りメリットが大きくリスクが低い市場を選ぶことになります。


しかし、ブランディングは、しいて言うなら「モノ」にフォーカスしながら「理想」を語り、「売れ続ける仕組み」を作っていく活動です。言語とビジュアルで未来予想図を設計していく一連のプロセスになりますので、あまりにも現実離れしていなければ問題ありません。「マーケティングは「ヒト・モノ・カネ」を検討し、ブランディングは主に「モノ」に未来を託していくと整理頂ければと思います。

ブランディング

モノに未来を託していく

マーケティング

ヒト・モノ・カネを検討する


 

「ブランディングとマーケティング」は【主体者】が違う

4つ目の視点は、「主体者」です。マーケティングの主体者は紛れもなく「企業」です。これは疑う余地がありませんね。しかし、ブランディングは「企業と生活者」の双方の共同作業となります。ブランディングのゴールは「人の認識」です。ですので、どうしても企業単独では実現ができません。ブランドの完成図は常に人の頭の中に構築されるため「マーケティングは単独作業、ブランディングは共同作業と認識頂ければと思います。


​ブランディング

共同作業

マーケティング

単独作業


 

まとめ

これまでブランディングとマーケティングが曖昧だったとして、本稿はいかがでしたでしょうか?17年勤めた総合大手広告代理店時代も、そして広告トータルプランニング会社を設立してからも、著者はその双方のサポートをしておりますが、少しでも本稿が皆さんのお悩み解決に生かされればと思います。


 

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