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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

【完全版】ブランディング戦略とは?マーケティングやプロモーションとの違い

更新日:4月12日


はじめに

「ブランド」とは、古代スカンジナビア語の「brandr」(焼き付ける)が語源です。自らの家畜に焼き印を押すことで、他と見分けがつくようにしたのです。コカ・コーラと聞けば、「赤」「炭酸」「マーク」「おいしい」「飲みたい」などと人はイメージや感情がわきます。マクドナルドと聞けば「Mのマーク」「黄色と赤」「おいしい」「安い」「ランチ」「家族」「食べたい」とイメージや感情がわくかと思います。これが、ブランドであり、この頭の中にイメージや感情を生み出し、購入意向、さらには継続購買や他者推奨まで設計を描くことが「ブランディング」となります。


「ブランド」と相対するのが、「コモディティー」です。例えば「下着」といったような一般名称で呼ばれるようなものがコモディティーとなります。それが「ヒートテック」となれば、「機能的」「暖かい」「欲しい」といったイメージや感情、購入意向を伴ったブランドとなります。もともとは今でいう「コモディティー」ばかりのビジネスではあったものの、1879年にP&G社が「アイボリー」という小型包装のせっけんを発売したことで、「品質保証」のイメージを獲得して、ブランド化したのが初めての「ブランディング事例」だと言われています。


兼ねてより「ブランディング」については様々な定義が存在しています。学者によって、そして会社によって、更には一つの会社の中でもいくつもの定義が存在していると思います。17年間総合広告代理店に勤め、今も広告トータルプランニング会社である当社を営んでいる著者として「どれが正解」かとは言い難いです。その理由は、ブランディングの目的やプロセス、その方法への理解不足や、理解してもなお曖昧になる「ブランディング」という定義が「何と」「どういった点で」比較するかによって一言では表しづらいためだと考えています。


失われた30年を過ごしている日本において、著者は幸いなことに多くの「成長ブランド」を担当させて頂きました。その中で、「どういった目的設定、プロセスの採用、そして明確な定義や解釈をしたことでブランドが伸びるのか」という方程式のようなものを理解するに至りました。それはひとえに、ブランドの成長を共に経験させて頂いたクライアントの皆様のおかげでもあります。


コロナ禍及びウクライナ情勢などによって値上がりを要請される企業が増え、同時に中価格帯ブランドが軒並み不調に転ずる昨今、「ブランディング」というものに注目が集まっているかと思います。そして、その「ブランディング」を戦略的に構築するための戦略が「ブランディング戦略」となります。本稿では、著者が幸運にも経験させて頂いた「成長につながるブランディング戦略の3つのステップとマーケティングやプロモーションとの違い」についてご説明いたします。


本稿はこのような方におススメです!


✔ コロナ禍で売上が下がりブランディングとその戦略立案の必要性を感じている

✔ 商品価格が下がり続けているためブランディング戦略が大事ではと考え始めている

✔ ブランディング戦略とプロモーション戦略の違いがよくわからない

✔ ブランドとプロダクトの違いがよくわからない

✔ ブランディング戦略とイメージ戦略との違いがわからない


 

目次:【完全版】ブランディング戦略とは?マーケティングやプロモーションとの違い

 

重ねますが、ブランディング戦略について数多くの説が存在します。著者も数多くの「説」「定義」に接してきました。その中でも最も網羅的であり、本質的だった定義が「ブランディング戦略は、売れ続ける仕組みづくり」という定義です。正直、こちらの定義は否定のしようがありません。


よって、あくまでブランディング戦略の目的は「企業/商品/サービスが売れ続ける仕組みを作る」ことにあるとさせて頂きます。決して、「値上げのための施策」でも、「経営者の自己満足」でも、「売りとは無関係のこと」でもないのです。


極めて重要なことは、決して「イメージ戦略」「雰囲気づくり」ではないという事です。イメージ戦略との違いは後述しておりますが、「良く思ってもらおう」ということよりも「どうありたい」の方が重要ですし、「表層的で短絡的な好感度向上施策」に、今の生活者はとても敏感です。どなたでも、「好感度を上げるためでしかないな」という広告などはお分かりになるかと思います。まずはこの点から本稿のご説明を開始していきたいと思います。


 

ブランディング戦略には大きく以下6つのメリットがあります。いずれも、コロナを経て、スタグフレーションが進行する現在の日本において、中価格帯で売上不振に悩む企業や商品には得たいメリットではないでしょうか。


・品質保証効果:きっと安心・安全で信頼できるだろうと考えてもらえる

・価格競争不要:機能等が認識されていることで競合に対して価格を下げる戦いを挑まなくて済む

・指名買いの獲得:買うなら、来るなら、「コレ」と思ってもらえる

・リピーターの獲得:また買おう、来ようと思ってもらえる

・推奨の獲得:人に薦めたいと思ってもらえる

・従業員モチベーション向上と人材採用への貢献:このブランドに携わりたいと思ってもらえる


いまビジネスで苦しんでいる方々には魔法のようなメリットかもしれませんが、それだけ日本でブランディング戦略をきちんと立案している企業や商品が少ないということの裏返しではないでしょうか。スタグフレーション下においても持続的成長を実現できている企業や商品の多くは、多少やり方が違う可能性はありますが、ブランディング戦略を実行できているのではないかと考えています。

 

ブランドの計測方法は基本的には「認知」で測ります。認知の計測方法には「助成想起=再認」と「純粋想起=再生」の大きく2種類があります。前者の「助成想起=再認」は「●●は知っているか?」と質問されて「知っている」と答えることです。これを「助成想起率=再認率」と呼びます。後者の「純粋想起=再生」は「△△をしたいときに思い浮かぶブランド」のことです。


人はなにかをするときに、平均2.3の選択肢を持つと言われています。「週末に子どもと何をしよう?」と考えて「旅行、買い物、公園」と思いつく選択肢です。「コーヒーを何にしよう?」と考えて「セブンイレブン、スターバックス、自宅」と思いつく選択肢でもあります。これを「純粋想起率=再生率」と呼びます。そしてこの選択肢の群のことを考慮集合と呼びます。著者も所属していた総合広告代理店ではどちらかというと「助成想起=再認」に貢献するようなTVCMを提案している例を見ることが多かったように思います。


しかしながら、「仕事・バイト探しはインディード」のように、「(仕事)バイト探しをしよう」と考えて「インディード」と思いつかせる、「純粋想起=再生」に貢献するプロモーションの方がブランドの売上に寄与することは想像に難くないのではないでしょうか。純粋想起の1つ目の選択肢に選ばれることは、Top Of Mind(TOM)と呼ばれており、現在ではこちらの方が主流になっていると思います。


さて、この「純粋想起=再生」の計測方法は、インターネットでの定量調査を定点で行っていくことが最もわかりやすいのですが、「買う時に調べる」ような高価格帯、さらには自社ECのように販路がネットである場合には、「カテゴリー市場の検索数」と「自社ブランドの検索数」とを比較することでも「純粋想起率=再生率」の動きを推察することは可能です。ブランド計測方法は、主に2種あり、現在では「純粋想起率=再生率」で計測することが多いとご認識頂ければと思います。

助成想起=再認

聞かれれば「知っている」と答える

純粋想起=再生

何かをしようとしたときに挙がる選択肢

考慮集合

何かをしようとしたときに挙がる選択肢群

Top Of Mind

何かをしようとしたときに挙がる第一の選択肢

 

次に、ブランディング戦略立案のステップについてご説明いたします。ブランディング戦略立案は大きく3段階のステップを踏みます。「①ブランド体系の完成」→「②インターナル施策」→「③アウター施策」です。特に「①ブランド体系の完成」「②インターナル施策」が抜け落ちた形で、「③アウター施策」となるケースが多いように見受けられますが、重要なことはむしろ①と②のステップをしっかりと踏むことになります。実は、この点が成長したブランドの共通項でありました。


ブランディングのステップ
ブランディングの3ステップ

確かに社会の変化のスピードは秒進秒歩で速まっています。①と②のステップを踏んでいたら世の中が変わってしまう、とお考えの方もいらっしゃるとは思います。しかし、拙速でメンバーの共通認識がうまれない中で、バラバラに③アウター施策だけを行ってしまっては、結果的に非効率な活動になってしまいます。そして冒頭申し上げたような、「付け焼刃の好感度向上施策」になりかねません。今の生活者はそういった活動に対して批判的になりやすく、逆効果にもなってしまうのです。


また、かつて、CIやBIといった「ロゴ」を中心にパッケージ開発まで手掛けるデザイン系のブランドコンサルティングファームが①②のワークショップを行っていた際は、基本的に「半年がかり」のプロジェクトでした。しかし、今はブランド体系もある程度フォーマット化され、メールや掲示板によって社内への情報流通もしやすくなった中で、そのように時間がかかり過ぎることはない、と著者は考えています。当社のBRAND PALETTEもそのような問題意識からうまれたサービスではありますが、①②をスピーディーに実施する、と考えれば問題ないのではないでしょうか。

ステップ①

ブランド体系完成

ステップ②

インナー施策

ステップ③

アウター施策

 

ブランド体系を完成させる際、まず初めに行うことは「主体となるブランドはなにか」という事になります。大きな考え方として「マスターブランド体系」と「個別ブランド体系」の2種類があり、ベンツはマスターブランド体系を採用しており、トヨタは個別ブランド体系を採用しています。


ベンツはCクラスやSクラスと言ったベンツという企業ブランドの中で機能価値の違いでシリーズ展開しています。マスターブランド体系のメリットは「ベンツ」というマスターブランドの価値を高めさえすれば個別の車種が恩恵を受けやすい点にあります。逆にデメリットはマスターブランドの価値が低下してしまった時点で、全車種の価値が低下してしまう点にあります。どれか1車種でリコールが起こった場合、全車種にその「不安」「不信」が伝搬することになるのです。


個別ブランド体系を採用しているトヨタは、ハリアーやクラウンと言ったように、個別の車種でブランドを展開しています。マスターブランド体系とは異なり、トヨタという企業ブランドが築いた価値の恩恵は受けづらいですが、どれかの車種でリコールがあったとしても、他の個別ブランドには影響を与えづらい点がメリットです。どちらのブランド体系を採用するのか、マスターブランドをどのブランドにするかをきちんと規定したうえで、体系創りに進みます。

ブランド体系

概要

メリット

デメリット

マスターブランド

企業ブランド中心に展開

ベンツ

全体貢献しやすい

リスクが全体に影響

個別ブランド

個別ブランド中心に展開

トヨタ

単独成立

全体貢献しづらい

 

ブランド体系に必須な要素は「VISION」「MISSION」「VALUE」「現在〜未来の市場定義」「ターゲット」「機能/情緒価値」「TONE&MANNER」「KEY COLOR」です。それらを、「言葉」と「ビジュアル」で合議によって規定していきます。この中でVISIONとMISSIONの違いが不明確だという話がよく上がってきます。一言でいうと、「VISION=ブランドが目指すゴール」で「MISSION=そのゴールを目指すときの課題の払しょく」となります。


また、MISSIONを明確にすることによってターゲットも決まってきます。ターゲットの定義が明確な事例としてLOGOSの「水辺5メートルから標高800メートル」が挙げられます。こちらは、MISSIONであれば「水辺5メートルから標高800メートルに存在する課題をすべて解決する」となりますし、ターゲットであれば「水辺5メートルから標高800メートルでの活動を行う人」とすることにもなります。


ブランド体系に必須な要素は連動しますので、逆に言うと、一要素と連動するその他要素の設計を行えばしっくりくるブランド体系が出来上がるのではないでしょうか。なお、すべて、広告をはじめとしたオリエンシートにも記載すべき内容になります。

VISION

ブランドが目指す ありたい 姿

MISSION

ブランドが世の中に対して解決したい課題

VALUE

ブランドの提供価値

市場定義

どういった市場を創りたいのか、戦うのか

ターゲット

どのような人に価値を提供したいのか

機能/情緒価値

VALUEをより機能面と情緒面で分解した提供価値

TONE&MANNER

ブランドの立ち振る舞い、パーソナリティー

KEY COLOR

ブランド接点で中心となる色

また、ブランド体系を完成する際に、必須となるポイントは5つあります。以下がその5つのポイントです。

ポイント①

社内(外)関係者の出席

ポイント②

数字

ポイント③

否定しない

ポイント④

事前準備

ポイント⑤

ファシリテーター

1つ目のポイントは「社内(外)関係者の出席」です。ブランドマネージャーが存在する場合でも、そうでない場合でも、「商品開発、宣伝、市場調査、パッケージ開発」等の社内の関係セクションのマネージメントと担当者が出席することを推奨しています。どこか一つでもブレて、ズレてしまっては、バラバラになってしまうためです。また、NDAをきちんと締結している外部パートナーが存在するのであれば、その方にも出席してもらいましょう。チームとして合意を形成することがなによりも重要なためです。


2つ目のポイントは「数字」です。上述のように関与者が増えれば増えるほど、どうしても自分たちの立場に立脚した主観的な意見になりがちです。必ず客観的なデータである数字を用意して臨むようにしてください。数字とは、対象とする市場の規模・自社売上&シェア・競合売上&シェア・純粋想起率・年間購入回数&金額等、他セクションや外部では知らないであろう数字の持ち寄りが極めて重要になります。あくまで客観的な事実を基にそれぞれの主観をぶつけて合意を形成していくことが大切です。


3つ目のポイントは「否定しない」です。ブランド体系を完成させるためには、普段の上下関係や部署間の力関係が如実に出てしまうと必ずバランスの悪いブランド体系になってしまいます。部下が上司にモノを言うことも、上司が部下の意見を肯定し続けることも、中々慣れない側面もあるとは思いますが、ブランド体系を固めるということに至った背景は自社の環境が芳しい状況ではないからこそ、なのだとは思いますので、忌憚のない意見を通わせるためにも、「否定しない」スタンスをいかにとり、普段は埋没された事実と正しい意見を吸い上げることに意識を集中させてもらえればと思います。


4つ目のポイントは「事前準備」です。ブランド体系を完成させるためのワークショップをコンパクトかつスピーディーに執り行うためには、徹底的に個々人でしっかり準備することが必須となります。前述のように複数の関係者に共通認識として伝わるよう「数字」の準備と自らのイメージの言語化やビジュアルを用意しておくことをおススメします。


5つ目のポイントは「ファシリテーター」です。社内で擁立する場合には、可能な限りフラットな判断ができそうな方を擁立してください。誰かに肩入れしたり、逆に敵対視してしまうと、健全なワークショップが実現しません。社外関係者などの第三者でも構いません。きちんと会の進行と取りまとめができる能力がありつつ、フラットさを担保できる方のアサインを心がけて頂ければと思います。この5つのポイントを踏まえて、ブランド体系を完成させていきます。


こうして出来上がったブランド体系に、今のCIやBIといったロゴは即しているのか。社名やロゴの近くに配する文言であるタグラインは変更しなくて良いのか、商品パッケージは適しているのか、HPは矛盾していないのか、広告物はズレていないのか、をチェックすることになります。


著者の経験上、このブランド体系を完成させた後で、以前のモノをそのまま継続利用することはありませんでした。必ず修正を加える、または刷新することになっていたかと思います。ここで、どのように変えていくのか、について関係者の各領域において、ブランド体系を用いながら、社内外の担当者に対してオリエンを行い、各所修正または刷新を行っていくこととなります。この際に、ロゴの改訂を加えたりタグラインを刷新する場合、すでに世の中にブランドが存在している可能性もあるため、必ず商標登録の確認をすることをお忘れにならないようにして頂ければと思います。


✔ CIやBIといったロゴは即しているのか

✔ タグラインは変更しなくて良いのか

✔ 商品パッケージは適しているか

✔ HPは矛盾していないか

✔ 広告物にズレはないか

 

ブランド体系及び今までとのロゴ・パッケージ・HP・広告の変更点等がまとまったところで、社内及び株主等の生活者以外のステークホルダーに浸透させます。会社の規模やブランドの影響範囲にもよりますが、ブランドマネージャーまたはプロジェクトリーダーからブランド体系及び新アウトプットを構築するに至った背景を踏まえ、規定された要素を共有していきます。可能な限りワークショップに参加する人数は多いほうが良いですが、さすがに全関係者の参加は難しいので、このインナー共有がバラバラになることを回避するためにも非常に重要なプロセスになります。


もしかしたら、完成したブランド体系や各種アウトプットに対する「穴」「リスク」のようなものも見つかる可能性もあります。強い意志を持ってブランド成長をさせていくべきで、原則的には参加者に権限が委譲されていようとも、このステップでフラットで客観的な視点を加えていくことも大切なのです。


✔ 背景情報も含めて丁寧に社内共有

✔ 関係者からの指摘も真摯に検討

 

インナーへの共有が済んだところで、アウターに対してお披露目を行っていきます。ブランド体系に則った、新しいロゴやタグライン、HP、商品パッケージ、広告等のすべてがアウター施策となります。会社によっては専用のリリースを発信することもありますし、広告を実施することもあります。このアウター施策は当然大事なステップとなります。


特に、新ブランドではなく、既存ブランドの場合は、このタイミングで正しく生活者に認識され、理解されないと、逆に既存顧客に逃げられてしまい、予定していた売上に到達しなくなってしまうリスクも孕んでいるためです広報・広告の両面から、丁寧に世の中に対して発信をしていくことが肝要となります。


また、新たなロゴとタグラインを用意した場合には、そのブランドを公的な存在とするための「商標登録」も忘れてはならないステップです。いかに優れたものであっても、商標登録しないと他社にコンセプトを盗まれるリスクもあります。社内で商標登録担当チームがあれば問題ないかとも思いますが、そういったセクションが無い場合は弁理士に依頼して商標登録を済ませて頂ければと思います。


✔ ロゴやタグラインを改訂または刷新した場合は丁寧に世の中に発信

✔ 必ず「商標登録」も行う

 

具体的な3つのステップについては上述の通りです。目的もお伝えしました。しかしながら、「マーケティング戦略」「プロモーション戦略」「プロダクト」「イメージ戦略」との違いが明確にわからない方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここからは「マーケティング戦略」「プロモーション戦略」「プロダクト」「イメージ戦略」との違いを浮き彫りにすることで、よりブランディングの輪郭をはっきりさせていければと思います。


ブランディング戦略とはなにか
ブランディング戦略とはなにか

ブランディング戦略との違いが曖昧なコトバ

・マーケティング戦略

・プロモーション戦略

・プロダクト

・イメージ戦略

 

ブランディング戦略はマーケティング戦略は別物、という理解は浸透していると思います。「両者はどうやら違うらしいぞ」という感覚があるのだと思います。しかし、両者の関係がどういうものなのか不明瞭かと思います。まず、「ブランディング戦略はマーケティング戦略の一部」という定義を聞くことはあります。


しかし、マーケティングミックスの4Pのどこにも「ブランディング」が含まれていない時点で疑問が生じるとは思います。また、「ブランディング戦略はマーケティング戦略とは別に存在する」という定義を聞くこともあります。しかし、著者としては「ブランディング戦略はマーケティング戦略の中心に位置する」と考えております。ご説明する点も踏まえて両者の違いを図示したものが以下になります。


ブランディングとマーケティングの違い
ブランディングとマーケティングの違い

さて、具体的に、ブランディング戦略とマーケティング戦略の違いを、「目的」「対象」「要素」「主体者」という4つの視点で見ていきます。

​ブランディング戦略とマーケティング戦略の違いを明確にするための4つの視点

視点①目的

視点②対象

視点③要素

視点④主体者

1つ目の視点は、「目的」です。前述のようにブランディング戦略の目的は「売れ続ける仕組みづくり」です。対して、マーケティング戦略の目的は「売れる仕組みづくり」となります。ブランディング戦略の計測方法が「認知」であると上述した通り、短期的な売上にどう貢献したかをブランディング戦略では測ることはできません。しかし、のれん代と言ったブランドプレミアムが存在する以上、市場における平均価格よりも「プレミアム」に乗っている分、売上に貢献しているのです。さらに、生活者のブランド選択時にもその想起が貢献していることは言うまでもありません。「マーケティングは売れる仕組みづくり、ブランディングは売れ続ける仕組みづくり」と整理できるかと思います。


2つ目の視点は、「対象」です。【完全版】プロモーションとは?戦略立案13ステップと9つのフレームワーク」でもご説明している通り、マーケティング戦略の対象は「価値」です。価値を、いくらで、どういう商品で、どういう販路で、どういう手法で伝達するか、がマーケティングミックスになります。一方、ブランディング戦略はこれまで説明してきたように、「価値観」が対象になります。より複雑にお感じなるかもしれませんが、上述のように要素はある程度決まっていますのでご安心ください。「マーケティング戦略は価値、ブランディング戦略は価値観」と整理頂ければと思います。


3つ目の視点は、「要素」です。事業の3要諦は「ヒト」「モノ」「カネ」です。マーケティング戦略はマーケティング・ミックスの4Pに「ヒト」「モノ」「カネ」のすべてを駆使して「売れる仕組み」を作る活動です。ブランディング戦略は、主に「モノ」にフォーカスする形で客観的な事実である各種数字を参考にしながらも、「理想」を語り、「売れ続ける仕組み」を作っていく活動です。「マーケティング戦略は「ヒト・モノ・カネ」全てを駆使し、ブランディング戦略は「モノ」に未来を託していく」と整理頂ければと思います。


4つ目の視点は、「主体者」です。マーケティング戦略の主体者は「企業」です。これは疑う余地がありませんね。しかし、ブランディング戦略は「企業と生活者」の双方の共同作業となります。プロモーション戦略との違いの項でも後述しますが、ブランディング戦略はあくまで「人の認識に影響を及ぼす」作業であるため、どうしても企業単独では実現ができません。ブランドの完成図は常に人の頭の中に構築されるのです。「マーケティングは単独作業、ブランディングは共同作業」と認識頂ければと思います。


この4つの視点での違いがブランディング戦略とマーケティング戦略との違いとなります。

視点

ブランディング戦略

マーケティング戦略

目的

売れ続ける仕組みづくり

売れる仕組みづくり

対象

価値観

価値

要素

「モノ」に未来を託す

「ヒト」「モノ」「カネ」を駆使

主体者

共同作業

企業の単独作業

 

17年間総合広告代理店に勤めた著者は毎日何かしらの「プロモーション」に携わってきました。これは全広告代理店勤務者に言えることなのではないでしょうか。「ブランディング」についても関わってきたと考える広告代理店の方も多いとは思いますが、「イメージCM」のことを「ブランディング」と定義する認識が蔓延していますので、その点は著者の見解と若干異なるのかなと考えています。ですので、ブランディング戦略とプロモーション戦略の違いを「売上」「対象知覚」「対象」「差別化」「志向」の5つの視点でご説明していきます。

ブランディング戦略とプロモーション戦略の違いを明確にするための5つの視点

視点①売上

視点②対象知覚

視点③対象

視点④差別化

視点⑤志向

1つ目の視点は、「売上」です。まずは売上という視点からブランディング戦略とプロモーション戦略の違いを見ていきます。結論から申し上げると、売上に対するブランディング戦略の貢献は極めて高いです。しかしながら、短期的なKPI設定のしづらさから、日本では浸透していません。短期的に売上が計測しやすい「新商品」開発にばかり躍起になり、並走する形で「新商品プロモーション」が主流でありました。高度経済成長を経て、いつの間にか日本は「プロダクト大国」になり、バブル崩壊を経てもなお「世界に比べて低成長なのに新商品だらけでしかも商品のライフサイクルが短く、それを実現するため日夜企業でサラリーマンが必死で働く国」になりました。「ブランディング戦略」はそういった新商品開発に奔走し続けることなく、きちんと「ブランドを育てる」という中長期的視点に立っ必要があります。「プロモーション戦略は短期的に売上を向上させ、ブランディング戦略は中長期的に売上に貢献する」とお考え頂ければと思います。


2つ目の視点は、「対象知覚」です。少しわかりづらい表現で申し訳ございませんが、このような表現以外思いつかないのです。簡単に言いますと、「ブランディング戦略は(頭の中という)認識に影響を及ぼす」ことであり、「プロモーション戦略は五感に影響を与える」という違いになります。商品や価格といった要素を視覚的に伝え、CM等では音楽で聴覚にも訴え、時にイベントなどでフレグランスを焚いて嗅覚を刺激して「提供価値を伝える」プロモーション。それとは異なり、ブラックボックスである人の「認識」に影響を及ぼす作業がブランディングです。「ナイキ」と聞いて、ロゴマークを思い浮かべる人や、マイケルジョーダンを思い浮かべる人、JUST DO IT!を思い浮かべる人など、様々です。残念ながら人の頭の中を完全にコントロールすることはできませんが、「どう思われたいか」「本当にそう思われるか」の可能な限りの検証は行えます。この検証作業こそ、ブランディングなのです。「プロモーション戦略は五感に訴え、ブランディング戦略は認識に働きかける」とご理解頂ければと思います。


3つ目の視点は、「対象」です。こちらはブランディング戦略とマーケティング戦略の違いの項でもご説明したこととなります。プロモーション戦略の対象は「価値」です。人に対する「ベネフィット」とも言い換えることができます。ブランディング戦略の対象は「価値観」となります。「自分たちがどういう存在になりたくて」「どういった社会課題を解決するために」「どんな人に対して」「どんな価値を提供することで」「どのような世界にしていきたいか」といったことが正に「価値観」です。「ビジョンドリブン」だったり、「パーパスドリブン」はこういった点からうまれている流行語だとは思いますが、基本的には「価値観を提示する」に包含されていることにお気づきになられるかと思います。「プロモーション戦略は価値、ブランディング戦略は価値観」と認識頂ければと思います。


4つ目の視点は、「差別化」です。ブランディング戦略も「差別化のために生まれた」と誤解されそうな部分はありますが、「本来、同じブランドなど世の中に2つとない」のが真実でありますので、「独自性は当たり前であって、差別化が目的ではない」とご理解頂けるかと思います。「もともと特別なオンリーワン」という歌詞にある通りです。差別化において、ブランディング戦略は上述のように多角的な視点から見れば必ず他とは異なりますので、多角的な視点で企業や商品やサービスを見れば独自性が浮かび上がってくるものです。その際「需要に合っているか」を気にしてはいけません。どうしても需要に合っているかどうかを気にしてしまいがちですが、顕在化した需要に合わせては競合と同質化してしまうからです。プロモーション戦略はそれで良くても、ブランディング戦略は需要合わせでは埋没してしまいます。多角的な視点で「違い」を浮き彫りにするだけで良く、その独自性をきちんと伝えていくだけで、その独自性を強く希求する消費者/顧客は確実に存在します。それを適切に表現していくだけで十分なのです。プロモーション戦略は逆に「需要に適合させること」が重要であるため、その特徴を端的に表現する必要があります。ブランディング戦略とは「多角的な視点を持つことで差別化される」と認識頂ければと思います。「プロモーション戦略は端的に、ブランディング戦略は多角的な視点で差別化を行う」とご理解頂ければと思います。


5つ目の視点は「志向」です。プロモーション戦略は、過去の課題を明確にして、それを解決する商品が今から世の中に出回らんとする「現在志向」が中心になるかと思います。それは新商品、商品リニューアルと手法は様々であったとしても基本的な志向は「現在志向」となります。対して、ブランディング戦略は上述の通り伝えるべき価値観「自分たちがどういう存在になりたくて」「どういった社会課題を解決するために」「どんな人に対して」「どんな価値を提供することで」「どのような世界にしていきたいか」は、すべて「未来志向」となります。つまり、「今を説くためのプロモーション戦略、未来を語るためのブランディング戦略」と整理することができるかと思います。


この5つの視点が、ブランディング戦略とプロモーション戦略の立案時の違いとなります。

ブランディング戦略

プロモーション戦略

売上

中長期的に売上に貢献

短期的に売上を向上

対象知覚

認識に働きかける

五感に訴える

対象

価値観

価値

差別化

多角的

端的

志向

未来志向で未来を語る

現在志向で今を説く

 

こちらはメーカー系の広告主で整理がついていないことが多かった印象があります。プロダクトプロモーションなのか、ブランドプロモーションなのか、が明確ではないことが多いのではないでしょうか。ブランドとプロダクトの違いについて、「対象」「事業」「貨幣価値」「ライフサイクル」の4つの視点に沿ってその違いをご説明していければと考えております。

ブランドとプロダクトの違いを明確にするための4つの視点

視点①対象

視点②事業

​視点③貨幣価値

​視点④ライフサイクル

1つ目の視点は「対象」です。ブランドは「そのロゴを冠するすべて」が対象となります。ケーススタディー事例で頻出するので、スターバックスに例えるとします。ロゴを冠した、店舗、カップ、スタッフのエプロン、リーフレット、エコバッグ、インスタグラムのアカウント、そのすべてがブランドとなります。逆に、実はロゴが載せられない「コーヒー」「ケーキ」などは対象ではない、となってしまいます。一方、プロダクトはその逆で、「商品」「サービス」そのもの、となります。先のスターバックスにおいても「プロダクト」は「コーヒー」「ケーキ」です。「新商品の告知」となった時点で、それはブランドではなくプロダクトが主語であり、「プロダクトプロモーション」となります。それが「新しい味」「原料」「コンセプト」などはすべて「プロダクトの価値を伝えるプロモーション」です。ブランディングはプロダクト以外の要素で「価値観」を提示していく活動ですので、新商品に至る「開発秘話」「開発担当者」「ブランドマネージャーの思い」などは「新商品にまつわるブランディング(プロモーション)」となるわけです。この対象の違いが不明瞭になり、なぜか「なんとなく良い感じを伝える広告がブランディング」という認識が蔓延しているように思います。「プロダクトは商品、ブランドはロゴを冠する全て」とご理解頂ければと思います。


2つ目の視点は、「事業」です。ただし、本項でご説明するのはあくまで「マスターブランド体系」の場合とお考え下さい。まず、プロダクトは1商品です。つまりは、「一つの事業の中でのみ存在する」ことを指します。逆にブランディングは「複数の事業にまたがって存在する」こととなります。こちらはも上述のナイキでご説明いたします。ナイキの「トレーニング用Tシャツ」でご説明していきます。Tシャツもその機能やデザインによって、アパレル事業なのかスポーツ事業なのかで分かれていきますが、こちらのTシャツはトレーニング時に着用するためトレーニング事業のプロダクトです。プロダクトは「価値を伝えるための形」ですから、プロモーションは「汗が渇きやすい」「ハードな動きへの伸縮性」等、訴求すべき価値、つまりはベネフィットは端的に表現できるかと思います。しかし、ブランドについては、Tシャツという形状から、アパレル事業も多少意識したうえでトレーニング事業を主眼に価値観を提示していかなくてはなりません。事業部採算制であったり縦割り組織であっても、一つの「ナイキ」というブランドで展開している以上、当たり前の検討となります。「ナイキブランドのトレーニングに対する価値観の提示」を中心にしながら、「ナイキブランドのアパレルに対する価値観の提示」も必要になるわけです。それぞれの「どのような人」に使ってほしいかを中心に、「ブラマネの思い」も提示していくのがブランディング戦略です。ブランディング戦略の方が複雑な視点が必要になるように見えますが、こちらはマスターブランド体系の場合であり、個別ブランド体系を採用している場合は、ほぼプロダクトとブランドは同義になるとお考えいただいて構いません。「プロダクトは1事業で完結し、ブランドは事業をまたがる」と整理頂ければと思います。


3つ目の視点は、「貨幣価値」です。ブランドとプロダクトはどういった形でその価値観と価値を貨幣価値に転換するかというと、ブランドは「ブランドプレミアム」です。プロダクトは「プライス」となります。プロダクトのプライスは皆さんがモノやサービスを購入する場合の「価格」ですので、何ら疑問はわかないかと思います。たとえば単なるコーヒーであれば1杯5円程度で自宅で飲めるでしょう。しかし、コンビニのコーヒーとなると150円、スターバックスのコーヒーとなると350円と価格が変わっていきます。プロダクトの価格に対して、上乗せされるプレミアムがブランドプレミアムになります。ファイナンスですと、それが「のれん代」としてきちんと算出されます。ブランドコンサルティングファームのインターブランド社が定期的にブランド価値ランキングを発表しておりますので、お時間がある際にご覧頂ければと思います。皆さんが「どうせなら●●」「せっかくだから××」「私はいつも△△」という思考の中に、必ずブランドが入ってきます。「プロダクトは価格、ブランドはプレミアム」と整理頂ければと思います。


4つ目の視点は「ライフサイクル」です。日本には「長寿ブランド」が数多存在します。株式会社明治のアーモンドチョコレートは1962年誕生で60周年を迎え、アサヒ飲料株式会社の三ツ矢サイダーは135周年を迎えています。チョコレートもサイダーも多くの競合商品が生まれてきましたが、「チョコレートと言えば明治」「サイダーと言えば三ツ矢サイダー」と言ったカテゴリーにおける純粋想起をとり続けていることが何よりも重要になります。また、富士フィルム株式会社ももとは「使い捨てカメラと言えば富士フィルム」でしたが、その市場の急速な衰退を見て、同じフィルム技術を活用できる化粧品をはじめとしたヘルスケア事業に乗り出しています。このようにブランドは、成長または安定市場においてはその市場における純粋想起を獲得し続けることで、逆に、衰退市場においては同じブランドで他市場に進出することでブランドを生きながらえさせることが可能です。この他市場への進出の作業が「リブランド」「リブランディング」となります。決してCMタレントを変更することではありません。対して、プロダクトについては、「プロダクト・ライフ・サイクル」があるように、必ず栄枯盛衰があります。上述のようなチョコレートやサイダーと言った安定した期間、つまりは成熟期が長い市場は珍しく、基本的には栄枯盛衰があるのです。しかも、日本はその栄枯盛衰が極めて速いのです。タピオカミルクティーも一時期大ブームになりましたが、今ではその人気は落ち着いています。導入期から成長期までの急速な上り方が「ブーム」の正体であり、ブームになると必ず衰退が待ち受けているのです。「プロダクトは栄枯盛衰があるが、ブランドは正しいブランディング戦略によって永久のものにすることができる」わけです。


この4つの視点が、ブランドとプロダクトの違いとなります。

ブランド

プロダクト

対象

ロゴを冠するすべて

商品

事業

事業をまたがる

1事業完結

貨幣価値

プレミアム

価格

ライフサイクル

永久

栄枯盛衰

 

主にSNSにおいて、インフルエンサーが「ブランディング」「自己ブランディング」「セルフブランディング」という言葉を用いることが増えたため、昔からある「イメージ戦略」と理解や解釈が曖昧になっていると感じられます。ブランディング戦略とイメージ戦略との違いを「主眼」「対象」「ライフサイクル」「生成方法」の4つの視点からご説明していきます。


1つ目の視点は、「主眼」です。ブランディング戦略の主眼は「存在意義の提示」となります。独自性の高い当該ブランドの価値観をきちんと「社会への存在意義がある」として提示していくことです。こちらはこれまでご説明してきていますので、ご理解頂けるかと思います。対して、イメージ戦略は、「好感度向上」のためにあります。昔からタレントは「好感度商売」でした。今は炎上などのリスクも高まり、よりその自分の好感度に対する意識が高まっています。「イメージ戦略はあくまで好感度向上でしかなく、ブランディング戦略の主眼は「社会への存在意義」まで至る」と言えるかと思います。


2つ目の視点は「対象」で、こちらはプロダクトとの違いの項でも出てきた視点となります。ブランディング戦略の対象は前述の通り、「ロゴを冠したすべて」になります。この「すべて」には「外側はもちろんのこと、内側」も含むため、ブランド体系の完成やインナー施策も必要になるわけです。イメージ戦略の対象はご想像の通り「外見的な部分」になります。なお、人物についても同様のことが言えます。ブランドの語源が古ノルド語で『焼き印をつける』という意味の「ブランドル(BRANDR)」である以上、「印」「ロゴ」は極めて大事だと考えています。かねてより、ジャニーズ事務所は徹底したブランド管理を行っており、「人の中でのジャニーズという認識」を極力コントロールすることに長けていたと思います。「ジャニーズ」と聞いた時に、所属するアイドル、タレントを思い浮かべる方もいらっしゃるとは思いますが、ロゴやサウンドロゴを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。ジャニーズ事務所をはじめとした大手芸能事務所は確かに所属タレントのブランディング戦略をしっかり立案していると言えるでしょう。しかしながら、2023年に性加害問題が明るみに出たことによって、ジャニーズ事務所はそのブランドイメージにおいて取り返しがつかないことになり、事務所名の変更を余儀なくされることとなりました。少し話は逸れましたが「イメージ戦略は外側のみを対象とし、ブランディング戦略はロゴを冠する、内側も含めたすべてが対象」となります。


3つ目の視点は、「ライフサイクル」です。この視点もプロダクトと同じです。イメージ戦略もプロダクト同様に、社会が求める需要が変遷するに従って、変えていくこととなります。どんなに強いイメージが形成されたとしても、それが「時代遅れ」と思われてしまったら、すぐにイメージを変えていかなくてはなりません。その変更が、モノやコトとは違い、ヒトとなると極めて難しいのです。強いイメージを形成できた人ほど難しいことは想像に難くないのではないでしょうか。芸人の世界でも一発屋と呼ばれてしまう方が多くいらっしゃると思います。先のジャニーズ事務所のケースはその典型です。一度培った強いイメージは中々崩すことができないのが現実なのです。「イメージ戦略は構築イメージが強ければ強いほどライフサイクルが短く、逆にブランディング戦略は永久のものにできる」ということが言えるかと思います。


4つ目の視点は、「生成方法」です。これまでご説明したように、ブランディング戦略は「いかに共有するか」がポイントとなります。「ありたい姿」「価値観」などを提示していくものの、最終の設計図は人の認識の中に出来上がるものであるため、一方的な発信では意味がありません。一方、イメージ戦略は「こう見てほしい」という一方通行の「発信」となります。それがいかに外見的で短絡的なものであり、内実が伴っていなくとも、「発信」に意味があるのです。「イメージ戦略は発信で、ブランディング戦略は共有」とご理解頂ければと思います。


この4つの視点が、ブランディング戦略とイメージ戦略の違いとなります。

ブランディング戦略

イメージ戦略

主眼

社会への存在意義(価値観)提示

好感度向上

対象

ロゴを冠するすべて(外側+内側)

外側

ライフサイクル

永久

栄枯盛衰

生成方法

共有

発信

 

ブランディング戦略の目的設定、3つのステップ、その他との違いについて、本稿でご説明してきました。著者も学者ではありませんので、これでもなお部分的な記述であろうことは自認しております。しかしながら、冒頭に申し上げたように、「失われた30年でも成長を遂げたブランドの、ブランディング戦略に対する共通項」ではありますので、ポイントとなる点はご説明できているかと思います。当社はあくまでブランドコンサルではなく、広告に軸足を置いたトータルプランニング会社です。いささかプロモーション寄りな見解が多く含まれるかもしれませんが、不況下の日本において、少しでも皆様のビジネスのお役に立てる情報であることを切に願っております。





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