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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

キャラクターを活用したプロモーションの「罠」

更新日:2023年12月4日

総合広告代理店勤務時代の17年の間に、アニメや漫画などのキャラクターを活用したプロモーションを多く担当してきました。「ワンピース」、「ガンダム」、「ポケモン」、「ドラえもん」などが代表的なものです。この、キャラクターコンテンツは、通称IP、Interllectual Properyと呼ばれていて、広告主から提案を求められることも多かったです。しかし、成功するケースと失敗するケースが明確にあるにも関わらず、何でもかんでもIPのパワーを借りているように見受けられるケースが散見できたことも事実です。本稿では、IPが適するケースと失敗してしまう理由について、ご説明していきます。

目次:キャラクターを活用したプロモーションの「罠」


IPとは「年を取らないタレント」

基本的には、漫画を原作として、のちに映画化やTVアニメ化されるごとに、その影響力を増し、多くのファンを集めていくIP。ファンも多数ついていることから、多くの企業がIPとタイアップして商品を作ったり、プロモーション利用しようと考える。「ドラえもん」や「クレヨンしんちゃん」「プリキュア」などが長年人気を博しています。数年前にヒットした「鬼滅の刃」のように、各社で「鬼滅の刃」コラボ商品が発売されることになります。なぜ、IPの人気が高いかというと、熱烈なファンがいることと、年を取らず、不祥事も起こさないことにあります。企業にとっては、ある程度顧客が見込め、リスクがないタレントキャスティングのようにとらえることができます。



IPには二つのタイアップ方法がある

商品に対してIPがコラボする形でオリジナル商品を作り上げる「商品化」と、プロモーションとして利用する「販促利用」とがあります。商品化の場合は基本的にはロイヤリティを版元に支払う形でビジネスが成立し、販促利用はIPによって全く条件が異なるものの、タレントと同じような契約形態だとご認識いただければと思います。しかし、タレントかそれ以上に、規定しているイメージや世界観がしっかりと存在するため、表現の自由度は少ないと考えて間違いありません。


IPを起用する際の注意事項

このように万能に見えるIPタイアップまたはコラボでありますが、広告主側は絶対に誤ってはいけないポイントがあります。それは、市場にローンチしたばかりの導入期には絶対に用いてはならないという事です。具体名は伏せるが、人気IPを用いたチョコ菓子は、中に入っている特典シールのみがコレクションの対象となり、チョコが捨てられるということが多発しました。さらに、某プロスポーツのポテトチップスについても、同様の現象が起こってしまいました。簡単に言うと、商品の本質価値よりも付加価値が上回ってしまったという事です。それでも良いのではないかと思うかもしれませんが、そのIP人気に陰りが見え始めた瞬間、その商品はもう急激なダウントレンドを余儀なくされます。IP側が自分たちを主体として商品を出す場合は問題ないが、メーカー側が導入期にIPタイアップを行うことはリスクでしかないと著者は考えています。


IPを起用すべきタイミング

逆に、どういうタイミングであればIPを活用すべきなのでしょうか。それは、「衰退期」です。この点は「衰退期のブランドに効果的なプロモーション施策とは」でも説明しています。すでに認知度も購入経験も高いが、衰退期に入ってしまっている場合は、店頭接点に近い場所でIPタイアップまたはコラボを行うことは抜群の効果を発揮します。決して「嫌いではない」商品やサービスであれば、IPグッズ欲しさにファンはいくつも商品を購入します。つまり、購入者数を増やすという間口拡大の時期ではなく、購入者は同じでも一人当たりの購入数を上げることによって奥行きを深めたい時期に、IPはその効力をいかんなく発揮するのです。


IP起用時に同時に行う事

衰退期にIPを活用して業績のV字回復を実現できたとして、同時に行わなければならないことがあります。それは他市場への進出です。衰退期に、IPの力を借りて一時的に売り上げを上げたとしても、それは前項でも説明した本質価値への評価とは異なるため、効力は一時的なものになります。それでも、売上回復については重要なのですが、いずれダウントレンドとなることは間違いありません。衰退期のIP活用を、ある種の時間稼ぎと考え、新たな商品を違う市場に上市する計画を進める時期なのです。


IPの功罪を説明してきましたが、タイミングさえ見測ることができれば、抜群の効力を発揮します。版元との調整や交渉は大変ではありますが、確実に効果を得られる一手としてマーケティングコミュニケーション戦略の構造内には入れておくべきだと著者は考えています。「広告トータルプランニング会社」となった今でも、IPを提案することが多いのですが、IPの「罠」にかからず、適切な対応をすることで、ビジネスに貢献することは間違いないと考えています。

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