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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

今の時代に「売る」ための「広告キャッチコピー」開発のポイント

更新日:2023年3月22日

世の中には数多くの広告キャッチコピーが存在する。SNS内の広告やバナーなど、もう数えることすら難しい。17年間の総合広告代理店勤務時代に、著者も数えきれないほどのキャッチコピーと暮らしてきた。クリエイターから案が上がってきた瞬間、「上手だな~」と思えるキャッチコピーも多かったが、きちんと広告対象物を売り上げるに至ったというキャッチコピーは少なかった。その中で、売り上げにつながるキャッチコピーに一つの成立要件を見出すに至ったが、本稿ではその点について説明していく。

※2022年9月30日改稿


本稿はこのような方におススメです


✔ キャッチコピーを考えなければいけないがどういうコピーが正しいかわからない

✔ 安売り・セールのコピー以外に効果が出ない

✔ 商品のポイントを紹介するコピー以外は思いつかない

✔ どのコピーが正しいのか目利きができない


目次:今の時代に「売る」ための「広告キャッチコピー」開発のポイント


コトバ商売の中での広告キャッチコピーとは

広告以外にも、数多くコトバを売り物にする商売がある。本稿では「雑誌」「ドラマ」に限定して、それらと広告のキャッチコピーの違いを説明する。まず、「雑誌」のキャッチコピーについて。「雑誌」のキャッチコピーはとくにファッション誌などは「流行」を生み出すことを目的としている。それによって、「流行の生みの親」という立ち位置を獲れることとなり、結果的に雑誌の販売に貢献する。雑誌、特にファッション誌はいかに流行を生み出し続けるかが生命線であるため、至極当たり前のことだ。気をつけなければならないのは、それによって商品を売るという目的ではないことである。この点が、広告のキャッチコピーとの違いがある。次に「ドラマ」について説明する。TVドラマはタダで見ることができる。どのセリフが流行るかはわからないため、ドラマのストリーの中で決め台詞を数多設けるようになる。こちらはたった一言で勝負する広告のキャッチコピーと全く異なる。また、雑誌同様にその一言によって人に何かを購入させる目的でもないため、雑誌よりもさらに広告のキャッチコピーと性質が異なるのである。しかしながら、広告代理店勤務時代、まるで「雑誌」や「ドラマ」のようなキャッチコピーに数多く出会ってきたことは事実である。


今一度、コトバが流行っても無意味という認識を

広告クリエイターたちは自らが関わった仕事を「作品」と呼ぶことが多い。商品が売れるか売れないかに関わらず、自らが作ったコトバが流行ればそれでいいという考えのタイプもいる。これは全く意味がない。コトバが流行ろうが流行るまいが、広告対象物が売れなければ、無駄打ちでしかないのである。どこまでいっても、広告は広告対象物を売るためにしか存在しえないと考えなければならないのだ。著名なコピーライターであっても、「広告は有名でも、売れたかどうか、結果が伴ったかどうかがわからないキャッチコピー作品」を「代表作」としていることも多々ある。「広告という作品」ではなく、「商品売り上げへの戦術貢献」としてとらえた時に、キャッチコピーの真価が問われるのではないだろうか。



すぐ売りにつながる「ココだけ今だけあなただけ」の功罪

すぐに売りにつながるのは「ココだけ今だけあなただけ」だと長年言われている。通販ビジネス、たとえばTVショッピングはそういう言い回しになっているため、読者の中でもこの言い回しで商品を購入してしまった方も多いのではないだろうか。しかしながら、小売り業は別として、メーカーやサービサーにとっては、この言い回しは極めて危険である。簡単に言えば、それは「安売り」でしかないためだ。価格設定が極めて重要なビジネスにおいて、一度安売りをしてしまうと、再び値上げをすることはリスクでしかない。その中で、瞬間的な売上のために、一生涯の価格設定を崩すことは、「低価格帯ブランドで生き延びる」という選択肢をとる以外、ブランドにとってもメリットがないのである。デジタルでA・Bテストを行えば、結果的に「ココだけ今だけあなただけ」のクリエイティブが効率的だと出てしまう。短期的な売上が必要な時期、在庫処分などは別にして、「ココだけ今だけあなただけ」訴求の功罪をきちんと理解して値崩れをしない範囲での言い回しを検討するべきなのである。



「言い得て妙」「雑誌のようなコピー」が多すぎる

広告主がなかなか言えなかった長文を短文化させただけのようなコピー、つまりは「言い得て妙」なコピーが多かった。同時に「キレイな短文」でもあった。そして、「雑誌のようなコピー」でもあった。これらは、確かに広告実施するまではわからないまでも、著者の経験では絶対にワークしなかった。つまりは、広告対象物を売り上げることはできなかったのである。確かに耳障りは良い。受け取った瞬間は「お~」とも思うのである。しかし、絶対に必要な要素が欠落している場合が多く、かえって決して美しくはない説明型のコピーの方がワークしていた。


おススメは「遠くの日本より近くのグアム」

ブランドが成長する広告表現の方程式」でも説明しているように、人口減少と収入減少の日本においては「買い増し」の広告はワークしない。必ず「買い替え」を促すエッセンスが必要であると著者は考えている。買い替えとは、広義には比較広告と呼ばれる。キャッチコピーを見て、競合ブランドがうっすらとでも見えてきたり、他の市場が見えてくる必要がある。比較広告は日本では違法とまでは言わないものの、景表法に則って決して誇大ではなく事実に則る必要があるし、直接的に競合ブランドを名指しすることはできない。しかし、買い替える対象物が見えてこない限り、今ある支出をその広告対象物にスイッチしようとは思わないのである。1996年にはなるが、グアム政府観光局が行っていた「遠くの日本より、近くのグアム。」というキャッチコピーはそういった点で非常にわかりやすかったと著者は考えている。





雑誌でもドラマでもなく、広告のキャッチコピーは「広告対象物を売るため」にある。そこから逃げることは絶対にできない。売るためには、買い増し型ではなく、買い替え型でないと、今の日本では成立しない。「広告トータルプランニング会社」である当社も基本的にはこの考え方で広告キャッチコピーを捉えている。この原則を踏まえて、広告をご覧いただくと新しい見え方になるのではないだろうか。

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