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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

相談相手のいない「広告」という領域~一人悩む経営者や広告担当者~

更新日:2023年3月22日

アウトソース化とインハウス化に翻弄される広告代理店」でも説明しているように、インハウス化が進むにつれて、広告について自社内で運用する広告主が増えてきた。また、コストリダクションの徹底によって、広告代理店を精査し、出入りする広告代理店が少なくなってしまった大手広告主も同時に増えている。社内でも相談できず、外部でも相談できず、一人頭を抱える広告主や経営者も多いのではないだろうか。本稿では、広告業界の構造に焦点を充てて、「相談相手がいない広告業務の実態」について説明していく。


目次:相談相手のいない「広告」という領域~一人悩む経営者や広告担当者~


孤立する経営者と宣伝担当者

広告業界では広告主が直接広告制作を行い、直接広告運用も行うインハウス化と、コストリダクションを前提とした広告代理店へのアウトソース化の二極化が進んでいる。それぞれ、違う方向性ではあるものの、共通して生み出しているのは広告主社内における「広告担当者の孤立」だ。インハウス化することによって、自社内のビジネスに対する知見は溜まるその一方で、広告業界の潮流や最新トレンドなどにはどうしても疎くなってしまう。広告による成長が実感できていれば問題ないが、成長が停滞期に入った途端、これまでのやり方に疑問を持つものの、相談相手が社内外にいないがために一人悩みを抱え込むようになる。この点は「効率論で停滞期を迎えるデジタルのみの広告戦略」でも説明している通りだ。さらに、行き過ぎたコストリダクションによって広告代理店を一社に絞ってしまった場合も、その広告代理店以外に意見を求めることができず、同様に広告主は悩みを一人で抱えることになってしまうのだ。18年勤めた総合広告代理店時代、宣伝担当者が孤立してしまっているケースもあったが、プロモーションに関する悩みは経営者の方が強かった気がしている。



経営者の相談相手はコンサルが多い

プロモーションにおいても悩みを抱える経営者は多く存在した。しかしながら、経営者の相談相手は基本的にはコンサルが多かった気がしている。コンサルと一言で言っても、外資系のコンサルファームもあれば、個人で活動するコンサルに頼っていたケースもさまざまだった。共通して言えることは、コンサルにはプロモーション領域の知見がないことである。ネット系代理店には「コンサル」という職種があるが、彼らは預かっている広告領域におけるコンサルは可能ではあるものの、その分野は極めて限定的であり、視座高くプロモーション領域全体への知見を有しているわけではない。こうして、プロモーション領域において、経営者は一人頭を抱えることとなるのである。


悩んだ経営者が陥る「タレントクリエイターへの相談」

プロモーションに関しての相談相手がいない経営者がとってしまう行動のうち、タレントクリエイターに相談してしまうケースがある。タレント的にメディアにたくさん露出して、会社を売り込む彼らを思いつきやすいのは当然だろう。ただし、彼らも世間一般にその知名度を上げてきた存在でしかなく、「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」にあるように、「認知神話」が崩壊してしまった今、販路に近い部分での知見、たとえば店頭POPやネット検索時のSEOやリスティングに対する知見は皆無であることには変わりないのだ。経営者も、当初は数カ月にわたって高額なフィーを払いはするものの、結果的に数か月間で契約が終了することとなる。余談にはなるが、著者も総合広告代理店時代に、著名クリエイターが先に広告主、基本的には経営者と契約を結び、その後に著者が案件にジョインするケースがあったが、先に契約を切られていたのはいつも著名クリエイター達であった。彼らの得意とする「経営者の心を動かすキーワード」は、必ずしもマーケットを動かすわけではなく、マーケティング理論は当然のこと、メディアやデジタルの獲得領域知見がないわけなので、当然と言えば当然ではあるが。


広告代理店に相談しても結局「売り込み」にあう

こうして幾度かの「痛い目」にあった経営者や、現場の宣伝担当者は他の広告代理店に相談を持ち込むようになる。その時、確かに聞こえの良い回答をもらい、課題解決の提案をもらいはするのだが、一つだけ注意をしなくてはならない。彼らも「売り込んでいる」だけなのだ。自社に利益をもたらさない提案を彼らがするわけがない。必ず何らかの形で自社にメリットがある提案を行うのだ。その時点で、本質的な課題解決に結びつかない提案である可能性は高い。結局、相談をしているつもりが、「売り込みの機会」を与えてしまっているに過ぎないのだ。


広告相談に特化した機関が日本にはなかった

総合広告代理店勤務時代に、「相談に特化」した機関が日本に存在しないことを疑問に思っていた。「複雑化するプロモーション」の通り、プロモーションが複雑化し、マス広告やデジタル広告に限らず、PRやオウンドメディア、公式SNS運用など多岐にわたるすべての領域を経験している人間は極めて少ないのかもしれない。しかしながら、それでも、「利害関係なく相談のみを受け付ける機関」が、今の日本には必要なのではないかと考えていた。これが、著者は総合広告代理店を退社し、「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した最大の理由である。





決して売り込みを受けず、相談受付に特化し、プロモーション全領域について適切なアドバイスをくれる存在は極めて少ないだろう。世の中のためになればという思いから、当社の「広告で悩む時間を、ゼロに。」というミッションは生まれた。広告代理店ではなく広告カウンセリングが一般化し、経営者や宣伝担当者がプロモーション、広告に悩む時間がゼロになることを著者は強く望んでいるのである。

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