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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

【解決篇】導入期に行うべき正しいプロモーション戦略とは?

更新日:2023年3月22日

日夜、数多くの新商品や新サービスが生まれている。残念なことに、ターゲットに認知すらされずに終売していくことも増えているだろう。こうした中、17年の総合広告代理店時代、ローンチ直後の、いわゆる「導入期」の商品やサービスを担当することも多かった。その中で、状況把握が足りず、大変申し訳ないことに期待したビジネス成果を得られなかったものもあるが、着実に売り上げを上げ、成長期へと導くことができたものもあった。そこにも一定の方程式が存在したため、本稿で説明していく。


目次:導入期に行うべき正しいプロモーション戦略とは?


「新発売」といってもコンディションが全く異なる

「新発売」と一言で言っても、コンディションによって取るべき戦略は全く異なる。まずは、新ブランドなのか、既存ブランドのエクステンションなのかで差がある。既存ブランドについては、全く違う商品を上市するカテゴリーエクステンションなのか、新たな風味や形状違いなどを上市するラインエクステンションなのかでも異なる。既存ブランドのラインエクステンションは、メガブランドでない限り店頭を中心にプロモーションを行うのみで、認知や比較検討レイヤーまで検討することはない。そのため、本稿では「既存ブランドのラインエクステンション」については言及せず、「新ブランド」または「既存ブランドのカテゴリーエクステンション」に絞って説明していく。



大企業の「新ブランド」で資金が「潤沢にある」場合

新ブランドのローンチの場合、大企業の新事業や新商品、新サービスであればある程度の資金は確保できるであろう。この場合は、必ず企業ブランドの信頼を借りる形で新ブランドを世の中に自己紹介することになる。「あのA社から今までにない概念の●が登場しました」といった形だ。企業ブランドの知名度や信頼度を借りない手はない。稀に、その企業ブランドが足かせになるという意見もあるが、その場合は「その新ブランドを提供すべきではない」のである。企業内シナジーが起こらないようなサービスは必ず失敗する。さて、大企業の新ブランドで行う発売時プロモーション施策の基本は、「市場創出を行うためのプロモーション」であることを前提にしなければならない。資金があるにもかかわらず、既存市場からシェアを奪うような後発となるビジネスを目指すのではなく、あくまで新市場を創出すべきだと著者は考える。よって、「これまでにない新たな選択肢」であることを強調するメッセージ構造が必要だ。さらに、新市場創出であれば、「今までにないモノ・サービス」であるがために、検索行動などには出ていない。使い古された表現ではあるが、「潜在層」向けとなる。潜在層から顕在化し、購入または契約まで至らせるにはそれなりの認知施策が必要となる。当然、投資効率は高くないが、新市場創出さえできれば、競合参入までは寡占できるため、先行投資の考え方で実施に踏み切ることもある。これが資金力のある大企業の新ブランド発売時プロモーション骨子である。


スタートアップ「新ブランド」で「資金が潤沢」な場合

最近ではエンジェル投資家やクラウドファンディングの浸透によって、スタートアップでも資金調達をしっかりと行っているケースが増えている。その場合、上記の大企業と同じような戦略となるが、大きな違いがある。大企業とは違って「企業ブランド」にプレミアムが乗っていないのだ。ブランドプレミアムがある程度乗っている大企業とは違い、ブランドに「箔」がないために、「箔」のための手段を選択する必要がある。知名度を上げることでの「箔」の付け方は大量に広告を流す以外にも、アスリートやチームスポンサーなど様々だが、いずれにせよ、知名度と信頼度を「買う」ために大企業とは違って費用を大量に投下する必要があるのだ。この点が、スタートアップの新ブランド発売時プロモーションの基本戦略なのである。


大企業の「新ブランド」で資金が「潤沢ではない」場合

大企業で資金がない場合は、認知施策に資金投下できるほどでもない可能性が高いため、徹底的に社内のアセット、つまりは資産を活用するしかない。この場合の資産とは大きく3つで、企業ブランドのプレミアム、別のブランド、そして顧客である。企業ブランドを最大限活用し、別のブランドのPKGに告知面を設けて告知を行い、抱き合わせ販売を行いつつ、顧客の個人情報があればサンプリングするなどもあるだろう。とにかく、保有アセットを最大限活用して、新ブランドを市場に浸透させるしかないのだ。これが、資金が潤沢ではない場合の大企業の新ブランド発売時プロモーションである。


スタートアップ「新ブランド」で資金が「潤沢ではない」場合

これが最も多いケースだろうが、スタートアップのためアセットも少なく、資金もない場合の新ブランド発売時プロモーションはどうあるべきか。こちらは極めてシンプルで、徹底的にセグメントし、イノベーターを捕まえ、ロイヤルカスタマーに育てていくのみである。基本的には知名度が低いため、どうしても現状市場から「奪う」戦略となる。知名度がないという事は指名検索行動に出ることはない。カテゴリー市場名で検索した時に「それに●●という選択肢を」といった形で検討させ、購買まで促すことが基本戦略である。決して投資効率は高くはないが、これより他に市場浸透を実現できるプロモーション戦略はないのである。これが、資金が潤沢ではない場合のスタートアップ新ブランド発売期プロモーションだ。



既存ブランドのカテゴリーエクステンション時

既存ブランドでカテゴリーエクステンションを検討するということは「ブランド価値」がある程度高いということになる。ブランドへのファンもいるため、まずは公式SNSなどでカテゴリーエクステンション商品を告知することは必須となる。ただし、売り場が離れてしまう場合は、その新しい売り場においては「商品認知がない」状況にあるため、ある程度の認知が必要となるのだ。ここで、資金が潤沢にありさえすれば、新商品の告知を実施できる。新商品の特性にもよるが、認知施策への投資を最優先で検討することになるだろう。既存ブランドのカテゴリーエクステンションは基本的には公式SNS告知を中心とし、資金があれば認知施策を実行するというプロモーション戦略となるのである。


これまで新商品発売時のプロモーションの基本方針を説明してきたが、企業サイズや資金力、新ブランドなのか既存ブランドなのかによって「新発売時」の基本プロモーション戦略が異なることがおわかりいただけたかと思う。このあたりが整理されていないがために、誤った新商品発売時プロモーションを実施してしまうケースを、総合広告代理店時代に多く見てきた。「広告トータルプランニング会社」である当社では、単に導入期と捉えずに、上記に加え市場トレンドやシェアなども考慮したうえで戦略立案のポイントをお話しするが、広告代理店側でもこういった整理はぜひとも行ってもらいたいものである。また、「成長期」に至った場合は「成長期に行う「正しい広告施策」5つの基本的なポイント」を、「停滞期」に入ってしまった場合は「停滞する売上を打破する広告戦略とは」を、「衰退期」に入った場合は「衰退期のブランドに効果的なプロモーション施策とは」をご覧いただきたい。

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