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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

【5分で理解】「失敗しないブランド戦略」のための5つのポイント

更新日:2023年3月22日

著者は17年の総合広告代理店勤務時代に、幸いなことにも「ブランド戦略」に携わらせてもらえることが多かった。競合社は同じ総合広告代理店の時もあれば、いわゆるブランドコンサルの時もあった。しかし残念なことに「失敗するだろう」と双方に思うことがあったため、合計5つのポイントに絞って本稿でついて説明していく。


目次:「失敗しないブランド戦略」のための5つのポイント


説明に入る前にまず、「ブランド戦略」を規定する

本稿の説明に入る前に、「ブランディング」や「ブランド戦略」についてきちんと説明していく。「誤解されつつある「ブランディング」~「イメージ戦略」との違い~」でも説明しているように、「ブランディング」という言葉がインフルエンサーやYOUTUBER達が多く使うようになり、言葉としては一般化しつつある。しかし、企業における中長期的な戦略を指し、ロゴも含め、提供価値をきちんと規定することが「ブランディング」または「ブランド戦略」であり、「単なるイメージ戦略」ではないのである。広告代理店においても「イメージ戦略」のことを「ブランド広告」と呼ぶことや、「販促」と区分けするように「ブランド広告」と呼ぶことも増えているが、経営戦略とマーケティング戦略の中間に位置するものが本来の「ブランディング」や「ブランド戦略」なのである。詳細は「ブランディングとは」をご覧いただきたい。


総合広告代理店の「ブランド戦略あるある」①

総合広告代理店の「ブランド戦略あるある」の1つ目は、「とにかくコンセプチュアル」ということである。それが総合広告代理店の「ブランド戦略」である。えてして、情緒的な表現に陥ることが多い。確かに、情緒的な意義性も決してゼロではない。しかしながら、これには大きな欠点がある。市場環境や販路の状況など、現実的なビジネス環境をないがしろにしてしまうことだ。いかにコンセプトが良かろうとも、現実離れしたものでは実際に現場で働くご担当者は「だから何?」で終わってしまう。きちんとした経営者やCMO、マーケターが担当であれば採用には至らないのだが、現実を無視して経営層がこういったコンセプトだけの戦略を採用してしまうと、全くワークせず、「意味のないものを作って」と現場から不満が出てしまうのである。いかにコンセプチュアルで良さそうな「ワード」であっても、市場環境や販路状況を踏まえた時にワークするのかについてご一考いただきたいと思う。


総合広告代理店の「ブランド戦略あるある」②

総合広告代理店の「ブランド戦略あるある」の2つ目は、「広告とセットでなければ情緒価値を訴求しづらい」という点である。「広告代理店の忘れ物「人は忘れる生き物」」でも説明しているように、広告は忘れられてしまうものである。しかも、「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明しているように販路が複雑でスーパーやコンビニ、自社ECやAmazonなどのECモールといったように、様々な販路で商品を売る際に、以前とは違ってほぼPOPは付かないと考えて問題ない。自社ECだけはLPなどでその情緒価値をふんだんに説明することができるが、まず自社ECに連れてくるまでのプロセスを考えると、情緒的な価値では検索レイヤーで勝つことはつまり体力勝負の様相を呈することになる。総合広告代理店のつくるブランド戦略は、「コンセプチュアルだが、実効性の低い」「マス広告に依存した」提案になりがちなのである。


ブランドコンサルの「ブランド戦略あるある」①

初めにお伝えすると、ブランドコンサルの提案プロセス自体は、総合広告代理店のそれとは違って、著者は共感する部分が多い。きちんとブランドのことを把握してブランドのあるべき方向へとクライアントとの合議によって決定していく。しかし、大きく3点疑問があった。まず、なぜロゴ開発やタグライン開発があれほどまでに高額なのかという点。デザイン会社あがりのブランドコンサルもあるが、非常にフィーが高額である。よく平然と法外に高いフィーを請求できるなと思っていたことは間違いない。しかしながら、総合広告代理店とは違い、媒体費でビジネスを行うことができないがために、どうしても「割高」になってしまうのだ。この点は総合広告代理店も同じような状態になりつつある。詳細は「広告代理店の高額なフィーに悩む広告主」をご覧いただきたい。


ブランドコンサルの「ブランド戦略あるある」②

次に、市場設定とかけ離れ、広告代理店と同じように情緒的な方向にいざなうことが多いことがある。戦略コンサルティングファームやSIer、シンクタンクなどは絶対にこういったことにはならないのだが、ブランドコンサルが「デザイン制作会社あがり」であることが多く、どうしてもマーケティングの視点が抜けてしまうのだろう。さらに、販路の知見も多くはないため、ワークするかどうかに疑問が残る。ブランドコンサルから、「原風景」という言葉が頻出するのだが、原風景と重なるような商品を買うことは本当に多いだろうか?あてはまるのは相当に希少なケースかと思う。


ブランドコンサルの「ブランド戦略あるある」③

最後にして最大の「あるある」が、とにかく遅いという点。クライアントとワークショップを行いながら作業していくにあたって、たいてい半年はかかる印象があります。半年あったら、もう市場環境は変わってしまう。このスピーディーな提案を苦手とする時点で、クライアントにとってはなかなかパートナーシップを組みづらいのだろうと感じていた。著者は準備ラップアップまで1カ月もあればワークショップを実行できるが、なぜかブランドコンサルのワークショップはとにかく時間がかかっていた。



スピーディで実行性の高い「ブランド戦略」を

著者が大してアピールをすることもなく、結果的に「ブランド戦略」をご提案する機会に恵まれたのは、そうした外的環境によるものだったと考えている。速く、地に足の着いた、広告依存度が高くないブランド戦略をクライアントは望んでいたのだろう。それらを包含したブランド戦略の提案が極めて少なかったのだと類推することになる。余談にはなるが、著者が経営コンサルと競合コンペになった際は、市場がニッチだったことと、顧客接点を重視した点が重なることになり、コンペに勝利し、著者が新規事業のマーケティング担当となるが、その際は圧倒的に費用による差が大きかったと思っている。経営コンサルは極めてスピードが速く、地に足がついた提案をする。その分、費用に跳ね返ってしまうのである。


「ブランド戦略」「ブランディング」という言葉の誤解も蔓延しているが、「ブランド戦略」を得意とする企業も一長一短ある。「広告トータルプランニング会社」でも「BRAND PALETTE」を開発したのはそういった社会課題に対応したいと考えたからだ。重要なポイントはスピードと広告依存度の低さを担保することだと考えている。ますます重要性を高めるブランド戦略領域において、どういった提案が主流となっていくのだろうか。

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