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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告メディアプランの際に忘れがちな「広告受容度」

更新日:2023年3月22日

広告代理店にとって必須となるのが、メディアプランである。メディアプランの良し悪しで広告対象物の成否が決まると言っても過言ではない。そこで、認知接点、検討接点、購入接点それぞれのメディア接触比率などを参考にメディアプランを設計するのが一般的である。確かに業種業態によってある程度メディア接触比率は出るが、重要なのは、「広告に対する受容度」である。17年の総合広告代理店勤務時代、著者もこの「広告受容度」を具に把握しながらメディアプランを行っていた。本稿では、この点について説明していく。


目次:広告メディアプランの際に忘れがちな「広告受容度」

広告を受け入れやすいメディアとそうでないメディア

今では録画したTV番組ではCMスキップが当たり前である。録画したTV番組でCMをスキップしないことは稀なのではないだろうか。新聞にしても、全広と呼ばれる1ページまるまるの広告に対してもすぐに次の記事に目を遣る人も多いであろう。しかし、実はこれら旧来のマス広告は、実は「広告を見せられるものだ」という認識が人の頭の中にあるため、広告への受容度としてはまだ高く、他メディアの広告に比べれば、「広告に寛容」な方なのである。つまり、広告とは、「広告をある程度受容しながらも接するメディア」と、「広告を徹底排除したくなりながら接するメディア」とで分かれるのである。



広告受容度の低いメディアの代表、SNS広告

セグメントができ、少額から運用可能で、非常に投資対効果が高いように思えるメディアの代表格といえばSNS広告であろう。特に、Teenや20代をターゲットにした商品やサービスであれば避けては通れないメディアではある。しかし、誠に残念なことであるが、著者が担当した業種業態の多くは、このSNS広告、特にTwitterやInstagramの広告受容度は非常に低かった。自らフォローしたアカウントへの許容度はすこぶる高い。しかし、広告となると、おそらくパーソナルな意味合いが強いこの両メディアにおいては、極めて受容度が低くなるのだ。確かに、通信販売、D2Cモデルを採用している企業であれば、その他メディアと比較したときのCVR、コンバージョンレートは高いこともある。しかし、主に認知獲得を広告実施の目的にしている多くの広告対象物にとっては、驚くほどに低い数値となるのだ。しかしながら、特に若年層向けの適したメディアがないため、否応が無しにSNS広告を実施せざるを得ない実情もある。他メディアよりも効率が悪いとわかりながらも、他メディアではリーチできないターゲットに対してプロモーション施策を講じる場合は、SNS広告を決めたうえでその中で最大効率を追い求める作業に終始することになるのだ。



今のプロモーションは8類型

広告受容度に差があることを熟知したうえで、特に接触が難しくなった若年層にアプローチするにはどうするべきか。答えは簡単で、SNS広告以外のプロモーション方法も選択肢に入れることである。PR、公式SNS、マスを含めたオフラインメディア広告など、アプローチ方法は様々である。渋谷に行けば多くの若者がいる。相変わらず、ハチ公前で待ち合わせをしている。目に入るのは屋外広告だ。彼らはそれを一つの風景としてとらえ、決して広告として毛嫌いしない。確かに、リーチとしては局所的であるかもしれない。しかし、広告受容度は高いのである。著者は広告許容度をまず踏まえたうえで接触メディア比率を考え、「複雑化したプロモーション」でも説明しているような8類型からベストのメディアプランを考えていた。この広告受容度という指標を非常に重視していたのである。


定期的な広告受容度調査を行う事

カンター社が自主的に調査している「アド・リアクション」調査も踏まえ、著者も総合広告代理店勤務時代にお菓子や飲料、メガネ、コンタクトなどの7カテゴリーにおいて、可能な限りメディアビークルを細分化して「広告受容度調査」を行った。当時、著者が担当していたカテゴリーにおいて「本当に適した接点」をあぶりだすためだ。総合大手広告代理店ともなれば、年に数回の大規模生活者調査データがあり、そこである程度メディアについてヒアリングしているのであるが、メディアのメニューが細分化されておらず、メディアプランのアロケーションに活用できるような粒度ではないのが実態であろう。広告主のコミュニケーションパートナーである以上は、「すべての接点」を洗い出し、最適なタッチポイントを見定め、適切な投資を行うべきだが、それがないがために自主調査を行ったのである。著者は、「プロとしては当たり前」だとも思っていたが、確かに「デジタル及びオフラインを含めたプロモーション全体」を担当する機会は、総合大手広告代理店でもほぼ無いことであるため、「全体かつ詳細」な広告受容度調査がないのは致し方ない部分はあるとも考えている。ただし、「部分発注する広告主が増える中での、総合広告代理店の存在意義」でも説明しているように、「それこそが総合広告代理店の意義性なのではないか」と著者は考えている。


広告受容度の高いメディアからもプランを考える

一般的に見聞きするようなタッチポイント調査は、それが「メディアとして」なのか「広告枠として」なのかの線引きが非常にあいまいである。例えば、「一日のなかで最も接触するメディア」と聞かれれば、シニア以上はTVであり、TeenであればSNSであろう。しかし、それぞれ、メディアとの接触時間と広告への関与度は異なるのだ。TVであれば「CMが入るもの」と認識されるが、SNSは「スキップするもの」という認識がある。その中で、本当に広告に接触しているのだろうか。メディア接触時間はあてにならないのである。次に、反応が出やすいクリエイティブもあるが、それは中心となるメディアを設計したうえで、最適クリエイティブを制作開始することになるので、まずは「広告受容度」からメディアプランを考え、次にクリエイティブの検討を開始すべきではないかと考えている。


広告は嫌われている。それは間違いない。かつては、「好かれる工夫を」と、広告対象物をどんどん後退させていく動きが加速していった。総じて「嫌われている広告」も、メディア種別によっては受容されうるものもある。一つの風景としてとらえられているメディアもある。「広告トータルプランニング会社」となった今でも、引き続きメディアの動きはウォッチし続けなければならないが、広告受容度を鑑みて8類型からプロモーション戦略を立案することをおススメしたい。

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