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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

二極化する「衝動買い」と「計画購買」

更新日:2023年10月24日

かねてより、「購買」においては、非計画購買、つまりは「衝動買い」と、「計画購買」とが整理されていました。総合広告代理店に17年勤め、その後「広告トータルプランニング会社」として今もなお消費者の購買行動を見続けている著者は、その購買行動が二極化していると感じています。本稿では、改めて「衝動買い」と「計画購買」の種別を整理したうえで、二極化している理由についてご説明していきます。


目次:二極化する「衝動買い」と「計画購買」


「衝動買い」と「計画購買」とは

まず、前提として全購買行動の9割が衝動買いであると言われています。そこまで多くないだろう!とお感じになられる方も多いかもしれませんが、ぜひとも思い返してください。ご自身の一カ月の支出のうち、きちんと計画して購入したものなど、わずかでしかないことがお分かりになるかと思います。


しかし、著者はよりこの差ははっきりとしているのではないかと感じています。1,000円以下の低価格商品を「すぐにどこでも」購入できるコンビニ販売網が整備されたことと同時に、すぐにスマホで「調べる」ことが一般化したことがその大きな要因です。


前者は「衝動買い」を助長させる強い販路の代表格で、後者は「計画購買」を強める存在です。前提として日本全体の収入減少があり、「安いものはより安いものを求める」「高いものは入念に調べる」ことが当たり前になっています。こちらの数字的な立証には相当な大規模調査が必要になるが、購買行動と向き合い続けた著者はそう感じています。


【収入減少によって「より安いものを」「高いなら入念に調べる」が一般化】

・衝動買いと計画購買はよりはっきりと分かれている

・コンビニ:すぐにどこでも商品を買えるコンビニが増えた

・スマホ:いつでもどこでも商品を調べるようになった


「計画購買」の原則

衝動的に購入するものではなく、きちんと「計画購買」するものには、どんな共通項があるのでしょうか。実は共通項は2つしかありません。それは「価格が高い」か、「購入ブランドが決まっている」ものです。


価格が高いものは、収入減少の中にあってリスクヘッジのために商品自体やその評判を検索し、きちんと購入場所を定めて購入します。家や車、宝飾品、家電、旅行などがそれにあたるでしょう。購入ブランドが決まっている、たとえばシャンプーやタバコ、歯磨き粉や柔軟剤なども、特段の不満さえなければ、今使っている商品がなくなり次第「計画的に」購入します。これらが計画購買分類の商品となります。


そして、特に前者の高額なものについては、約49%がAmazonをまずは開き、購入する行動をとっているという調査もあるうえに、商品が気になったら「ググる」「タグる」も当たり前になっています。比較サイトを開き、ユーザーの口コミを参照にし、高額な車や家電は実際にショールーミングを行って、購入に至ります。


【計画購買の共通項は「価格が高い」か「購入ブランドが決まっている」】

・価格が高い=ググるなどしてよく調べる

・購入ブランドが決まっている=歯磨き粉など、無くなり次第購入する


「衝動買い」4種類

さて、9割にも及ぶと言われる「衝動買い」について、代表的な4種類に分類して説明していきます。まず、「純粋衝動購買」があります。これは、全く購入する予定がなかったのに、急遽購入することです。これが「ついで買い」の正体です。スーパーのレジ近くに飴やガムが置かれていますが、まさに「純粋衝動購買」を期待しているものです。


次に「想起衝動購買」があります。購入する予定はあったが、買い忘れていたものを、「商品を見たら思い出して買う」ことがこれにあたります。この想起衝動購買が、FMCG系と言われる「日用品・嗜好品」に多いです。


3つ目に、「提案受入衝動購買」があります。購入する予定はなかったが、店員の薦めによって購入する商品です。スーパーマーケットの試食などはまさにこれです。店頭に近い部分でPOPによって実現できる衝動買いの一種でもあります。


最後に、「計画的衝動購買」があります。購入する具体ブランドまでは決めていなかったが、入店後の棚で購入に至ることです。コンビニでの購買に多いのがこちらです。コンビニを中心販路としている各種ブランドで、カテゴリーリーダーであれば、カテゴリー訴求を行うことで実入りを促すことができます。たとえば、チョコレートのブランドで圧倒的なシェアを誇る場合は、「●●の日にチョコをプレゼントしよう」といったポスターが店内に貼られていれば購入を促すことが可能です。食品スーパーマーケットやコンビニがいかに衝動買いによって支えられているか、お分かり頂けたと思います。


【衝動買い4種類】

・純粋衝動購買:ついで買い

・想起衝動購買:買うことを思い出して購入

・提案受入衝動購買:試食コーナー

・計画的衝動購買:コーナーの棚で発見して購入



コンビニが増えたことでの「衝動買い」の促進

広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明していますが、この30年でその数を10倍にまで伸ばし、今や全国約6万店舗もの販売網を誇るコンビニ。平均単価577円の価格設定は、買う場所である「コンビニを先に決め」、「後で買うものを決める」という購買行動を、当たり前のものにしました。


コンビニには毎週いくつもの新商品が並び、そして棚落ちしていきます。自らが興味あるカテゴリーで新しい商品が出たら、とりあえず試してみます。こうして、新しい商品を衝動的に購買することに、人は慣れていき、コンビニは衝動買いを前提とした購買接点になっていくのです。


「ナウ・マーケティング」が叫ばれて久しいですが、何も「検索した今」の「ナウ」だけではなく「衝動的に欲しいと思うナウ」も定義に含まれるべきだとも考えています。


【衝動買いが増えた】

・6万店舗に増えたコンビニの影響

・ナウ・マーケティングの隆盛


スマホの普及が「計画購買」をより計画的に

成人普及率が9割を超えるとも言われるスマホやケータイ。すぐに検索でき、しかも検索結果もスムーズかつ大量に情報にアプローチできることとなりました。著者が総合広告代理店時代に、メディア接点について調査したのですが、最も驚いたのが、100円ほどのお菓子ですら、人はブランドサイトを見るようになっているということでした。見知らぬものと出くわしたらとりあえずGoogleで検索してみることの証明だと思います。


本来は「衝動買い」をする嗜好品ですら検索しているようにはなっているのです。100円のお菓子でブランドサイトまで検索する消費者は確かに限られてはいると思いますが、本来「衝動買い」の購買行動を起こす商材ですら、「検索行動」は付いて回るのが実態です。当然、元来「計画購買」を取る商品群は、より計画的な購買をするようになっているということになります。


【計画購買】

・100円のお菓子ですらブランドサイトをチェックする

・衝動買いカテゴリーが計画購買に変わりつつある


プラットフォームを目的によって分けるようになった

もともとは検索といえばGoogleの独占市場でした。もっと前はYahooが独占していて、下請けとして検索部分をGoogleが請け負う結果としてデータがストックされ、Googleは検索を独占することになりました。しかし、今や、消費者は検索の目的ごとにプラットフォームを分けています。それはSNSの隆盛があったためです。Instagramではその商品を使っている「ユーザーがどういう人なのか」を調べ、Twitterでは「その商品のより深い理解や口コミ」を調べ、「ハウツー動画」としてYOUTUBEも調べたりします。計画購買の計画性はより精緻なものになり、その精緻なお買い物をSNSが後押しするような構造になっていると言えるでしょう。こうして、「計画購買」の「計画性」もどんどん加速していくことになります。


【計画購買に合わせたプラットフォーム】

・Googleで概要を調べる

・Instagramでユーザーを調べる

・Twitterで口コミを調べる



二極化にあわせたプロモーション戦略を

上述してきたように「衝動買いは、より衝動的に」「計画購買は、より計画的に」なってしまっている昨今、徹底的に「衝動買いを促進させるためのプロモーション」「計画行動できちんと認知され理解され購買させるためのプロモーション」を設計しなければならなくなりました。中途半端なものは「購入されない」状況に陥ったのです。


ただし、「衝動買い」の中心販路がコンビニである時点で、コンビニに棚を取るまでのプロセス、ハードルは相当に高いものになります。たとえ大企業で「衝動買い」を促進できるコンビニ販路があったとしても、徹底的に「衝動買い」を狙うパッケージやプロモーションを設計しない限り、すぐに棚落ちしてしまうこととなります。


大企業のように「衝動買い」に強いコンビニへのルートがあるわけではない企業群は、やはり「計画購買」を狙わざるを得ないでしょう。ただし、「計画購買」も自社ECやECモール内自社商品にたどり着かせるための投資はかさむため、自社商品が「どういった目的で検索されるプラットフォームに時間と費用を投資して集客すべきか」を整理してプロモーションを設計しなくてはなりません。


【二極化にあわせたプロモーション戦略】

・衝動買い=コンビニ販路中心

・計画購買=プラットフォームにあわせた設計を


二極化した購買行動の中で、プロモーションが果たす役割は何なのでしょうか。二極化していることを前提に、広告対象物がどちらの購買の性質があるのかを踏まえ、現実的にワークする設計図を作り上げることが重要になるかと思います。「広告トータルプランニング会社」である当社は「70ブランド85領域」の知見があるため、各販路での適したプロモーション設計のご相談に乗ることは可能ですが、総合広告代理店は「オンライン販路」に弱く、デジタル専業広告代理店は「オフライン販路」に弱いことを考えると、双方が弱みを解消するスキルを身に付けることが、広告主の悩みを解決する一番の策になるのではないでしょうか。

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