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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

B2Bスタートアップ企業のネット系広告代理店探し、4のポイント

更新日:2023年3月22日

テクノロジーの進歩により、データやシステムなどによって企業の経済活動を支援する、B2Bの起業が相次いでいる。これらを、B2Bスタートアップと呼ぶが、当初は資本も規模も小さいがゆえ、ネット広告を行うにしてもネット系広告代理店を探すことですら苦労する。17年の総合広告代理店勤務時代に、B2Bの新規事業をいくつも担当してきたが、こういったB2Bスタートアップのネット系代理店探しに悩まれる広告主は多かった。より総体的な広告代理店選びについては「17年間広告代理店にいたからわかる広告代理店の失敗しない選び方」やいかなる企業にもおけるネット系代理店選びは「10社以上付き合ってわかった「ネット系代理店選び」3つのポイント」をご覧いただくとして、B2Bスタートアップ企業がネット系代理店探しを行う際、どういう視点がポイントとなるのか。本稿では4つのポイントに絞って説明していく。


目次:B2Bスタートアップ企業のネット系代理店探し、4のポイント


前提として、当社はB2Bスタートアップではない

著者も2021年4月に「広告トータルプランニング会社」である当社を設立したが、ロゴ、コンセプト設計、サイト内説明文、デザインから、サイト内の動きに至るまで、すべて自分で制作または設計している。広告主のHP制作、ブランドサイト制作を請け負ってきたのだから、HPを外注するという発想自体がなかった。テクニカルな、コーディング等のスキルはなくとも、今はパワーポイントを作るかのようにHPを作ることができるサービスが充実している。また、「ロゴ開発で忘れがちな「市場」の視点」で説明しているように、ロゴについても、CI及びフレームワークロゴなどすべて、外注をせず、「市場の視点を持ちながら」自分で制作している。こちらも、ロゴ制作を広告主から請け負ってきたのだから、当たり前である。著者はデザイナーではないが、ロゴもデザインも、「クリエイティブの誤解~クリエイティブは左脳作業~」で説明しているように、極めて左脳的で、論理的作業なのだから「できて当然」なのだ。また、SEOについても、長年の広告とPRの実務経験があり、各施策が体系化されていれば、マーケティング視点を注入することで想像以上のサイト流入は可能になるとも考えていた。当社は上記のように外注を何一つ行っていないが、それは当社が「スタートアップではない」ためである。主にベンチャーキャピタルなどから資金を得て、設立当初は赤字であったとしても潤沢な資金でレバレッジを効かせ、中長期的に成長していくのが「スタートアップ」である。当社は外部からの出資や融資を全く受けず、自己資本で「小さく創業」しているため、区分としては「スモールビジネス」である。まず、スタートアップとスモールビジネスの違いについてご理解頂ければと思う。


1つ目のポイント~「まずは自社運用」が鉄則~

誰もが使いやすくなるように、Googleが様々なシステムを用意してくれているため、著者を含めた素人であっても上述のようにHP周りはすべて自社内で制作、運用が可能である。B2Bスタートアップ経営者もこのことについて気づいているが、「社内リソース不足」を理由に外注を検討することが多い。まずはGoogleで検索して広告を見てLPを読み込むか、SEOかの二択になるプロセスを踏むかと思う。ただし、安易に外注することは著者としては反対だ。「マーケティング視点さえ注入すれば誰でも早期に効力を発揮できるサービスやシステムが完備されている」ことがその理由だ。外注するにしても、最低月額費用を数百万円以上に設定しているネット系広告代理店が多く、広告費が潤沢になければ外注先が見つからない。さらに、数百万円以上支払ったとしても、管理画面を広告主が見られる以上、ネット系広告代理店側の「手抜き」を目の当たりにすることになる。ちなみに、管理画面を解放しない広告代理店は常識の範囲を超えてマージンを搾取している可能性があるため、管理画面共有は必須とお考えいただきたい。こういった点から、運用費用が高額になればなるほど、「払っている割に一生懸命やってくれない」と嘆くことになる。つまり、「マーケティング視点」をもってSEO、リスティングを運用できるよう、社内担当を教育することが最も効率的かつ、持続的成長につながるのである。なお、このあたりの広告代理店側からの視点については「アウトソース化とインハウス化に翻弄される広告代理店」をご覧いただきたい。



2つ目のポイント~「動画制作に特化」に気をつけろ~

「検索領域は自社」となった後で、認知獲得領域への外注先検討を始める。確かに、この部分は内製化が難しそうな印象がある。特に、SNS広告用動画やYOUTUBE広告用動画などは、日夜新しい動画広告が出てきており、実施検討をすることも頷けるし、正しい。特に市場内シェアが高ければ実入りも大きくなる可能性が高いため、うまくいけば売り上げ拡大の一因にもなるだろう。この際多くの動画制作会社があるが「動画制作に特化」には気をつけなければならない。マス広告主流の時代にも映像制作を主とする制作会社は数多あったが、CMだけではなく映画なども手掛けていることが多く、あくまで「動画制作」のプロなのである。このポイントは「これでCMの悩みがゼロに!?CMとドラマと映画の、「制作方法」の違い」でも説明しているように、映画やドラマと違い、動画はあくまでマーケティング活動の一環として、一つの手法として存在しなくてはならない。しかし、「動画制作に特化」している会社は確かに「キレイな映像」「引きとなる映像」などは簡単に作れるかもしれないが、どのように商品を売っていくかまでを考えることはできないのだ。マーケティング視点がないため仕方ないかもしれないが、いかに安くて速かろうと、「売れないけど美しい動画」を作っても費用面でも稼働面でも「損」しかしない。この点をB2Bスタートアップ企業の方にはご理解いただきたく思う。


3つ目のポイント~「SEO+LP」など複数領域の会社に~

一つ一つの戦術に特化してしまうとどうしても全体の一貫性が欠落する。戦術は、どうあがいても戦略を超えることはできない。つまり、どうしても外注するのであれば、必ず広い領域を扱っている会社の方がおススメだ。SEO、LP制作、リスティング、EC内広告などを広く扱っている方が、進化のスピードの速いネット広告においては、特であると著者は考えている。なぜなら、一部に特化しているネット系代理店も、その特化していた領域が、プラットフォーマーのルール変更で、たとえばクッキー廃止や、検索時アルゴリズム変更などがそれにあたるが、これまで貯めた知見やシステムの価値がなくなってしまう可能性があるためだ。そのため、全体を広く薄くカバーし、各戦術面のポイントのみ押さえている企業の方が持続的なパートナーとしてふさわしいと考えている。ただ、そういったネット系広告代理店はどうしても企業規模が大きくなりがちであるため、「10社以上付き合ってわかった「ネット系代理店選び」3つのポイント」でも説明しているように、「担当者変更」リスクを鑑みると、中小規模の方をおススメしたいのではあるが、、、



4つ目のポイント~「マーケティング視点」があるか~

上記にもあるように、テクニカルな部分は秒進秒歩で進化が進んでしまうネットの世界。そこでテクニカルな部分に立脚して提案されるのではなく、普遍的な、可変性の低いマーケティングの視点に則って提案される方が、永続的な付き合いになると著者は考えている。どうしても最新のトレンド、テクノロジーに目が行きがちだが、重要な点はそれよりも上位にある「市場の見方・攻め方」の視点を持っているかどうかである。ネット系代理店の「市場」は「検索数」や「(出稿している)競合ブランド」程度になってしまうが、市場のトレンドや競合ベンチマーク設定など、きちんと基礎的なマーケティング知見を有しているかどうかを、会話の中で確認してみると良いだろう。日夜変わり続けるテクノロジーに翻弄されないためにも、俯瞰して市場を見ることができるネット系広告代理店を探し当てることが重要だ。このあたりは「広告全体戦略に必要なデジタル、オフライン、マーケ、ブランド知見」でも説明している。


本稿では、ポイントを4つに絞って、B2Bスタートアップ企業のネット系代理店探しについて言及してきた。著者も10社以上のネット系広告代理店と協業してきたが、提案内容や独自ソリューションなどで、契約をしてしまったがために、後で大失敗したこともある。その際に、何が大事かを見極め、上記の4つのポイントに行き着いた。視点としては極めてアナログだとも思うが、この4つ以上に大切なポイントはなかったと感じている。著者は「広告トータルプランニング会社」である当社を設立したが、今日もどこかで生まれているB2Bスタートアップ企業とネット系広告代理店の契約が幸せな契約となることを祈っている。

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