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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

企画提案で最も大切なものは、「提案コンセプト」

更新日:2023年3月22日

総合広告代理店に勤めた17年間の間で、数多くの企画を提案してきた。あらゆるスタッフが企画書を上げてくるが、「提案コンセプト」からきちんと提案ストーリーを作っている企画書は多くはなかった。まず、どういう視点で提案しようとしているかがわからなければ、案の内容がいかに論理的であったとしてもなぜかチャーミングに思えない。広告代理店は、ビジョンやキャッチコピー、そしてタグラインを提案する立場であるにも関わらず、なぜ「提案コンセプト」がない提案が溢れてしまうのか。本稿では、「提案コンセプト」の重要性と、それが欠落してしまう原因について説明していく。


目次:企画提案で最も大切なものは、「提案コンセプト」


コンセプトの重要性

端的に結論から言うと、著者はほとんどの物事は「考え方」で決まると思っている。考え方とは「コンセプト」と呼ばれる。それにも関わらず、総合広告代理店の提案には「コンセプト」がないものが多いのではないだろうか。広告主から与えられた提案与件に従い、提案内容にもよるが調査データから論ずる「戦略パート」と呼ばれる「調査のサマリーページ」があって、具体的なTVCMプランやプロモーションプランに入る。この点に著者は違和感を抱き続けてきた。自分たちが市場や広告対象物をどう捉え、どういった戦略を立てて市場自体の拡大または市場シェア拡大を実現するのかの「戦略の考え方」を明記するべきだと考えていた。そして、広告代理店である以上、その「戦略の考え方」自体も、キャッチ―なワードであるべきだとも同時に考えていた。これこそが「コンセプト」である。今、「提案コンセプト」自体を目にする機会が極めて少ない。それは、データが簡単に取得できるがために、コンセプトありきではなく、データありきで提案しようというスタンスが主流になりつつあるからだ。著者は、データは手段に過ぎないと考えており、「戦略の方程式」は不変性が高いと考えている。「提案コンセプト」なき提案は提案とも呼べないのではないかとすら思っているのだ。



提案コンセプトが欠落する理由

上述のように、提案コンセプトよりもデータが重視されていることが、最大の提案コンセプト欠落要因であろう。しかし、もっと現実的な理由がある。それは、提案コンセプトが先にも話したようにキャッチ―なワードであることが多く、それを書いたスタッフがクリエイターではなかった場合、クリエイターと戦ってしまうことにある。キャッチコピーを提案するクリエイターからすれば、提案コンセプトが足かせになることや、キャッチコピーでそのコンセプトのキャッチ―さを超えられないという事態が起こりうるのだ。こうした、内部分裂が生じてしまうがために、提案コンセプトが絶滅していったのではないかと考えている。


スローガンなき選挙戦は存在しない

提案コンセプトの必要性を語る時、もっともわかりやすい例が、アメリカの大統領選挙であろう。細かいマニフェストはあるが、それよりも上位にあるコンセプトが選挙戦を左右すると言っても過言ではない。「Yes!We Can!」や「Make America Great Again!」など、提案スタンスのわかりやすいスローガンが後の大統領を生み出すことになった。これは決してキャッチコピーではない。アメリカ大統領選のスローガンは、広告代理店で言うところの提案コンセプトなのである。こういったキャッチ―なスローガン、つまりは提案コンセプトが前段にあるかないかで、広告主の印象が大きく変わってしまうのだ。



提案コンセプトの重要性を理解しない広告代理店

おそらく、コンペ勝率が高い広告代理店勤務者、または広告主と太く長く付き合える広告代理店勤務者は「提案コンセプト」の重要性を理解しているだろう。しかし、そうではない大多数の広告代理店勤務者は全くその重要性を理解していない。著者も、独立するまでコンペ勝率は7割以上だったが、毎回提案テーマは違うものの、共通して「提案コンセプト」をわかりやすく書いていた。それが理由だったとは思っていないが、きっと提案コンセプトがあるおかげで、提案内容が広告主にとってはわかりやすかったのではないだろうか。


提案コンセプトがある提案を心がける。これだけで広告代理店の提案ストーリーは聞きやすく魅力的なものになるだろう。今は「広告トータルプランニング会社」である当社を設立してしまったが、18年の総合広告代理店時代、最も著者をワクワクさせたものの一つがまさに「提案コンセプト開発」であった。問題は、提案コンセプトとは何か、どうやって作るのか、になるが、それはまた違う形でご紹介していきたいと思う。

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