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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「広告が効かない!?」と感じたときに確認すべき8つのポイント

更新日:2023年3月22日

「広告が効かない」。そう叫ばれだして何年が経つだろう。確かに、今は、販路が絶大な力を持ち、本当に良い商品であればSNSなどを通じて広く拡散し、あえて広告費をかけてまで「認知」を獲得する必要はないかもしれない。また、獲得を目的としたリスティングにおいても、やはりSEOに勝る効率ではなく、デジタルの獲得領域においても「広告は効かない」と認識されるようになった。2004年に総合広告代理店に入社してからの17年間で、合計「85種(HP参照)」のブランド戦略領域、プロモーション戦略領域経験があり、70以上のブランドを担当してきた著者からしても、「きっと効かないだろう」と思える広告は数えきれないほどあったと思っている。しかしながら、どれだけ広告領域での貢献があったのかは測りかねる部分はあるが、おそらく広告が効いたであろう、多くの成長事業、成長商品、成長サービスに携わることができた。CVR低下、CPA高騰、CMを売っても売上貢献なし、など様々な角度から、「広告が効かない」と嘆く広告主や広告代理店とよく会話したが、その具体事象よりももっと基礎的な部分に失陥があったと考えている。それらには共通項があったことを踏まえ、「広告が効かない」と認識する前に立ち返るべき8つの視点の重要性について、本稿で説明していく。


目次:「広告が効かない!?」と感じたときに確認すべき8つのポイント


1つ目のポイント「ブランド戦略が策定されているか」

広告が効かない時に著者がまず確認するのは、ブランド戦略があるかどうかである。当社では「BRAND PALETTE」としてフレームワーク化しているが、この大きな設計図がなければ、その他の施策はワークしなくて当たり前だ。なぜなら向かう先や目指すものがない中で、社内外関係者が目標に向かって進むことができないのだ。KPIがブームのようになっているが、KPIはあくまで短期的な、数値化しやすい指標によって、定めた「目標」でしかない。もっと中長期にわたる、市場に対する意志を重視した設計図が必要なのである。なお「ブランド戦略」または「ブランディング」については「ブランディングとは」をご覧いただきたい。



2つ目のポイント「市場の定義ができているか」

広告活動は市場に対しての活動の1つである。しかしながら、市場の定義が非常にあいまいであることが多かった。最も多いのは、大きい市場定義のままで、細分化されたカテゴリー市場まで落とし込んでいない場合である。問題となるのは、コトラーの競争地位4類型通りに、リーダーなのかチャレンジャーなのかなどの地位によって、プロモーション戦略も全く異なるのだが、市場の定義が曖昧であると、自分たちの地位すら把握できないことになる。つまり、市場定義を明確にし、できればカテゴリー市場まで細分化し、基本的なマーケティング戦略を踏まえながら、それに対応するプロモーション戦略が設計されているかが最初に立ち返るべき視点だと著者は考えている。また、メーカーのクライアントで往々にして起こりうるのが、「商品における市場」の方が市場調査や数値化しやすい反面、「目的における市場」を把握していないことも多かった。例えばお菓子などの嗜好品は「幸せな気分を味わうため」のお菓子なのか、「健康になるため」のお菓子なのかで全く市場の競合が異なる。前者は「幸せをコミットするあらゆる産業」が競合になりうるし、後者は「健康をコミットするあらゆる産業」が競合になりうる。こうした市場定義時代、その後の戦略を大きく変えてしまうため、留意が必要である。


3つ目のポイント「市場トレンドと、自社トレンド把握」

広告に、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を」でも説明しているように、プロダクト・ライフ・サイクルで考えた時に、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」かで、取るべきマーケティング戦略も、それに呼応するプロモーション戦略も変わる。しかも、自社だけでなく、市場全体のトレンドも踏まえた時に、すべきプロモーションは変わるのである。例えば、確かに自社ブランドが「導入期」であれば間口拡大の時期であり、カテゴリーへのエントリー層、つまりは新規顧客獲得こそ命題なのだが、市場がすでに「成熟期」に入ってしまっている場合は、競合からのブランドスイッチが重要となり、市場における新規顧客ではなくなってしまう。つまり、市場のトレンドであるプロダクト・ライフ・サイクルを市場全体と自社ブランドの2つの視点で整理する必要があるのである。成熟期に入っているのであれば「停滞する売上を打破する広告戦略とは」を、成長期であれば「成長期に行う「正しい広告施策」5つの基本的なポイント」をご参考いただきたい。


4つ目のポイント「市場での地位を把握できているか」

市場定義とも相関するのだが、基本的には地位によってマーケティング戦略が変わる。当然、プロモーション戦略も地位に応じて変わっていく。リーダーであればカテゴリー市場自体の拡大やシェア向上であり、チャレンジャーはシェア向上のみが命題である。これはどういう意味を持つかというと、基本的な「メッセージ」「キャッチコピー」が地位によって自動的に規定されるという事である。メッセージは何もクリエイティブな作業ではなく、地位によって大きな方向性は規定されてしまうのだ。この点が、未だにどの総合広告代理店からも伝えられていないが、重要なポイントなのである。



5つ目のポイント「シェアはどれくらいか」

たとえ、地位が「リーダー」であっても、40%以上のシェアを持つリーダーなのか、5%シェアのリーダーなのかによって、メッセージの具体的な方向性も規定されてしまう。もし40%以上のシェアがあれば、上位市場や隣接市場からシェアを獲得するようなメッセージとなるし、逆にシェアが低いリーダーであればカテゴリー市場内シェアを上げる、ブランドスイッチを誘発するような、優位性訴求が基本となる。こういったように、シェアによってもメッセージの具体的な方向は規定されていくのである。シェアについての詳細は「広告に活かせるマーケティング理論「クープマンの目標値」」をご覧頂ければと思う。


6つ目のポイント「購買行動モデルはなにか」

AIDMAからAISASやAISCEASに変わったわけでも、FMOTに変わったわけでもない。また、パーセプションフローモデルやカスタマージャーニーマップに変わったわけでもない。業種業態によって、取るべき購買行動モデルが異なるのだ。販路によってオンライン偏重かオフライン偏重かはあるが、基本的には業種業態によって購買行動モデルは変わるのだ。しかも、同じブランドであったとしてもプロダクトの価格や販路によっても購買行動モデルが変わることも視野に入れておくべきだ。販路が変わったにも関わらず、かつての購買行動モデルをそのまま採用し、広告投資をしてしまっているケースが散見できると著者は考えている。この点の詳細は「購買行動モデルを無視しがちな広告主と広告代理店」でも説明している。


7つ目のポイント「広告予算は適正か」

こちらも業種業態によって、その粗利率の違いから差はあるが、概して「売上高の5%」を目安にするべきだろうと著者は考えている。粗利率の高い商売であればそれ以上の広告投資が可能となるが、ひとまずの目安は「5%」で良いのではないだろうか。それよりも過大ではないのか、または過少ではないのか、という視点をもって、予算設定自体を考えるべきかと思っている。


8つ目のポイント「各施策アロケーションは適正か」

メッセージを特定し、購買行動モデルを特定し、全体アロケーションは特定できた。次は、施策ごとのアロケーションだ。アロケーションの原則は「購入接点に最も近い場所へ投資する」ことである。「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明しているように、認知神話が崩壊し、販路が最強となった今、当たり前のことであるが、旧来型の広告主と旧来型の広告代理店は常に「認知」に依存する。「広告代理店の忘れ物「人は忘れる生き物」」の通り、人はすぐ忘れる生き物であるにも関わらず、である。必ず購入接点に近い場所に最も投資を行い、最後に余った費用で認知を獲得する程度の考え方であるべきであろう。


ここまで、CPAやDL率などといった指標化しやすい数字ではなく、もっと根本的な問題発見のための8つのポイントについて説明してきた。これらがすべて整っていたうえで初めて戦術面における問題発見のプロセスを取るべきであるが、不思議と戦術面のテクニカルな面ばかりに着目してしまうことが、広告主と広告代理店には多かった。こうして「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した今も、そもそもの本質課題が見つめ、課題解決しない限り、「広告が効くわけがない」という主張は変わっていない。この8つのポイントが、広告活動において一般化することを、著者は切に望んでいる。

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