top of page
  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告コンペを開く時に大切な6つのオリエン項目

更新日:2023年11月2日

17年の総合広告代理店勤務時代に自身が主として担当しないものも含め100件以上の競合コンペを経験してきた。広告主の業種業態もさまざまであったが、同じ広告主であっても、全く競合コンペのテーマは異なっていた。しかしながら、競合コンペの際に、提案しやすいオリエンとそうでないオリエンが広告代理店側にはあったし、ビジネスが成功しやすいオリエンとそうでないオリエンがあったと感じている。今では「広告トータルプランニング会社」となってしまったが、本稿では、著者が総合広告代理店時代に感じた「ビジネスが成功しやすい競合コンペ時のオリエン」の共通項について説明していく。


目次:広告コンペを開く時に大切な6つのオリエンポイント


前提となるポイントは具体化の線引き

ビジネスが成功しやすい競合コンペ時のオリエン6つの心得の前提は、どのポイントを具体化し、どのポイントをあえて具体化しないかの線引きにある。えてして、大手広告主は戦術面を具体化しやすく、ネット系広告代理店はその方が提案しやすいが、決してそうではない。とにかく戦略面を具体化して提示することをおススメする。戦略面の具体化と戦術面の自由化が、6つのポイントの前提にあるのだ。



一つ目の項目、何を目指しているのか

広告主の「競合コンペオリエン項目」一つ目は、何よりも「ブランドの志」を明記することである。その志をどう解釈するかで、すでに広告代理店の知恵の出しどころを推し量ることができるためだ。競合コンペは業者探しではあるものの、広告というビジネスの重要な要素を共に遂行するパートナー探しという視点に立たない限り、広告主にとって「割高で損をしやすい商取引」となってしまう。そのリスクを回避するには、まずは「ブランドの志」を明記したうえで、その志に則った戦略提案かどうかを見分けなければならない。短期的な話題化のための提案は、見ていてワクワクするかもしれないが、ブランドの志と全く違った方向へといざなってしまうリスクが大いにあるのである。まずは進むべき方向性が合致しているかを確認するため、ブランドの志を記載することをおススメする。


二つ目の項目、市場と自社トレンド

市場に存在しない広告対象物はない。すべて、必ずどこかの市場に存在している。その市場定義を明確に行ったうえで、その市場において自社の地位はリーダーなのか、チャレンジャーなのか、フォロワーなのか、ニッチャーなのかも明確にしたうえで、市場自体は成長しているのか否か、自社はその中で成長しているのか否かを記載する。なぜこのプロセスが必要かというと、当該市場における「戦い方」は市場での地位や市場トレンドにおける自社のトレンドなどによって、ほぼ規定されるためだ。例えば、衰退期にある広告対象物で新規顧客獲得を狙うことは非効率である。既存顧客に多くの点数を購入してもらう方が効率が良い。こちらはビジネスの原則的な部分なので、当然なのではあるが、どうしても広告代理店は「認知」に依存してしまうため、いかなる状況であっても認知獲得施策を講じてしまう。ブランド認知率の低さや理解度の低さなどを提案の肝に置く場合が多いが、そもそも市場が衰退しているときにそのような「原則論」を無視した施策を講じても無駄打ちなのである。こういった「何が何でも認知獲得」提案に対して疑問を持つためにも、市場定義と自社地位、市場トレンドと自社トレンドを明記することをおススメする。


三つ目の項目、競合社がどこなのか

ベンチマーク設定、つまりは競合社設定が弱い競合コンペのオリエンは多かった気がする。自分たちの「強み」も「言いたい事」も必ず「敵」や「市場」が存在して成立するものであるが、なぜかこの点が抜け落ちている、または、競合設定が曖昧な競合コンペオリエンを散見してきた。実は、広告代理店もコンペにおける「競合社」についてはとても強く意識する。あの会社はあのクリエイターを使うらしい、などが事前に情報として出回るのだ。しかし、広告主の競合社に対する意識は極めて低い。不況の日本において、必ずどこかから奪わなければその広告対象物は成長しないにも関わらず、である。よって、双方の理解を合致させるためにも、必ず競合社または競合市場を定義することをおススメしたい。


四つ目の項目、中心販路はどこなのか

広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」となった昨今において、販路ごとに広告で対応する戦略も全く異なる。それにもかかわらず中心販路が明確に設定されていない競合コンペオリエンが多かった。この販路ごとに戦略を分ける話も広告代理店が「苦手」とする領域だ。たとえリアルチャネルであったとしても、ドラッグストアなのか、スーパーマーケットなのか、コンビニなのかで、貢献する広告手法は異なる。このあたりも全く検討がなされぬまま、なんでもTVCM、なんでもYOUTUBEと提案している企画書を多く見てきた。広告代理店は総じて販路知識が乏しいという認識にたったうえで、販路構成について競合コンペのオリエンで明示することをおススメしたい。


五つ目の項目、売上目標はどれくらいなのか

広告予算だけ明示され、売上目標が明示されないことも多かった。広告主の中では粗利からシミュレーションしているのかもしれないが、プロ意識が高い広告代理店であれば、その予算が過大なのか過少なのかをまずは判断したいはずだ。逆に言えば、その適正予算に対する知見も持ち合わせていない広告代理店が多いため、ふるいにもかけることができるのである。業種業態によって、おおよその広告投資比率はわかるものだ。「業者」として広告予算提示を受けて提案して実行してきただけの広告代理店勤務者にとっては、広告予算を頂けるだけ頂こうと思うだけなのである。「広告代理店が「広告全領域の専門家」と思われない理由」でも述べたように、意識の違いにプロかどうかの差が出てくるため、競合コンペのオリエンで明記することをおススメしたい。


六つ目の項目、戦術面は明記しない

競合コンペのオリエンとは難しいもので、具体化しすぎても、自由過ぎても難しいと広告代理店は言ってくる。ただ、上記5つの項目さえ明記されていれば、自ずと最適なプランは確定し、即座に提案できるものである。しかしながら、これ以上の戦術面を記載してしまう広告主が多い。もしかしたらデジタル広告よりもTVCMの方が効率的であるかもしれないのに、これまでの経験に依存してデジタル広告を与件としてしまう。「今までの広告代理店のやり方」が悪かっただけの可能性もあるのだ。また、大手になればなるほど、最新のメディアトレンドも入手しており、広告主が過去した時と戦術面の環境が大きく異なっている可能性もある。最後にして最重要なのが、この「戦術面を明記しない」である。競合コンペのオリエンには、戦術面を記載しないことをおススメしたい。



6つの項目について説明してきたが、「戦略面は徹底して具体的に明記し、戦術面は明記しない」と要約することができる。


その他について詳細のオリエン項目はコチラ☟




「もっと規定してくれ」と広告代理店が言ってこようものなら、その広告代理店の戦略面への理解はその程度なのである。また、売上目標を明記するだけで、本来は、広告予算は不要なのである。プロとして最適投資比率がわかってさえすれば、ではあるが。「広告トータルプランニング会社」である当社でもオリエンのサポートを行っているが、「正しい広告競合コンペ」が行われるこの項目が浸透することを祈っている。

bottom of page