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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

大手広告主は、直接プラットフォーマーに連絡する

更新日:2023年3月22日

17年勤めた総合広告代理店時代に、最も変わったことは、「広告主とメディアの距離」だと著者は考えている。マス広告全盛の時代には「広告代理店が介在する」ことが当たり前であり、広告主は媒体社に連絡はできても直接申し込みはできなかった。しかし、ネットの隆盛により、広告主が直接媒体社と連携し、申し込みを行い、広告運用することが可能になった。今後、ますますその動きは一般化すると思われる。本稿ではこの点について説明していく。


目次:大手広告主は、直接プラットフォーマーに連絡する


プラットフォーマーの営業視点

AmazonやGoogle、Facebook、Twitterなどの大手プラットフォーマーたちは、広告担当営業を多く抱えており、広告主および広告代理店に対して自社広告を実施してもらうよう日夜提案をしている。プラットフォーマーにもよるが、営業組織は、大手広告主担当、ネット系代理店担当、総合広告代理店担当がいる。もともと、広告代理店勤務者が多くプラットフォーマーの広告営業担当に転職しており、広告代理店の内側を知り尽くしている。彼らがいるからこそ、各組織における優先順位も決まってくるのだ。



プラットフォーマーの第一優先は広告主の教育

広告の決裁権者は広告主に他ならない。その時点で、プラットフォーマー営業部隊のミッションは、まずは広告主をいかに自社広告に出稿させるかとなってくる。この時点で、実はネット系代理店や総合広告代理店よりも、優先的に広告主を扱うことが規定される。プラットフォーマーとしては、常に新たな情報提供を広告主に対して行い、そのうえで自社広告に出稿させるプロセスとなるのだ。この情報提供を行う代わりに、年間の出稿量を事前に約束させて契約を結んだり、出稿額に応じて担当者を設定したりする。こうして、広告主第一優先の契約形態が出来上がる。確かにマス媒体も同様のことを行ってはいたが、情報のアップデートは少なく、広告主が直接連絡を取り合う必然性も低かった。しかしながら、広告枠の情報アップデートが速いプラットフォーマーにおいては、広告主も最新情報をいかに取得するかに躍起になっているのだ。



第二優先以下のネット系代理店と総合広告代理店

著者は広告主に非常に近い位置で業務を請け負っていたため、広告主とほぼ同タイミングでプラットフォーマーの最新情報を取得できていたが、第二優先以下となった広告代理店はなかなか最新情報が落ちてこなかった印象がある。部署によるのかもしれないし、公的情報ではなかっただけの可能性はあるが、明らかに広告主との情報鮮度に差があった。これは、決裁権を保有していない時点で致し方ないことだとは思う。しかしながら、こうして、プラットフォーマー広告については、広告主の方が詳しいという状況を生み出していくことになる。


信憑性/正確性/スピードでも広告代理店が劣後に

かつて、マス媒体の場合は、「代理店の言っていることが本当なのか確認したい」という観点から、広告主は直接媒体社と連絡を取り合っていた。それは、媒体情報の信ぴょう性に疑義があったためだ。広告媒体は、元来、本当なのか?という疑念が抱かれやすい商材ではあった。しかしながら、プラットフォーマー広告については、信ぴょう性どころか正確性や鮮度においても直接連絡を取り合う方が効率的であり、信頼性が高いものとなってしまった。大手広告主が逆に、「知っているか?」と広告代理店を試すような情報格差が生じてしまったのである。さらに、「「提案が遅い」と言われてしまう広告代理店の「裏事情」」でも説明しているように、広告代理店を介在させていては、スピードが遅くなるだけなのである。こうして、ますます広告主が直接プラットフォーマーに連絡するメリットが増えていくのである。


プラットフォーマー内での情報提供優先順位は確定した

いかに広告代理店としてプラットフォーマー達へ情報提供の優先順位を上げるようにと圧をかけようとも、決裁権がない限り、情報提供の優先順位を上げてくれることはないのである。かつてのマス媒体に対峙する際のように、上から目線でモノをいっても仕方ないことだ。それにも関わらず、変わらず圧をかけようとする広告代理店は多い。それが、昔取った杵柄なのかどうかわからないが、建設的な会話になっていかないことが散見できた。


情報鮮度を高めるために、広告主に近い立場になること

圧をかけても優先順位を上げてくれない。情報鮮度を高めるには、広告主に極めて近い立場になること以外、方法はないのである。ブランドAE制を採用している広告主は少ないかもしれないが、ブランドAEであればプラットフォーマーも頻繁に情報共有を行ってくれる。広告主を教育したとしても、広告代理店側から提案されなければ、採用に至らないからだ。こうして、ブランドAE代理店にだけは広告主と同じタイミングでの情報提供がなされることになる。情報鮮度を高めるために、広告代理店に残された手はこれ以外にないのである。「二分する広告代理店タイプ「スポット型」「パートナー型」」」でも説明しているように、パートナーになる他、メディア情報鮮度を高める方法はないと著者は考えている。


メディアを完全に支配していたかつての広告代理店は消え去り、今は圧倒的に支配される関係性になりつつある。それは決裁権がない以上、どうしようもない。しかし、このままでいると、どんどん広告主の方が最新情報を手に入れることとなり、ますます広告代理店の提案に信ぴょう性がなくなっていってしまう。「介在する意義性」に限界を感じた著者は18年勤めた総合広告代理店を辞め、「広告トータルプランニング会社」である当社を設立したが、広告代理店が取る手はたった一つしかない。どれだけの広告代理店が広告主と近い位置に座することができるのであろうか。

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