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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

ネットが変えてしまった消費者の「購買行動モデル」

更新日:2023年3月22日

かつての4マス時代は、TVを代表するメディアが情報を支配し、広告主もそのメディアに身をゆだねる形で広告活動が行われていた。しかし、ネットの登場によって、広告に対する生活者の態度も、購買行動モデルも大きく変わってしまう。著者も総合広告代理店に17年勤めてきたが、消費者の「広告に接する態度」が大きく変わっていくさまを見続けていた。広告のメディアプランニングを行う際には、単純にメディアに接触する時間ではなく、そのメディア内の「広告にどういう態度で接触しているか」「結果的にどういう購買行動モデルをとるか」が極めて重要である。本稿では、広告に対する態度や購買行動モデルが、なぜ、どのように変わってしまったかについて説明していく。


目次:ネットが変えてしまった消費者の「購買行動モデル」


ネットが変えた情報への接触態度、「興味」

人には元来「興味」というものがある。興味があるものは自ら調べ、探す。それは今も昔も変わらない。しかしながら、ネットとスマホの登場で調べて探すという労力が、皆無になってしまったのだ。よって、日常の中に「検索」時間が増えることになる。そこで、興味がより深堀りされることとなり、興味が固まっていく。かつて、TV番組で視聴率を取る番組は数多くあった。40%以上の視聴率など普通のことだったのである。それは、興味を調べて探す労力がかかるため、興味を人にゆだねつつあったのだ。学校で、会社で、話す会話は昨日のTV番組のことばかり。社会に溶け込むための共通言語がTV番組であり、小さな社会への仲間入りを果たすことが「興味」であったのである。



ネット、特にSNSの存在が「同じ興味集団」を作ることに

身近な存在でしか「集団」を作ることができなかった時代を経て、ネット、特にSNSは、全世界で「同じ興味を持つ仲間」へのアクセスを可能にした。学校や会社で友人がいなくとも、ネットの世界で「友人」を生み出すことを可能にしたのである。その「同じ興味集団」との共通言語は、「同じ興味」でしかない。無関係な政治や芸能ニュースなど、共通言語になりえないのだ。こうして、「同じ興味集団」という形で、一つの社会が形成されていくことになる。


「検索」がもたらしたこと

なんでも簡単にすぐに調べられる「ネット」の存在は、TVやメディアの権威すら脅かすことになる。「ウラ話」が暴露されたり、メディアの矛盾についての意見がネットでも出回ることになるからだ。その結果、4マスの「情報に対する信頼」が低下することになる。こうして、マス広告についても信頼性が高くはない存在となっていく。マスメディアがもたらす情報の精度への問題ではなく、反証をする意見をすぐに「検索」できるようになったことが、マスメディアの信頼低下の最大の要因であったと著者は考えている。


「自分に合うコンテンツが自動的に表示される」ように

YOUTUBE、そして各種SNSも、自分が検索したワードや、チャンネル登録またはフォローの結果をアルゴリズムが判断して、自分に合うコンテンツが自動的に表示されるようになっている。生活者はこれが便利でたまらない。一度検索して、チャンネル登録またはフォローをするだけで、「興味があるコンテンツ」ばかりが自分に表示されるメディア体験を経て、「興味がないことだらけ」のマス媒体に反応を示さなくなってしまったのだ。こうして、情報接触に対して「興味があるかないか」が先に立ち、その後に初めて認知・認識するような状況になっていく。



失われるAIDMAやAISASという購買行動モデル

今でも、「双方の違いを明確にする」ために著者はAIDMAとAISASを多用する。しかしながら、本来的にはもうこの購買行動モデルは成立しないと考えている。AIDMAを分解すると、Attention⇒Interest⇒Desire⇒Memory⇒Actionであるが、先に述べたように、人の情報接触は、「認知=Attention」から始まるのではなく、その前に「興味=Interest」が先にたってしまい、認知すら実現しないと考えているからだ。つまり、「興味=Interest」が一番先に立つが、「興味」から情報を与えることが難しいため、「興味」がある人を特定した後で、つまりはターゲットを特定した後で、その「興味があるターゲット」に「認知=Attention」⇒「欲求=Desire」⇒「記憶=Memory」⇒「行動=Action」という設計をしなくてはならないのである。AISASもまた同様のことだ。


AIDMAではなく(I)+ADAである

AIDMAかAISASかFMOTかで整理する際はそのまま使って構わないが、たとえばAIDMAであった場合、実際は(I)+ADAであると、著者は考えている。興味がある人をきちんと特定してから、Attention、つまりは認知施策を講ずるということである。興味=Interestを(I)としているのは購買行動モデルの上位概念として「興味」が存在することを示したものだ。


今後もますます「興味」というものが強みを増していくと著者は考えている。それほど、情報量が多い世の中だからだ。「興味がある人」を前提に、「認知」⇒「購買」へと移していく、AIDMA⇒(I)+ADA、AISAS⇒(I)+ASASといった購買行動モデルに順次移行するだろう。「広告トータルプランニング会社」である当社では業種業態毎に購買行動モデルを整理する「Comm. BUY TYPE」ではわかりやすくするためにAIDMAなどを用いているが、実際は(I)+ADAであると考えている。そして、「I」だけですべてが完結する購買行動モデルも近い将来確立すると、著者は考えている。

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