広告を実施するとき、実施時にいくつかの会社に声をかけ、コンペという形式をとることがある。しかしながら、ビジネスは常に続いていくものだ。コンペを行い、広告代理店選定を行い、納品に向けて進めていく中で、広告主からすれば数々の疑問を抱くだろう。そのやり方で正しいのか、大手広告主であれば他の広告代理店に意見を求めることもできる。しかし、複数の広告代理店が出入りしているのは、相当に稀なケースで、基本的には広告代理店1社しか取引がない広告主がほとんどであろう。17年勤めた総合広告代理店時代に、著者はこの点に疑問を抱いてきた。本稿では、広告におけるセカンドオピニオンの重要性を説明していく。
目次:広告にセカンドオピニオンという考えを
たった一度の提案で、「心中」できるのか
広告主による広告代理店選定競合コンペは数多く行われている。コンペであるべきか、AE制を採るべきかは別にして、確かに日夜、コンペが行われているのだ。総合大手広告代理店にも数多くのコンペ参加依頼が届き、日々対応に追われている。重要なことは、一カ月ほどの準備で提案する内容だけで、ビジネスに極めて重要な「広告」を、一度の提案だけで1社に決めて問題がないかという点である。提案時はある程度脚色して提案を行うのが、広告代理店の常である。実際に、提案内容が叶わないことや、後々に増額を要求されるケースもある。本当にその広告代理店と「心中」して構わないのだろうか。
大手広告主以外は「セカンドオピニオン」が存在しない
例えば、経営者の場合は、自らの友人など、知り合いに広告を依頼するケースなどがまさにそうだが、上司によって決められた取引先と、マーケティング担当者、宣伝担当者は向き合わなければならないことも多い。提案内容に違和感を覚えたとしても、その違和感を払拭することができず、違和感を抱えながら業務を進行することになる。しかも、広告施策を実施してみても、思っていたような結果にならないことも多々ある。しかしながら、マーケティングまたは宣伝担当に着任したものの、まだ歴が浅く、その違和感の理由を明確に説明することもできない。こうして、マーケティング担当者や宣伝担当者は孤立していくのである。「セカンドオピニオン」さえいれば、こういった不安も解消できるのではないか。
なぜ「セカンドオピニオン」が不在なのか
総合広告代理店の売り物は、媒体と制作である。「賢い言い方」をしてこれらの「商品」を売ってきた。総合広告代理店には「単純に相談を受ける」という機能が備わっていない。よって、相談を受けたら商品を売り込んでしまうのだ。そして、「商品」を持たない広告代理店は、総合広告代理店であっても、ネット系代理店であっても、日本には存在しないのだ。つまり、一度広告代理店に相談をしてしまうと、「売り込みを受ける」と認識している広告主も多く、そして実際に広告代理店は相談を受けるふりをして「商品」を売り込んでしまうのだ。
広告代理店でセカンドオピニオンが成立しない2つの理由
セカンドオピニオンに対するニーズが広告主の中で顕在化していない中ではあるが、総合広告代理店も、ネット系代理店も、セカンドオピニオン「的」なサービスを提供している会社もある。決して一般的な概念ではないが、存在するにはするのである。しかし、著者は本来的なセカンドオピニオンは成立しないと考えている。その理由は「網羅性のなさ」「売り込みのための一手でしかない」である。
「網羅性のなさ」がセカンドオピニオンを成立させない
ネット系広告代理店などが提供するセカンドオピニオン「的」なサービスは、たとえばSEOやリスティングなど、極めて閉じた分野に限られていた。確かに、広告活動としてそれらを実施している企業は多くあろう。しかし、それ「しか」実施していない広告主は極めて少ないのである。ロゴを作り、ブランドサイトを作り、SEOを行い、LPを作り、リスティングを行い、GDNを実施する。少なくともそれくらいの広告施策を実施しているのである。そういった中で、SEOやリスティングといった一部の限定した部分だけのセカンドオピニオンは意味をなさないのではないだろうか。
「売り込みのための一手でしかない」
広告代理店にその相談内容の「機能」を有している限り、「ここに問題があるので、こういった形に変えて弊社で実施しましょう」と提言するだけに終わることは容易に想像がつくであろう。先のネット系代理店のケースもそうであるし、総合広告代理店の「セカンドオピニオン」も全く同じであった。説明するまでもなく、その機能を有している限り、単なる「売りこみ」に過ぎないのである。そのため、「自社にその機能を有している限り」、フラットで正確なセカンドオピニオンは成立しえないのである。
成立要件は「網羅的」「機能を有しない」
ここまで説明してきたように、広告業界におけるセカンドオピニオンは必要であるにもかかわらず、網羅的ではなく部分的なセカンドオピニオンしかできないうえ、何よりも自社にその機能を有してしまっているがために、フラットで正確なセカンドオピニオンにはなりえなかった。総合広告代理店勤務時代、著者はこの問題意識を常に持ち続けることとなり、広告代理店ではなく「広告トータルプランニング会社」として当社を創業するに至ったのである。
決してコンサルではないセカンドオピニオンの必要性
セカンドオピニオンというと、実行力という機能を有しないコンサルのような印象を受けることもあるだろう。しかしながら、セカンドオピニオンは、実行しようと思えば実行できる具体性も持ち合わせているのである。「コンサル」は免許が必要なく、日本にはあらゆる「コンサル」が存在する。確かに「コンサルティング」とはもともと「顧問、相談、診察」であったが、過去の経験則によるフレームワークも持たず、概念的に顧客に対してアドバイスを行うコンサルを、著者はたくさん目の当たりにしてきた。セカンドオピニオンはきちんと知見を有しつつ、実行力も持ち合わせたうえで、フラットに意見を述べることが必要である。この違いを明確に理解しなくてはならない。
今こそ、広告にセカンドオピニオンを
これまで説明してきたように、広告にはセカンドオピニオンが欠かせない。しかしながら、広告代理店は「相談をきっかけに売り込みをするだけ」であり、「コンサル」は実行力を持ち合わせていない。こうして需給が一致せず、正しい「広告のセカンドオピニオン」が成立していないのだ。
ビジネスのスピードが速まり、すぐに施策を実行しなければならない反面、広告代理店に疑問を抱いたとしても相談する相手もおらず、業務を遂行してしまう広告主。広告という業務の特殊性からして、疑問をすぐに質問できるような、「広告のセカンドオピニオン」は絶対に必要であると、著者は考えている。それが、相談を専門に受け付けつつ、依頼があれば実行も可能であるという「広告トータルプランニング会社」の当社を設立した理由だ。当社だけは「セカンドオピニオン」が成立すると断言できる。当社だけに限らず、世の中に「広告セカンドオピニオン」が整備されれば、「広告主が広告に悩む時間」を減らすことができるだろう。
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