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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告代理店の高額なフィーに悩む広告主

更新日:3月21日

かつて、総合広告代理店の「商品」は媒体枠であった。媒体枠ありきで、TVCM等の広告制作もあった。それらの「商品」はもっともらしく「賢い言い方」で売られていた。これらが飛ぶように売れた。そして総合広告代理店に高学歴の学生が集まり、結果的に高収入職業の代表格となるのであった。しかし、「媒体枠」の低価格化が進み、「運用型」が主流となりつつある今、総合広告代理店は従来はタダであったフィーを「商品」としようとしている。外資系広告主ではなく日系広告主にもフィーを請求するようになった昨今、アレルギーを感じる広告主も多い。著者は総合広告代理店に17年勤めたが、この大きな流れを最前線で感じてきた。その著者が、本稿において、広告代理店のフィーモデルについて説明していく。


目次:広告代理店の高額なフィーに悩む広告主


「賢い言い方」で「商品」を売っていた総合広告代理店

マス広告の媒体枠は、誰がどう見ても同じ「商品」である。しかしながら、エスキモーに氷を売るわけではないが、その媒体枠に「賢い言い方」を付けることで、総合広告代理店は大量の「商品」を広告主に販売していた。マージン率が非常に高いうえに、高額な商取引であったため、利益を多く生み出し、高収入を可能にした。総合広告代理店は、高学歴大学生の憧れの就職先となっていた時代もあったのである。しかし、2000年を過ぎるあたりから徐々にマス広告の媒体枠の価格が下落し始め、デジタル広告に端を発した「運用型」「効率」の概念が、媒体枠という最強の「商品」を値崩れさせることになった。そうなると、「賢い言い方」合戦になるが、「賢い言い方」のできる「賢い方々」は、別の、たとえば外資系コンサルティングファームなど、「より高額な商品」をもっている業界または企業へと転職し始めるのである。



「賢さ」だけでは売上と利益を保てない

マス広告の媒体枠という最強の「商品」が値崩れし始めている今、スタッフの「フィー」を「商品」にしようとする動きが加速している。フィーを商品にしている例は、資格専門職たる弁護士のほか、コンサルティングファームなどがある。特に外資系のコンサルティングファームは、主に大企業の経営層に向けたコンサルティングを行っており、その価格は極めて高額である。それだけの高額なフィーを払える時点で大企業だけが経営コンサルに仕事を依頼できるのだが、そうなると顧客数は決して多くはない。対して総合広告代理店が出入りする企業は確かに大企業が中心ではあるものの、スタートアップをはじめとした中小規模の企業も存在する。それら中小企業には、高額なフィーを支払うという文化がないため、総合広告代理店のフィーに対して高額すぎるという印象を受けてしまい、すんなりとフィーを受け入れてくれないことが多い。こうして、新たな「商品」であるフィーが、「総合広告代理店が期待する価格通りに」「多くの広告主に対して」請求できるものではなくなってしまっているのである。つまり、「商品」が媒体枠であった時代と異なり、フィーだけでは総合広告代理店の規模を維持できなくなってきているのだ。



新たな「商品」を模索する総合広告代理店

フィーでの請求に限界を感じた総合広告代理店は、今や違う「商品」探しに躍起になっている。広告主と協働して新規事業を立ち上げたり、スタートアップ企業に投資または出資してIPO時にマネタイズすることを画策している。しかしながら、未だに媒体枠に代わる「商品」に巡り合えていないように、著者としては感じている。もともと「広告を打ちたい」という顕在化された企業に対して、「媒体枠」と「広告制作」を売るというシンプルな事業を、長きにわたって営んでいたため、リスクテイクも先行投資からの回収時期検討も、得意ではない総合広告代理店。そもそも事業投資から回収までのサイクル把握が苦手だった総合広告代理店にとっては、マス広告の媒体枠は、極めて効率的で売りやすい「商品」であったのだ。こうして、今もなお新しい「商品」探しに東奔西走しているのである。


フィーの相談所


「賢い言い方」は「商品」を売る時に約たったが、「賢さ」だけでは値が付かない。「アウトソース化とインハウス化に翻弄される広告代理店」でも説明しているように、アウトソースは激安化している。著者もこうして「広告トータルプランニング会社」である当社を設立したが、つくづくマス広告の媒体枠という「商品」は最強だったなと感じる。当社では「本質的な課題発見」と「明日から動けるポイント」を即座に提示することを「商品」としているが、総合広告代理店は「商品」探しに時間を要するのだろう。

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