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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

購買行動モデルから導くプロモーション戦略

更新日:2023年3月29日

17年の総合広告代理店勤務時代に、数多くの業種業態の広告主を担当してきた。失われた30年と言われる現代において、幸いなことに成長した事業、サービス、商品には、一つの共通項があった。それは、購買行動モデルを踏み外さないということであった。5A、カスタマージャーニーマップやフルファネルマーケティング、パーセプションフローモデルと、次々に新たなフレームワークも登場するが、本来はその上位概念に購買行動モデルが存在する。そして、著者は業種業態によって原則的に購買行動モデルは規定されると考えている。それにも関わらず、購買行動モデルを無視するようなプロモーション施策が溢れているため、本稿にて正しい購買行動モデルの向き合い方と、活用方法を説明していく。


目次:購買行動モデルから導くプロモーション戦略


まずはAIDMAとAISASだけ覚えておけば良い

今まで提唱されてきた購買行動モデルは数多ある。代表格は、AIDMAであろう。2000年代に入ると電通がAISASを提唱する。以降、P&GのFMOT、GoogleのZMOT、AICEASなど、さまざまな購買行動モデルが提唱されている。昨今ではGoogleが提唱するバタフライサーキットなど、「購買行動が一連の流れになっていないもの」も多く存在する。コトラーの「マーケティング4.0」では女性の購買行動は「一連の流れではなく様々な検索行動を行いながら行ったり来たりして購買する」とも述べているが、それは「価格が高いもの」を前提としている。つまり、購買行動モデルは、原則的には「金額」と「販路」のたった2要素で決まると著者は考えている。大きくは、AIDMAとAISASだけ認識していれば事足りるのだ。AIDMAは「Attention(認知)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字をとっている。また、AISASは「Attention(認知)」「Interest(興味)」「Search(比較検討)」「Action(行動)」「Share(拡散)」の頭文字をとったものだ。


AIDMAを採用する業種業態

購買行動モデルを把握するときに、一番シンプルな思考のプロセスは、「1000円未満か1000円以上か」で判断することである。「1000円未満」の商品やサービスであれば、調べずに購入することが多い。コンビニエンスストアの平均単価は577円だが、1000円未満であるため、目に留まったものを買う可能性がある。目に留まる、というのは「過去に見たことがある」ことで止まりやすくなるため、認知をさせておいた方が手に留まる確率は高まるのである。「1000円未満でコンビニエンスストアが主販路」の商品は、非計画購買型商品、つまりは衝動買い商品のモノが多く、AIDMA的な購買行動モデルを採る。しかし、コンビニエンスストアにも1000円以上の商品も多くある。たとえばお葬式用のネクタイや、都心部であればYシャツも販売している。これらは、緊急購買商品と呼ばれ、たとえ1000円以上であったとしても検索することなく、購入に至る。緊急購買商品は、当然、事前認知の必要性は低いのである。



AISASを採用する業種業態

最近ではAISASを採る業種業態が増えていると感じている。なぜなら「調べる」ことが一般化したからだ。かつては、雑誌を購入し、難しいモノであれば図書館などで文献をあさる必要があった。しかし、今はスマホで簡単に物事を調べることができるのである。さらに、自らが何かを購入する際は、下がる収入を踏まえて、「損をしたくない」支出意向となり、「調べて比べる」行動をとることが増えた。業種業態によって、Googleで調べるのか、Instagramで調べるのか、Amazonで調べるのかはわかれるがいずれにしても「比較検討」を行うことになる。目安は「1000円以上」。化粧品も、車も、保険も、シャンプーであっても、すべて「調べて比べる」行動をとるようになったのである。つまり、調べた時にプロモーション施策を投下できていないのであれば、大至急施策投下の検討をしなければならないのである。


AISASモデルなのにAIDMAモデルを採用していることも

上記のように年々AISASモデルを購買行動として採用する業種業態が増えている中、未だにAIDMA的な購買行動モデルを採用している企業もある。かつてマスマーケティングが周流で、AIDMAに慣れ親しんでいる大手広告主にその傾向はみられると著者は感じている。AIDMAとAISASとでは、投資領域の中心が全く異なるため、予算配分、いわゆるアロケーションの段階で、ブランドが成長しない配分をしてしまったりする。それぞれの投資最重要フェーズがどこなのかが、整理されていないためだ。



1000円未満でコンビニ販路の場合、Attentionは重要

非計画購買、つまりは衝動買いを促すような、コンビニエンスストアやスーパーマーケット、ドラッグストアを中心販路とする、1000円未満の商品はAIDMAを採用する。こちらの購買行動モデルは極めてシンプルで、いかにターゲットの認知率を高め、購入意向を高めるか、だけである。高度経済成長期の広告はまさにこの点だけを行ってきた。当然、広告予算の重点投資先はAIDMAの一つ目の「A」、Attention(=認知)領域となる。


1000円以上の商品は、Search投資が最重要

対して、AISASは「調べて比べる」領域で負けてしまっては、いかに店頭配下が進んでいようとも、無意味と考えて間違いない。まずは、Googleでの広告リスティングやSEO、InstagramやTwitterでの公式Instagram/Twitter運用またはアンバサダー施策、Amazon内EC広告の実施などが最優先となる。業種業態に寄らず、Googleは主に「単に調べる」であり、Twitterは「評判を調べる」であり、Instagramは「ユーザーを調べる」であり、Amazonは「商品を買うつもりで調べる」と、検索意向が違うことはポイントとして踏まえるべきだが、このSearch領域への投資は絶対に外せない。1000円以上の商品であり、本来はAISASモデルであるにも関わらずAIDMAモデルを採用し、Search領域への投資をしないケースも多々見受けられる。それは、総合広告代理店が主としてプロモーションを担っていることが多いのだが、「オウンドメディア中心のプロモーションに総合広告代理店はどう向き合うか」や「SEOやリスティングが苦手な広告代理店」でも説明しているように、総合広告代理店の担当者がSearch領域に明るくないことが原因となっていることが多い。


購買行動モデルで重要なのは、施策のモレを防ぐこと

「購買行動モデルはすでにわかっている」と豪語する広告主や広告代理店も多く存在する。しかし、きちんと会話してみると、本当の意味を理解していないように思う。いくら正しい購買行動モデルを採用していたとしても、各フェーズに施策を投下していないことが多いためだ。たとえばAISASの購買行動モデルを採用している点では問題ないが、Search領域だけに投資しており、それ以外に投資をしていない、などがその例である。確かに、最重要投資フェーズはSearch領域であるが、Attention領域に全く施策投下をしないと間口拡大を期待することはできない。また、Action領域、そしてShare領域まで施策投下できていなければ、どこかでターゲットは逃げてしまう。「購買行動モデルがAISASであるとわかっている」のであれば、きちんと一文字ずつ分解して、どこの施策が足りていないのか、見直す必要があると感じることが多かった。


購買行動モデルを理解したうえで施策投下し成功する

AISASモデルにも関わらずSearch領域よりもAttention領域に投資を優先して成長を続けているブランドなどがある。これらには、必ず理由がある。そのからくりを把握さえすれば、その投資戦略を模倣することだってできるのだ。クレジットカードのビジネスモデルは明らかにSearch領域が大事であるが、その整備が終わったらAttention領域への投資を検討する。TVCMを大量に投下し、サービスブランド名連呼をしている某企業などは、「指名ワード」を狙うことでトータルのプロモーションコストを抑える意味合いがあるのだろう。おそらく、ビッグワードと指名ワードとのCPAに雲泥の差があるのだ。重要なのは、原則として購買行動モデルがある中で、どこにポイントを見出して、投資優先を変えるか、という視点を持つことである。購買行動モデル自体を否定することではないことに注意しなくてはならない。


広告主や広告代理店にとって、購買行動モデルの把握は最重要だと著者は考えている。しかし、なかなか購買行動モデルの話が社内で上がってくることはなかった。基礎的なことというよりは、原則的なことだと認識している。「広告トータルプランニング会社」である当社では「Comm. BUY TYPE」を開発し、広告で悩む時間をゼロにしようと挑戦しているが、正しい購買行動モデルの採用が、ブランド成長のカギになると、著者は考えている。


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