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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

クリエイティブの誤解~クリエイティブは左脳作業~

更新日:2023年3月29日

誤解されつつある「ブランディング」~「イメージ戦略」との違い~」と同様に、クリエイティブにも誤解が蔓延している。広告クリエイティブは、なぜか言語化されない、極めて右脳的な作業であると誤解されている。そのため、なかなか言語化されない「右脳的」というべきか、説明責任を全うしないというべきか、いわゆる非論理的な広告クリエイティブは数多ある。しかし、それらは広告対象物を売上に貢献することはない。「ぶっ飛んだ」アイデアを出そうが何だろうが、広告対象物の売上が上がらなければ全く意味がない。それどころか、広告費を捻出した広告主にとっては損失である。17年勤めた総合広告代理店時代にも、この点を理解していないクリエイターが残念ながら存在した。広告クリエイティブは左脳的に、至極論理的に行われる作業であるべき理由を本稿で説明していく。


本稿はこのような方におススメ!


✔ 代理店の提案は面白いが本当に効果がわからないとお思いの広告主

✔ 面白いと自認しているがなかなか広告主にアイデアが採用されないクリエイター

✔ クリエイティブジャンプを求められなくなったクリエイター


目次:クリエイティブの誤解~クリエイティブは左脳作業~


クリエイティブジャンプという言葉

広告クリエイティブは広告主が思いつきもしないようなものを求める時代は、あるにはあった。そこに「面白さ」を感じ、広告主もそういったアイデアを採用していた時代だったのである。そのとき、頻繁に「クリエイティブジャンプ」という言葉が用いられ、総合広告代理店の中でも「クリエイティブジャンプ」のためのブレストが日常的に行われていた。しかし、今はデータが集まり、どういう広告クリエイティブが実際に商品を売る力があるのか、事前にある程度予測できるようになってきている。次第に、広告主から「クリエイティブジャンプ」を求める声が減ることになるが、なぜか総合広告代理店社内では「クリエイティブジャンプ」という言葉が頻出するのである。



ジャンプすることのリスク

ビジネスはある程度予測を立てながら行うことが前提である。メーカーにおいては売上予測や目標に基づいて工場のライン確保や原料調達が決まり、各種マーケティング施策が実行される。そのため、ある程度の予測とそれに対するアクションが規定されることになる。特にプロモーションにおいても、あらかじめその領域における目標値、つまりはKPIを設定して行うことになる。しかしながら、それを踏まえずに自由にクリエイティブジャンプをしてしまう総合広告代理店スタッフは多い。しかも質が悪いのが、たとえ本当に広告主にプロモーション知見がなかったとしても、自らのアイデアを不採用にする広告主が「素人だ」や、「理解がない」などと事後的に話すこともある。広告主の側に立ってみれば、当たるかどうかもわからない、突飛なアイデアに、大切な資金を投資するわけはないのだから、当たり前のことでしかない。クリエイティブジャンプは、提案する総合広告代理店としても広告主としてもリスキーな提案になってしまうのである。


クリエイティブジャンプよりも、マーケティング戦略

突飛なアイデアを出すことに躍起にならず、まずは広告主のマーケティング戦略への理解を深めることから、正しい広告クリエイティブ開発がなされる。そうなると、いわゆる与件だらけでがんじがらめになっているように思ってしまう、昔気質なクリエイターもいるにはいる。確かに、オリエン返し、つまりはオリエンを破ることでコンペを獲得することもあるが、著者の経験上、そういった広告キャンペーンは大抵提案通りにはいかず、失敗に終わり、キャンペーン失敗の戦犯となってしまい、翌年のコンペにはもうお声すらかからなかった。これは「ロゴ開発で忘れがちな「市場」の視点」で説明しているように、ロゴ開発においても同様である。たとえ、自分の個性であるアイデアの幅が狭まったとしても、広告対象物の売上のために広告クリエイティブがある以上、マーケティング戦略への理解が最重要なのである。



なぜ、クリエイティブファーストではいけないのか

いつ何があるかわからないのがビジネスの定説である。明日、競合商品やサービスが生まれてくるかもしれないし、天変地異や、今のコロナウイルスのようなこともある。タレントが急に不祥事を起こしてしまうことも、離婚することも、亡くなってしまうことだってある。その際に、そういった不測の事態が起こった際には、すぐにマーケティング戦略を転換することになる。クリエイティブファーストで、マーケティング戦略をあまり重視していないと、広告クリエイティブと商品やサービスがちぐはぐになってしまう。今、変化の激しい時代にあって、マーケティング戦略と連動しない広告クリエイティブは、無意味なのである。


正しい広告クリエイティブは、左脳作業

市場の定義や競合の把握、目指すべき売上目標に加え、それらに基づいたトンマナやフォントが規定される以上、それらの規定をいかに順守し、広告クリエイティブ開発を行うかになる。正しいクリエイティブ作業には「クリエイティブ・ブリーフの未来を考える~クリエイティブ・リーディング~」でも説明しているように、マーケティング戦略をきちんと具体化し、適したリーディングは必須である。たとえば、色についても、赤であればリーダーブランドや、情熱的という因子が人の中に形成されており、マーケティング戦略が言語化されていればいるほど、広告クリエイティブは言語をビジュアライズする作業になる。なんとなく、ではダメで、徹底的にマーケティング戦略という「法典」に則ることが必要となるのである。つまりは、左脳的な作業となるのである。


右脳=マス広告、左脳=デジタル広告ではない

広告クリエイターの中には、左脳を重視するのは「デジタル広告」で、「マス広告」は右脳、と考えている人もいるが、著者は「広告クリエイティブ作業はすべて左脳」と考えている。理由はこれまで述べてきたとおりだが、ジャンプも、突飛も、不要なのではないだろうか。しかも特にAD、アートディレクターであれば「優秀なアートディレクターは言葉を持っている」でも説明しているように、「言語理解」「言語化」の能力は必須だと著者は考えている。


論理的に思考を進めることで、広告クリエイティブは開発されていく。つまり、極めて左脳的な作業によってクリエイティブは生まれる、ということになる。「広告がもうエンターテインメントではなくなった時代背景」でも説明しているように、決してエンターテインメントではないのだ。しかし、まだ右脳的に考えようとするクリエイターも存在する。この点が、クリエイティブに対する誤解だと著者は考えている。「広告トータルプランニング会社」である当社では、今後、「左脳重視の広告クリエイティブ開発」が主流になっていくと考えている。





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