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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告視点での「フォロワーではなくニッチャーを目指すべき理由」

更新日:2023年3月22日

大きな市場には市場の1位であるリーダーと、2位であるチャレンジャーと、3位以下のフォロワー、そしてニッチャーがいる。このように、経営資源の質と量とで4類型したのがコトラーの競争地位4類型だ。著者は、17年の総合広告代理店勤務時代、幸運なことにリーダーブランドを担当することが多かったが、それは大きな市場においてではなく、カテゴリー市場におけるリーダーであったとつくづく思う。えてして、そういったカテゴリーリーダーはロングセラーブランドになっていた。すべのフォロワーはニッチャーを目指すべき。これが著者の考え方だ。そして、数十人もの極めて優秀な広告主マーケターと仕事を共にしてきたが、持続的な成長を実現できたブランド担当のマーケターの方々は理論を知ってか知らずかは別として結果的にポイントを押さえていたと感じている。本稿ではこの点について説明していく。


目次:広告視点での「フォロワーではなくニッチャーを目指すべき理由」


競争地位における「すべきこと」は整理されている

市場におけるランク、そしてそのシェアによって、基本的なマーケティング戦略は決まっている。そして、シェアによってプロモーション戦略も本来は決まっているのだ。余談ではあるが、つくづくこの点を理解していない広告代理店担当者は多かったと思う。「広告に活かせるマーケティング理論「クープマンの目標値」」にあるようなシェアを意識せず、何かにつけて、「ブランドのポジションを獲る」やら「~に自由を」のような「聞こえの良い」キャッチコピーで広告を提案し、その耳障りの良さに広告主はその代理店提案を採用し、展開した結果失敗に終わり、すぐに撤退をしてしまうことが多かった。傍目で見ていた著者にとっては、この点は残念で仕方なかった。さて、本題に戻ろう。市場1位のリーダーの役割は、シェアがたとえば40%以上であれば市場自体の拡大がミッションであり、40%未満であれば市場内のシェアを高める、つまりは下位ブランド叩きを行う。市場2位のチャレンジャーは、シェアを上げてリーダーを倒すことだけを意識する。ただし、間違ってはならないのが、必ず下位ブランドをたたいてシェアを上げ、リーダーと戦える状態でリーダーブランドを迎撃すべきである。次に、フォロワーは、えてしてリーダーと同じスペックの商品を作って低価格で提供したり、販路を限定するなどしてリーダーやチャレンジャーからシェアを奪うことがミッションであった。ニッチャーは独自性の高いポジショニングを獲るという戦略である。


フォロワー戦略の限界

フォロワーの戦略について、販路の限定はまだしも、低価格戦略はリーダーと比べて体力がないことを考えると、体力的に持続していかないことが増えている。つまり、フォロワーの戦略が成立しづらくなってきているのだ。永遠の3位以下に成り下がり、市場の衰退とともに、最も過酷な戦いを挑まなければならなくなっている。ニッチャーと比べたら売上は高いかもしれないが、利益で考えたらニッチャーの方が高利益率。低価格競争が一巡した日本において、さらなる低価格競争に挑むのは得策ではない。フォロワーとなっている商品やサービスブランドはどういう戦い方を選ぶべきかのか。


ニッチャーという選択肢

フォロワー戦略の限界は上記のとおりである。かといってチャレンジャーにはなれない。そこでニッチャーへと舵を切るべきだである。ニッチャーの戦略は、特定市場に独自性をもって進出することであるが、市場という概念が不明瞭であるため悩むこともあるだろう。著者がおススメするニッチ市場への進出は、販路である。今は販路が最強であると「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明した。販路が力を持つのであれば、どこかの販路に選択し、その販路に資源を集中すべきだと考えている。たとえば、自社ECを持ち、D2C型市場を狙うとか、自社ECを持たずにAmazon内市場を狙うなどがその戦略の具体である。その他、デモグラ、つまりは「ターゲットの性年代」を変えることでニッチ市場へ進出することもできる。シニア向け市場であるとか、キッズ向け市場などがその典型である。価格帯を狙うとなると、今まで低価格帯だけだった市場に、高価格帯市場を成立させるやり方もある。いずれにせよ、いかに選択と集中を行うかがカギである。


ニッチャーのメリット

フォロワーからニッチャーに転じるとどうなるか、それは、NO.1、つまりはそのニッチ市場におけるリーダーポジションを形成できることにある。しかも、NO.1になりさえすれば、その市場自体を拡大することも可能だ。たとえば、ファスナーのYKKは、ファスナーに特化することで国内市場シェア80%となり、今では海外市場においてもリーダーポジションとなっている。ファスナーに限定したことで、国内で圧倒的なシェアを確保し、海外に販路を見出した時も「日本市場NO.1」という代名詞を持ちながら戦場に赴くことができているのである。つまり、ニッチャーになるということは特定市場のリーダーになるということなのである。



ニッチャー、カテゴリー市場NO.1がすべきこと

リーダーになったとあれば、やることは1つである。「市場自体の拡大」、その一点だ。市場には必ず上位市場があり、隣接市場がある。この上位市場におけるシェアを上げ、隣接市場におけるシェアを上げるのである。フォロワーの時は、多角的に展開していた場合、自社も同じ商品やサービスを展開してしまっているがゆえに、自己矛盾となってしまい否定しづらかった他市場や他企業も、選択と集中をしてカテゴリー市場でのニッチャーとなってしまえば、自己矛盾を起こさないために、他社を否定できる。他社と比べて、価格面以外での優位性を説くことができるのだ。商品やサービスも、そしてプロモーション施策も、訴求がシャープに特徴的になっていく。


ニッチャーのリスクと回避方法

特徴的な商品やサービス、つまりニッチャーだらけの日本になると思いきや、そうもいかないことが待ち受けている。大きな市場でのリーダーや他市場において経営資源が豊富な企業が参入してくるからである。その市場が大きくなればなるほど、それが儲かれば儲かるほど、必ず大企業、資源が豊富な企業が参入してくることになる。それを見越していなければならない。たとえ、一時的にリーダーであったとしてもそのニッチ市場が成長してくる時までNO.1の座を維持できるか、が問題である。これを避けるには、たった2つしか方法がない。それは「儲け過ぎないこと」か、「複数のニッチ市場を併せ持つこと」である。前者は、従業員を相当に少なくすることで、NO.1の座を堅持しつつ、市場の急拡大を狙わなければ問題ない。企業規模を大きくしたいと考える方はこの選択肢をとらないだろう。もう一つの「複数のニッチ市場を併せ持つこと」については、企業としてのビジョンやミッションやバリューが、何も一つのプロダクトによってのみ実現できるわけではないはずなので、フラットな視点をもって、ビジョンやミッションやバリューを提供できる、他のニッチ市場向けプロダクトを開発し続ければ良いのである。この複数ニッチ市場を持つための、根底にあるビジョンやミッションやバリュー開発の必要性と、フラットかつスピーディーに、新たな市場に参入できる組織を作ることが重要だと考えている。


世の中がニッチプロダクトだけで埋め尽くされる日は近いと著者は考えている。その際の生き残り策の主流は、複数ニッチ市場参入企業であろう。「広告トータルプランニング会社」である当社では必ず、市場ランクに即したプロモーションの基礎があることを説いている。成長を実現するプロモーション戦略の方程式が一般化されていけば、この流れは更に速度を上げていくのではないだろうか。

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