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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「プロモーション」と「広告」の違い

更新日:2023年10月24日

様々な言語が飛び交うビジネスであるが、「プロモーション」と「広告」の違いが明確に説明されている記事などが存在しないように思う。双方が、混ざり合う部分もあるが、それは、「立場」によって起こることであって、その立場の違いさえ理解すれば、大きな誤解は生じない。著者も17年間総合広告代理店に勤務していたが、広告主の使う「プロモーション」と広告代理店社内で使う「プロモーション」との違いを明確に分けた会話を聞くことは少なかったように思う。「複雑化するプロモーション」でも説明したように、それぞれの言語をきちんと解釈しないと正しいプロモーション戦略は立案できない。本稿では「プロモーション」と「広告」の違いについて、主に立場に立脚して説明していく。


目次:「プロモーション」と「広告」の違い


広告主から見た「プロモーション」と「広告」とは

まず、広告主の立場から見た「プロモーション」と「広告」の違いについて説明する。マーケティングを行う上で「マーケティングミックス」と呼ばれる4P整理は必須のことである。4Pとは、Product、Place、Price、Promotionの頭文字をとった言葉であるが、この中の「Promotion」を「プロモーション」と呼ぶことが多い。つまり、広告主が用いるプロモーションは極めて包括的な言語であり、販促、広告、PR、オウンドメディアのすべてを含めることである。つまり、広告主の立場から見た「プロモーション」と「広告」の違いとは、「プロモーション」は認知から購買までの全体戦略のことであり、「広告」はその一部の戦術を表すということなのである。



広告代理店から見た「プロモーション」と「広告」とは

次に、広告代理店の立場から見た「プロモーション」と「広告」の違いについて説明する。兼ねてより、「広告」と「販促」は分けて考えられていた。「広告」は他社媒体を活用して認知を獲得することを指し、「販促」は販売促進につながる、主に購入接点に近い部分での貢献施策であった。この「販促」は英語だと「Sales Promotion」となるため、広告代理店社内では「販促」のことを「プロモーション」と呼ぶことが一般化してくる。プロモーションプランナーとは、イベントやサンプリングや販促ツールなどを用い、「広告」という手法を使わずに、商品を売っていく戦略を練るスタッフであった。言い換えると、「プロモーション」は非広告活動という位置づけであったのである。つまり、広告代理店の立場から見た「プロモーション」と「広告」はメディアを使わないか使うかで、異なるものであった。


「プロモーション」の解釈違いから、意識がずれる

上記のように、立場の違いによって言葉の解釈が変わってしまうため、「プロモーション提案をしてくれ」と広告主に言われた広告代理店は、アクティベーション、つまりは非広告媒体活用戦略の提案をしてしまうことがある。当然、広告も含めての「プロモーション」と広告主は意図していたのだが、広告代理店社内での「プロモーション」が非広告活動と定義されがちなので、そのズレが生じてしまう。こうして、ちぐはぐになったボタンをかけなおすところから、プロモーション提案がスタートすることはよくあった。


「プロモ―ションとは包括的な言語」と理解すること

双方の立場による「プロモーション」という言葉の持つ意味が違うことも、単純に広告代理店側が「包括的なものである」と認識しさえすれば、ズレは生じない。ネット系代理店などは店頭ツールなどのオフラインSPは範囲外であるため、LINEなどを活用したサンプリングが主たるSP領域となる。よってネット系代理店は、「プロモーション」を「販促」と誤解することは少ない。トラディショナルなオフラインのSPも含め、実績や経験が豊富な総合広告代理店の方が、誤解が生じやすいだろう。総合広告代理店の特にシニアクラスは、「プロモーション」を包括的な意味であると再認識しさえすれば問題は解消する。



曖昧な言葉であった「プロモーション」と「広告」。「誤解されつつある「ブランディング」~「イメージ戦略」との違い~」でも説明しているようにただでさえ様々なプレイヤーが広告市場へ参入していきてる昨今、言語のズレがプロモーション領域における大きなズレを生んでしまうと著者は考えている。「広告トータルプランニング会社」である当社では、プロモーションの一部に広告があることを前提にご相談を受け付けているが、包括的な意味を持つ「プロモーション」よりも、マーケティングの一部であると常に意識することが求められる「マーケティングコミュニケーション」の方が、著者としてはしっくりくる。今後、どのような言葉が主流となっていくのだろうか。

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