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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「企画書市場」で広告代理店営業はどう戦うのか

更新日:2023年10月24日

ビジネスでパワーポイントを使うことは、今や当たり前になっています。そして、広告代理店の提案も必ずと言っていいほど、パワーポイント(PPT)を用います。CHAT GPTがいかに企画書を自動化するサポートをしようが、ネット上にある文章・コンテンツ「しか」データとしてストックできない以上、そこに公開されている人の知見など限られているので、企画書提案を生業とするビジネスではCHAT GPTはそこまでその威力を発揮できないと著者は考えています。


そして、いかに優れた企画も、企画書になっていなければ提案すらできないことを考えれば、企画よりも企画書の方が大事なのではないかと著者は考えています。特に総合広告代理店においては、PPTでの提案は必須ですが、その総合広告代理店社内で、いや、世の中の企画書商売から、総合広告代理店の営業だけが「書けない」存在として取り残されつつあります。著者は総合広告代理店で17年勤め、社内の誰よりも企画書を書いてきた自信がありますが、その著者の視点に立った時に、ガラパゴス化してしまった総合広告代理店の営業について、本稿でご説明していきます。


本稿は、このような方におススメ!


✔ なぜ広告代理店の提案書が遅いのか疑問に感じる広告主

✔ なぜ「スタッフ」という存在が企画を説明するのかに疑問を感じる広告主

✔ なぜ上司たちはPPTが使えないのかと疑問に感じる若手広告代理店勤務者

✔ なぜ簡単な資料もスタッフにPPTを作らせるのかに疑問を感じる若手広告代理店勤務者


目次:「企画書市場」で広告代理店営業はどう戦うのか


どの事業会社においても、PPTは当たり前のものに

社内上申資料、または社外への提案書などにおいて、PPT以外を使うことはほぼないのではないでしょうか?あらゆる企画書がPPTにて作られ、総合広告代理店においても、提案書はPPT必須です。今どき、ワードやエクセルだけで提案することはほとんどないのではないでしょうか。広告主もPPTで戦略や企画をまとめるスキルの高い方が多く、中には広告代理店の提案書よりも美しい社内上申資料もしばしば見受けられます。


【PPTは当たり前】

・広告主も常に資料化

・広告代理店営業だけがPPT化を生業としない


広告代理店の中で、企画書を書くのはスタッフがメイン

総合広告代理店は特に、営業ではなくスタッフが企画書を書くことが多いです。プランナーと言われる、メディアなのか戦略なのかPRなのかイベントなのかの職種の人間が、企画書を書きます。その種類は様々でフォーマット化されているものもあれば、オリジナルで都度考えるものもあります。総じて、戦略プランナーやイベントプランナーの企画書は美しいことが多いです。しかし、実はクリエイターは、大御所と呼ばれる人ほど、体裁にこだわりません。おそらく、「一言勝負」が美しいとされているためだと考えています。メディアはデータが多いため、都度作る性質のものではなく、フォーマットはある程度固定化されていて、広告対象物ごとに数字を入れ替える程度が多いことが実態です。


【広告代理店はスタッフが企画書を書く】

・キレイな資料:アクティベーションプランナー

・あまりキレイではない資料:大御所クリエイター

・フォーマット資料:メディアプランナー



営業が作るPPTは、「資料」のみ

スタッフがPPTを用いた企画書を作る中、総合広告代理店の営業は何を作るのでしょうか。答えは「資料のみ」です。広告主から求められるあらゆる資料や、社内スタッフに求められるあらゆる資料となります。たとえば、広告主からは、競合ブランドのSNS投稿状況や、タレントの認知率や好意度の資料、TVに対する競合の出稿状況をまとめてほしい、などの要求があります。社内スタッフからは、広告対象物の競合ブランドの広告活動状況、店頭での広告対象物の陳列状況などをまとめてほしいなどがあります。営業は、簡易的にデータを貼り付けたり、写真を貼り付けたりした「事実列挙型」のPPT資料を用意することは多いが、決して「ストーリーのある企画書」は作りません。


【広告代理店営業は資料のみ作る】

・広告主から求められたSNS投稿資料 等

・スタッフから求められた市場概況資料 等


企画書で大事なのは「ストーリー」と「見せ方」

上述のように総合広告代理店の営業も、PPTで資料を作ることはあるとは思います。しかしながら、企画書で大切な「ストーリー」や、「言葉」×「写真」×「数字」×「図解」という「見せ方」については研鑽を重ねないことになります。「資料」であれば、上記は不要であり、美しくあることも求められます。それがために、どんどん営業が企画書を書けないようになっていきます。企画書をいかに多く書くかによって、質もスピードも上がりますが、社内外への接待やゴルフで忙しく、その時間を重視してこなかったことも、営業に企画書スキルを付けさせなかった要因だと考えています。


【広告代理店営業が企画書を書けない理由】

・接待

・ゴルフ

・お茶


シニアクラスになるほど、PPTをほとんど書けない存在に

営業のマネージメントはとにかく企画書が書けません。担当者から上がってくる資料を切り貼りして、「資料らしきもの」は作ろうとするのですが、資料自体も作りなれていないシニアクラスが多く、「よくこれでスタッフにああだこうだ言えるな」と感じる若手たちが多かったと聞いています。それと同時に、将来自分はこうなってしまうのか、という不安を与えることにもつながっていたらしいです。確かに、それも頷けます。資料しか、いやシニアクラスは資料すら作ってきていないのだから、企画書が書けないのはある種「当たり前」だと著者は感じていました。PCではなく、2020年にもなって、A4サイズの大学ノートに必死にボールペンでメモを取るシニアが多かったのを、鮮明に覚えています。


【シニアクラスが企画書を書けないことで起こるリスク】

・若手クラスは将来に対する不安を感じる

・シニアクラスが時代から取り残されてしまい時代錯誤に陥る


PPT企画書作成市場に取り残される広告代理店営業

広告主も当たり前のようにストーリーのある企画書を書けるようになった時代に、広告代理店の営業だけが、資料しか作れなくなっています。ある程度ストーリーがあって、見た目が美しい企画書を期待されるにも関わらず、ストーリーがあって見た目が美しい企画書はスタッフしか書けないがために、時間がかかってしまい、広告主の状況も変わってしまいます。必死でスタッフを動かそうにも、今は36協定があり、なかなか下働きを受けてくれない。しかし、営業自らでは「資料」しか作れない。こうして、負のスパイラルに陥ってしまうのです。「企画書商売の中心にいるはずの広告代理店の営業が、最も企画書を書けない」という不思議なガラパゴスの完成である。


【企画書ガラパゴスの完成】

・遅くて状況が変わってしまう

・スタッフを動かそうにも動かせない

・結局資料しか作れない




広告代理店営業は、この特殊なガラパゴスから抜け出すには、広告代理店営業自らが企画書を書き続けるほかないと著者は考えています。後にも先にも、それ以外に、今のB2Bである広告代理店ビジネスに釣り合うスキルを身に付ける方法はありません。それが実現されることで、スピーディーに広告対象物の課題を払拭できる広告施策の実施に至ることが可能になります。このあたりは「広告代理店の商品は企画ではなく、企画書である」や「「提案が遅い」と言われてしまう広告代理店の「裏事情」」でも説明しています。広告代理店営業が自ら企画書を書くことが一般化することが、世の中から広告に悩む時間が減る、一つの答えだと考えています。「広告トータルプランニング会社」である当社が「課題への即時回答」を提供しているのは、こういった問題意識から生まれたものです。



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