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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告業務で再び注目される「ワークショップ」の効果

更新日:2023年3月29日

かつては、コンサルティングファームの専売品のような印象があったワークショップ。今ではあらゆる企業でワークショップが行われている。決してトップダウンではなく従業員も含めてアイデアを出し合い、情報を整理して進むべき方向性を明確にするプロセスであるが、明確に足し算から引き算へのプロセスを踏み、その後もビジネスがきちんと進むまで足し算をしてはならない性質がある。著者は広告代理店としては珍しく、17年の総合広告代理店勤務時代に、毎年のようにワークショップを行っていた。そして、それだけが理由ではないかもしれないが、こうしたワークショップを開いていたブランドほど、持続的な成長を実現できていた。本稿では、そのワークショップがなぜ重要性を増しているのかと、適正なプロセスについて説明していく。


目次:広告業務で再び注目される「ワークショップ」の効果


ワークショップとは

基本的には、テーマに沿ってステークホルダーが集まって、決めたい事項について協議し、一日または複数回にわたってセッションするプロセスを言う。ブレストとの違いは、ワークショップの中にブレインストーミングの時間が包含されていると著者は定義している。ワークショップは明確かつ具体的な目的に従って、事前に与えられた課題に対して、個人ワークを行ったうえで、当日はきちんと時間で管理されたスケジュールに則って、グループワークを行い、最終的に合意形成がなされたうえで、今後全員が同じ方向に進むものである。このグループワークの部分にブレストが含有される。



なぜ今、ワークショップが重要なのか

ビジネスのスピードは速くなる一方である。そんな中、事業というものは一つの会社の中での専門家、または社外の専門家たちがそれぞれの分野での個々での見解を持ちながらも、同じゴールに向かって、いかに速く突き進むかの勝負となっている。毎回毎回合議で意思決定をしていては、スピードが遅すぎる。逆に、曖昧かつ人によっては納得していない目標設定のまま、各人がそれぞれの専門分野で業務を進めるとバラバラの事業となってしまう。スピードが今ほど速くない時代であれば、毎回合議で良かったかもしれないし、バラバラに進んでももう一度やり直し時間があった。しかし、今は一度進み始めると途中で方向展開もしづらい。こういったときにワークショップを行った事業なのか否かによってそのビジネスの成否が分かれるようになってきているのである。



ワークショップの方法

ワークショップは、目的の設定をいかに具体的に行うかでほぼ成否が決まると言っても過言ではない。「今後どうしていくか」といった曖昧な目的では空中分解してしまう。「今の売上を、新商品を出さずに、利益率を変えずに1年後に110%の売上とするにはどうすべきか」程度の具体性は最低限必要である。参加人数は5名~15名程度までがベストであろう。参加者は、可能な限り同じ職種、または社内のみで固めることなく、ステークホルダーがバランスよく関与できるようにする。事前に個人ワークがあり、当日を迎え、グループワークを行うことになるが、分単位でスケジュールが策定されているため、当日はあっという間に時間が過ぎることとなる。ここで、必要になるのは、アイデアを膨らませるための「材料」である。著者はこの「材料」を極めて重視しているが、世の中のワークショップでこの点が声高に叫ばれない理由が不思議で仕方ない。特に新事業や新サービス開発、プロモーションにおいても、いかに「先行事例を真似るか」「目標となる企業を定めるか」「その際の情緒的な価値はなにか」が大事になるのだが、この領域の事前準備は個々人では差が出てしまうため、強制的にアイデアを出させる「材料」が必要だと考えている。この点は「広告アイデア出しのための「ブレスト」にもっとも必要なこと」でも説明しているので、こちらをご覧いただきたい。


戦略レイヤーでは欠かせないワークショップ

市場縮小時代の日本において、新たな事業を開発していくことはこれまで以上に必要になる。その際に、新規事業アイデア、新サービス開発アイデアなどはワークショップの貢献が非常に大きいと考えている。まだ日本では頻繁にワークショップを行う文化が形成されているわけではないが、いずれ、ワークショップが頻繁に行われ、その他の業務は徹底的に効率化がなされる時代が来ると著者は考えている。


戦略設計は緻密さと共に、意志の強さとステークホルダーの一丸となった推進が必須である。今後、より「業務」が効率化なされれば、新事業や新サービス開発へと時間を割くようになると思われるが、その際にワークショップが活躍することだろう。「広告トータルプランニング会社」である当社では「BRAND PALETTE」としてワークショップのサービスも提供してるが、正しいワークショップが溢れる時代が来るのを、著者は楽しみにしている。

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