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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

二分する広告代理店タイプ「スポット型」「パートナー型」

更新日:2023年3月23日

総合広告代理店かネット系代理店かを問わず、広告代理店には大きく2つのタイプがある。「スポット型」と「パートナー型」である。かつて、広告代理店市場がこれほど低迷していなかった時代は、「スポット型」よりも「パートナー型」の方が多かった。しかしながら、市場が低迷している現在の広告代理店市場においては、「スポット型」が増えつつある。17年総合広告代理店に勤めた著者が、双方のメリットデメリットについて説明していく。


目次:二分する広告代理店タイプ「スポット型」「パートナー型」



かつては「パートナー型」が主流だった

官公庁などの公的団体や、今は営利企業とはなっている元国営企業などは、外部企業への委託または発注の正当性を公的に説く必要があるために、都度コンペを開くことが多かった。広告代理店を集め、競合コンペを開催するのである。しかしながら、都度コンペを開かなければならないことよって、逆に中長期的なパートナーを選定することが難しいため、自社の事業や商品、サービスといった各ブランドにおける広告戦略および戦術すべてを一括して広告代理店に担当させる、いわゆる「ブランドAE制」が浸透することはなかった。しかしながら、それでは事業や商品やサービスの持続的な成長が期待できないことに悩むことになる。こうして、長期にわたってともに考えてくれる外部パートナーの存在が必要となっていった。結果的に、一般企業だけではなく、元国営企業群も、「随意契約」を多用し始めるようになり、「ブランドAE的」な広告代理店の付き合いが増えていく。都度、コンペを開くのは、官公庁などの「コンペ必須企業」だけになっていき、複数年にわたって特定の広告代理店に広告業務全般を委託する、つまりは「AE」代理店を決めるための、ブランドAEコンペが数年に一度行われることが主流となっていった。こうして、「パートナー型」広告代理店が主流の業界慣習が成立していく。


「スポット型」広告代理店を増やす4つの要因

18年勤めた総合広告代理店の晩年において、一時は減りかけた「スポット型」が最近は急増しているように感じていた。1つ目の理由は、とにかくビジネスのスピードが上がったことであろう。これまでのやり方ではビジネスがうまくいかなくなった広告主が、その状況にあわせて、都度広告代理店にベストエフォートを求めて競合コンペを行うことになったのだ。さらに2つ目の理由として、「長引く不況」も「スポット型」広告代理店を増やす要因だと著者は考えている。「できるだけ安く広告施策を実施したい」、その一点だけでコンペを行い、広告代理店側にコストを下げさせる。こうして、広告代理店側もジリ貧になっていくのだが、コストリダクション目的のコンペ多発も、「スポット型」広告代理店を増やしている要因であろう。3つ目の要因として、初めて広告を実施する企業が増えていることにあるのではないかと著者は考えている。創業してデジタル広告を行わない企業はほとんどないだろう。そういったときに、ネット系代理店を紹介してもらう、または探すとともに、複数の広告代理店に参加を依頼して、競合コンペを開くこともある。4つ目に、デジタル広告だけでは成長を見込めなくなった広告主が、マス広告を初めて行うに際して、総合広告代理店に参加を依頼して競合コンペを行うのである。こうして、今は「スポット型」広告代理店が増えていると著者は感じている。


「スポット型」広告代理店のメリット

「スポット型」広告代理店は、多くの競合コンペをこなしている。すなわち、「競合コンペで映える提案の仕方」を知っているのである。しかし、「パートナー型」広告代理店は、たとえ競合コンペでその提案が採用されたとしても、実際には実現が難しい内容の提案は行わない。つまり、「パートナー型」広告代理店は、リスクヘッジ視点が強く、実現不可能なことを提案して採用された後、広告主と良好な関係を築けなくなる可能性を踏まえ、あまり非現実的な提案はしない。対して、「スポット型」広告代理店は、そもそも広告主との付き合いを短期的であり、「スポット対応」だと考えているために、広告主との中長期的な関係性を重視せず、「映える提案」を行うのである。当然、競合コンペの際には「スポット型」広告代理店提案の方が魅力的に見え、広告主は「スポット型」広告代理店の提案を採用してしまう。「こんなことできるの?」「これが実現出来たらすごい!」と思ってしまいそうな提案は、「スポット型」広告代理店から出ることの方が多いのである。



「パートナー型」広告代理店のメリット

「パートナー型」広告代理店はというと、中長期的に広告主が成長するよう、パートナーとしてプロモーション領域のサポートをすることが本分だと考えている。そのため、「確実性は低いがレバレッジの高さ」よりも、「成長の確実性」を提案する際には最も重視する。よって、広告主からするとどうしても「想定内」となってしまうことが多い。想定できないようなリスクの高い提案ができないためである。メリットは、「失敗の可能性が低い」ことと、結果的に「パートナー型」の方が広告対象物への理解度を高める努力を惜しまないため、広告主としては手離れが良くなる。いちいち、自社や広告対象物について説明している時間が無くなることが、広告主にとっての最大のメリットである。




「パートナー型マインドで勉強を怠らない」タイプ

「スポット型」と「パートナー型」のメリットは上述した。たとえ昨今では「スポット型」広告代理店が増えていたとしても、総じて、本来的には、広告主は「パートナー型」を求めると想像に難くないはずである。しかし、広告主のことを知り尽くしているだけでは当然足らず、特にデジタルなどについて最新の知見を日々勉強してもらう必要がある。今では、GoogleやAmazonなどのプラットフォーマーたちは、直接広告主と契約を結び、新しい広告手法やケーススタディーについて広告主を教育している。つまり、自助努力しなければ、広告代理店の方がデジタル広告に対する知見のアップデートが遅くなってしまうのだ。こうしたことを防ぐためにも、変化の速いデジタル広告は、自ら情報取得を行い、試してみなければならないのである。特に「パートナー型」広告代理店においては、必須の勉強なのである。なお、パートナーとして広告代理店を選ぶ際は「18年間広告代理店にいたからわかる広告代理店の失敗しない選び方」をご覧いただきたい。


「スポット型」が増える中で、需要の高まる「パートナー型」広告代理店の存在。会社や部署によっても事情は異なるため、一概には言いづらいが、広告主の持続的な成長を目的にした場合は「パートナー型」広告代理店に軍勢が上がると考えて間違いない。担当する広告代理店が「パートナー型」のマインドを持ち、「今こそ、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を」でも説明したように、広告対象物のプロダクトやブランドのライフサイクルを把握し、広告主よりも先回りして、プロとして提案を行うことが必要なのである。当社でも「PLC MIX」や「BLC」でこうしたフレームワークは用意している。「広告トータルプランニング会社」である当社は「パートナー型」でしか成立しえないのだが、広告代理店の自助努力によって、広告主と広告代理店との良好なパートナーシップが一般化することを著者は期待している。



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