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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

ロゴ開発で忘れがちな「市場」の視点

更新日:2023年3月23日

総合広告代理店において、ロゴ開発の業務も多かったように思う。某最大手通信キャリア企業担当の際は、法人向けソリューションロゴ開発が多く、某コンタクトレンズ企業でもロゴ開発に携わることがあり、某食品メーカーにおいてもサブブランドロゴ開発を担当した。ビジネスにおいてロゴがどれほど売上に貢献しているのかは数値化しづらいが、ある程度の数をこなすと「本当に大事なこと」も見えてくる。成長する商品やサービスのロゴには「市場」の視点があった。しかしながら、一般的なロゴ開発に関しては、デザイナーの仕事と誤解され、フリーランスネットワークを活用して安価にロゴ開発をしてしまう「極めてもったいない上にリスキー」なケースも多くみられると感じる。本稿ではそうなってしまっている原因や、誤解も含めて説明していく。


目次:ロゴ開発で忘れがちな「市場の視点」


結論から言うと、ロゴ開発は極めてロジカルな作業

ロゴ開発、CIも含めてとなるが、こうありたい、という企業や事業や商品の意思を具体化し、言語化したうえでデザイン開発を行うケースがほとんどである。この点については、全く異論がない。デザイナーが「ロゴ開発が得意です」と話すことは多いが、実際は、上記の言語化プロセスを経ずに対応していることが多かったように思える。「ブランドデザイナー」といった職種も聞いたことがあるが、基本的にはデザイナーであって、マーケティングや「ブランド戦略」を経験してきた人間はいないだろう。しかしながら、大手総合広告代理店やブランドコンサルティングファームともなると、さすがに言語化プロセスを経ないロゴ開発は少なかった。




ロゴ開発に必要なものは、「狙う市場」という視点

言語化プロセスは、緻密に緻密に言語化しなければ、目的は達成できない。ターゲットは誰か、どういう意識の、どういうデモグラの人たちで、企業または商品やサービスが提供する情緒価値と機能価値は何で、ビジョンは何で、ミッションは何で、バリューは何で、をすべて言語化する。そのうえで、他社事例や先行事例を見ながら、ロゴ開発を行っていく。しかし、著者からすると、大きな視点が一つ抜けていると感じていた。それは「市場」についての視点である。市場の視点だと、現在の市場、そして将来の市場の2つの視点が必要である。どちらの市場視点を強く持つべきかは、現在のカテゴリー市場におけるシェアやそのカテゴリー市場が成長しているか否かによって、現状の市場意識を高めるべきか、将来の市場意識を高めるべきかを決めることになる。この市場視点を不要と考えている誤解を解くべきだと著者は考えている。


どういう状況だと将来の市場を優先すべきなのか

例えば、今はデジタルの制作会社であって、カテゴリー市場は「デジタル制作市場」であったとした場合、少しクリエイティブなロゴにしたくなるが、市場でのリーダーで、40%以上あれば、さらに成長している、例えばSaaS市場を狙うべく、将来の「デジタル制作SaaS市場」と定義する。将来の「デジタル制作Saas市場」において機能するロゴとなれば、各種プラットフォーマーやSaaS市場のリーダーブランドを意識し、プレーンでシンプル、つまりは将来市場における誤解のないロゴが必要となってくるのだ。



クリエイターが作るものという誤解

上記のように、市場戦略、これを本来はマーケティングと呼ぶが、マーケティング視点を持つことが極めて重要なロゴ開発にも関わらず、決してマーケターの領域とは認識されていなかった。やはり最終の仕上げを行うことから、クリエイターの領域と認識されているのが一般的であろう。この市場視点がない中で「ブランディング」を謳い、ロゴ開発をビジネスにしているクリエイターも中にはいるのである。極めて左脳的な作業であり、論理的であるということを抜きにして、本来的なロゴ開発にはなりえないと著者は考えている。


ブランディングとは」や「誤解されつつある「ブランディング」~「イメージ戦略」との違い~」でも説明しているとおり、そもそもブランディングは極めて左脳的な作業である。中でも、ロゴ開発は、極めて左脳的なロジカルなプロセスを経る。それは言語化だけではなく、市場に対する視点を持つということなのである。ロゴ開発を行う際は、まずは左脳的な作業であることを認識し、それをきちんと理解できる会社またはクリエイターに依頼すべきであろう。「広告トータルプランニング会社」である当社でロゴ開発のご相談をお受けする場合は、この視点を最も重視したカウンセリングとなるのはこういった理由からである。


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