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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

【代理店とPR会社の違い】最大の違いは「効果の確率」

更新日:2023年3月29日

広告代理店、特に総合広告代理店は、PRの業務も請け負うことがあるが、あくまで主体は「広告」である。対して、PR会社も「広告代理店」と自ら名乗ることもあり、マス広告も総合広告代理店を通じて出稿すること自体は可能で、両者の領域が曖昧になっている。17年総合広告代理店に勤めた著者も、「戦略PR」が流通し始めたころから、約10年以上も年間にわたりPR業務を行ってきた。曖昧になりがちな「広告代理店」と「PR会社」の違いを、「効果の確率」にフォーカスしながら、両社の違いを説明していく。


目次:【代理店とPR会社の違い】最大の違いは「効果の確率」


広告代理店はその名の通り「広告」を扱う代理店

複雑化するプロモーション」でも説明したように、プロモーションが複雑化した昨今において、SPやOWNEDと共に「広告」と「PR」も企業や商品ブランド、サービスブランド成長のためには、単体でプロモーションの設計図が完成することはありえないと断言できる。しかしながら、複雑化してしまったことによって、それぞれの領域が曖昧になっていることもまた事実である。総合広告代理店においてはそのすべてを扱うことも多く、著者も全領域についてプロモーション戦略を構築してきた。しかしながら、総合広告代理店はやはり「広告」に軸足を置いた存在であり、プロモーション領域を全方位でカバーできる可能性を孕んだ存在ではあるが、「広告」とは切っても切り離せないのである。


PR会社が「広告代理店」と名乗るようになった理由

PR会社はあくまで「PR」に軸足を置いた業態である。直接クライアントと契約を結び、PR活動を引き受けることもあるが、社会の要請に従って、「広告」領域についてもその触手を伸ばすようになってきている。そのきっかけは「ステマ」、つまりは「ステルスマーケティング」の一般化である。広告とPRの境界線が曖昧になったことで、消費者が「ステマ過敏」になってきた。そうなることでメディアはこれまで暗黙知で行ってきたPR会社との付き合いの襟を正さなくてはならなくなった。一時の利益が一生のリスクになりかねない「炎上」が多発するようになったためだ。こうして、清く正しいPR活動しかできなくなり、PR会社は「企画」領域に進出するようになるのである。


アイデアと言う意味では代理店もPR会社も大差ない
アイデアと言う意味では代理店もPR会社も大差ない

マス媒体は「広告」と「PR」とが明確にわかる

PR活動とは非常にファジーというべきか、グレーというべきかのビジネスであった。広告ではなくPRとして、つまりは金銭の授受なくメディアや影響力のある人物に商品を取り上げてもらうことを主目的にPR会社は存在した。TVなどのマス媒体は、各種規制の中で「明確に広告とわかるようにすること」が義務付けられている。まるで記事のような体裁である場合にも、「パブリシティ」「PR」表記を行って商品紹介を行わなくてはならなかった。


SNSの隆盛によって不明瞭になった「広告」と「PR」

広告と分からない形で有名人に自社商品やサービスの投稿を上げさせるなどして、炎上する「ステマ疑惑」ケースが増えている。そこで、有名人側もタレント事務所も、「#PR」を追加したうえでSNS等へ投稿することが必須となった。このことが、マス媒体にも大きな影響を与えている。番組内で過剰に1社の商品やサービスを紹介することで、ネットを中心に「ステマでは?」とつぶやかれるようになってしまったのだ。本当は、全く金銭の授受がない商品やサービスであったとしても、炎上のボヤのようなものは毎日のようにどこかで発生している。そのために、TV局などのマス媒体も、PR活動に対して、自主規制を強くしくようになってしまったのである。


広告もPRも成長のためのピースである
広告もPRも成長のためのピースである

PRへの警戒心が高まり、PR会社お断りとなる番組も

もともと、PR会社にはTV局などに出入りして商品やサービスの情報を提供する、TV局担当が存在した。しかしながら、PR会社出入り禁止の番組が増え、TV局は入館証の発行すらしてくれなくなったことで、PR会社は岐路に立たされる。TV番組にはリサーチャーという人物がいて、あらゆる動向をSNS中心にチェックしている。上項でも述べているように、その人物に対して直接的にアプローチができないために、SNSを中心に「ワードの流行」を生み出そうと、PR会社は広告代理店的ビジネスに参入してくることになるのだ。


広告代理店化するPR会社にはできないこと

広告代理店化しはじめるPR会社は、企画書ではそれらしいことを記載できるが、広告取引の実態を把握していないがために、メディアプランやメディア取引で障害になること、そしてリスクに対して無知であることが多い。確かに、広告主ですら直接発注することができるWeb媒体は、PR会社でも担当者を付けられさえすれば、勉強することはできる。しかしながら、旧来のマス媒体については、口座を媒体社と開設できないが故に、実態を把握することはできないのである。そもそも、PR会社と広告代理店とでは成り立ちが全く異なるのだ。


確実性が高い広告と、レバレッジが効くPR

著者も、PRで話題となった時、特に影響力有るTV番組に取り上げられた時の商品への売上貢献のもの凄さは何度も目の当たりにしてきた。確かに、広告よりも売上に対する貢献度は高い。しかしながら、先にあったように、ステマ的取引が禁じられた今、PRに軸足を置きながらも広告に参入しているPR会社が多い。大手PR会社はどこも同じようなスタンスとなっているように感じる。それは、PRは当たるかどうかわからず、費用対効果に対してコミットしづらいという性質があるため、確実に露出が図れる広告に軸足を置こうとしているためである。


広告代理店とPR会社、消費者にとっては違いがよくわからないことは確かであろう。主語が企業や商品やサービスであり、露出の確実性が担保できる代わりに大きなレバレッジが期待できない広告と、主語が社会や生活者であり、露出の確実性が担保できない代わりに大きなレバレッジを期待できるPRとで、うまく使い分けることで、広告代理店とPR会社のどちらに依頼すべきかがお分かりになられると思う。つまり「効果の確率性」で両社の差をとらえるのだ。「広告トータルプランニング会社」である当社ではクライアントのコンディションに応じて最適なプロモーションのご案内をしているが、「プロモーションの最適化」が一般的になる世の中になることを著者は切に望んでいる。


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