top of page
  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

SEOやリスティングが苦手な広告代理店

更新日:2023年3月23日

総合というからには、すべての広告活動への造詣が深いと誤解されてしまう総合広告代理店。総合広告代理店に17年勤めた著者からすると、スタートアップ企業は当然のこと、大企業ですら難なく行っているSEOやリスティングを、逆に得意とする広告代理店営業やスタッフは本当に少なかった。または、「得意」と豪語しながらも、基本的には外部協力会社への委託によってサマリーを共有してもらっているのみで、実際の運用経験が乏しく、本当のウラ話は知らない人間も多いであろう。この広告主の「当たり前」になったSEOやリスティングが、なぜ総合広告代理店にはその知見やスキルがないのか、そしてそれらがないことによる広告代理店側のリスクは何なのかについて、本稿では説明していく。


目次:SEOやリスティングが苦手な広告代理店


なぜ総合広告代理店はSEOやリスティング知見がないのか

SEOやリスティングが重要なことは、さすがの総合広告代理店も理解している。ではなぜ、社内でスキルがある人材がいないのか。答えは簡単である。「儲からないから」である。ブランドAE業務などで、やむなくSEOやリスティングを請け負うことはあっても、その費用対効果は極めて低いため、どうしても出稿を前提としたマス広告の提案やネット広告の提案を行ってしまう。営利企業としては当たり前だ。実態は、協力会社を下に付ける形でSEOやリスティングを運用しており、いわゆる「法則」だけは知っていても、どのように管理画面を見て運用を行い、方針策定していくかについて、理解して実行できる人がいないのは、この広告代理店における費用対効果の低さが最も大きな要因である。


SEOコンサルやリスティング専門のネット系代理店の存在

費用対効果の側面が最も重要ではあるものの、SEOやリスティングにおける独自性を持ちづらいという点も、スキルを内包させない総合広告代理店の大きな原因である。SEOコンサルやリスティング専門のネット系代理店が多くの案件を回していく中で見出した法則を、総合広告代理店は持ち合わせていない。案件数が少ないがために、彼らと伍して戦えるほどの法則の発見には至らないのである。このことから、スキルを内包させるのではなく、下に外部協力会社としてSEOコンサルやリスティング専門のネット系代理店を付け、彼らの知見を吸い上げようという結果になるのである。


SEOコンサルやネット系広告代理店も知見の流出はしない

しかしながら、SEOコンサルやリスティング専門のネット系代理店もバカではない。当然、重要なポイントなどは、上につく総合広告代理店には共有しないようにする。知見の流出こそ、最も避けなければならないことだからである。よって、総合広告代理店はたまに漏れ聞こえるSEOやリスティングの知見を妄信し、SEOコンサルやリスティング専門のネット系代理店との知見の差は開く一方となるのである。



SEOやリスティング無知によって瓦解する「プロらしさ」

総合広告代理店がSEO知見やリスティング知見を有しないことのリスクとは何か。それは、広告主から「プロモーション戦略全体」を請け負えると期待されているにも関わらず、広告主の方が「たとえ一部であったとしても」詳しい分野が生じてしまう点にある。すると、「TVCMメディアプランニングの専門家」「TVCM制作の専門家」としかみなされず、いわゆる「プロモーション・パートナー」とは見られなくなるのである。このリスクは相当に大きい。結局、分業制の、一部の協力会社に成り下がることで、コストリダクションの対象となりやすく、利益が先細ってしまうからである。全分野における「プロモーションのプロ」として君臨し続けるためには、広告主が当たり前に行っているSEOやリスティング知見が、たとえその部分においては非効率だとしても、全体を見れば効率的となるのである。


「NOW MARKETING」の代表格であるSEOとリスティング

昨今、「NOW MARKETING」が重要と叫ばれている。情報量が爆発的に増え、消費者は「今の興味」で検索行動を行う。以前はすべてがGoogleであったが、今ではInstagramなどのSNSでもすぐに検索をしてしまうのだ。マスマーケティングの時代が終焉を迎えつつある中で、Webマーケティングが主流となったが、その際もメインは「過去の興味」=「過去の検索行動」に準拠することが多かった。アフィニティなどでセグメントを具体的に行いながらターゲットに広告を届けていたが、現在は「今の興味=検索行動」にどれだけ寄り添うかが事業成長のカギとなっている。その中で「NOW MARKETING」の代表たるSEOコンサルやリスティングに対して知見を有していないのは、「時代の先取り」どころか「時代遅れの代表」にもなりかねないリスクの塊なのだ。


SEOやリスティングはすぐに体得できる

総合広告代理店は儲からないかもしれないが、「プロ瓦解リスク」がある時点で対策を講じるべきであろう。SEOやリスティングは広告主がインハウスで運用しているように、Googleのツールを活用すれば、たとえ素人であっても数か月で「セミプロ」までは進めると著者は考えている。著者も「自らが」「本格的に」SEOを始めたのは当社を創業してからであり、テクニカルな部分ではまだまだ「素人」と自認している。しかしながら、SEOコンテンツに関しては「素人でも始められる!SEOコンテンツのポイントは「論文的SEO」」や「SEOを「LPを量産すること」と捉えることで生まれる新たな戦略」、そして、「マーケティング視点から見たSEO攻略」といった視点を手に入れることができている。ここで、「誰がSEOやリスティングを勉強するのか」という視点に立つと、著者はシニアクラスが適していると考えている。「広告代理店シニアクラスへのエール」でも説明しているように、「プロモーション戦略全体」を請け負う際に重要な「今の基礎的なプロモーション」を理解していなければ、広告主と会話にならないことが多い。せっかくマーケティングの基礎的な知識やTVCMの作り方を知っていても、「プロ」として認められないとどうしてもその他の領域に話が及ばない。SEOやリスティングは総合広告代理店は自ら取り組むべきであり、特にシニアクラスの方がそのメリットが大きいと著者は考えている。



総合広告代理店が軽視しがちなSEOやリスティングは、「パートナー」の地位を維持するには欠かせない領域だと著者は考えている。なぜなら、広告主の方が詳しくなりつつあるからである。「オウンドメディア中心のプロモーションに総合広告代理店はどう向き合うか」も同じことではあるが、広告主の方が詳しくなれば、すべての領域において「作業」のみ請け負うこととなり、「遅い」「ミスがあった」「他社の方が安い」とされ、結果的にコスト削減要請にあう。「広告トータルプランニング会社」である当社では、TVCMからSEOまでの知見をストックしているが、SEOとリスティングの、こういった側面での重要性を、総合広告代理店はどう捉えるのだろうか。

bottom of page