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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「広告戦略」で停滞する売上を打破するためのポイントとは?

更新日:2023年3月23日

広告代理店が、ロングセラーまたは数年前にピークを迎えた商品ブランド、サービスブランドが、売上の停滞に悩み、広告主から相談を受けるケースは多いと思う。著者も17年勤めた総合広告代理店時代に、ダウントレンドの商品ブランドを、なんとか広告戦略によってV字回復をさせるよう、広告主からオーダーを受けることも多かった。幸いなことにV字回復につながる、または停滞売上を再び成長曲線に戻すことにつながるケースが多かったのも事実である。「広告の効果が出ない」という、より総体的な課題については「「広告が効かない!?」と感じたときに立ち返るべき8つの視点」をご覧いただくとして、本稿では「停滞」にフォーカスを充て、「売上停滞を打開する広告戦略の方程式」について説明していく。


目次:「広告戦略」で停滞する売上を打破するためのポイントとは?


プロモーションの貢献領域

商品ブランドまたはサービスブランドの売上を回復または成長曲線に戻すためには、商品戦略や販路戦略、価格戦略による貢献が大きいと著者も考えている。その中で、顧客との接点となるプロモーション領域についてV字回復または成長曲線復帰する場合、広告制作物に加え、チャネル設計が重要となるが、広告代理店が陥りやすい、広告対象物の目標達成がなされない提案パターンがいくつも存在する。


V字回復も、成長もしない提案①タレント変更

不思議で仕方ないのだが、なぜか広告代理店はV字回復または成長曲線復帰の場合のプロモーションにおける表現物の中で「タレント変更」を選んでしまう。タレント変更のメリットはあるが、停滞期に奏功するものではない。確かに、「ぱっと見」はわかりやすいかもしれない。しかしながら、それは「広告物」「販促物」のイメージ変更に寄与するのみで、何ら商品ブランドやサービスブランドの変更点と関係なく、そもそも変更点を伝えたところでV字回復や成長曲線復帰するケースは極めて稀である。昭和の時代にはタレント変更こそが主流であったのかもしれないが、令和のこの時代にその提案は、違和感しか覚えなかった。おそらく「タレントによるイメージ変更」の影響が大きいと考えていたのかもしれないが、本来的には「リブランディング」の作業があってこそできることであり、「リブランディング」とは「提供価値を変えること」「ターゲットを変えること」であるため、それらに付随してのイメージ変更でなければならず、「イメージ変更だけが単独で成立しない」ことを理解しなければならないのである。このあたりは「誤解されつつある「ブランディング」~「イメージ戦略」「ブランド戦略」との違い~」でも説明している。


V字回復も、成長もしない提案②メディアプラン変更

メディアプランを変えることでV字回復や成長曲線復帰がなされると考える広告代理店担当者は多く存在する。TVCMなどのマスマーケティングから単にデジタルシフトしたり、逆にデジタル中心であったプロモーションからマス広告への出稿へと変更したりする。これは何もマーケティング目線ではなく、「今はデジタルだ」とか「今までやってこなかったTVCMにトライすべき」といった理由がほとんどであり、求めていたような結果にはならないのである。メディアよりも前に「販路変更検討」をすることが重要なのである。販路の重要性は「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明している。


成長への特効薬は「市場定義変更」と「支援販路変更」

著者が総合広告代理店に勤務していた18年の間に担当したブランドで、全く商品も販路も変えずに、同じ商品及び同じ販路でV字回復または成長曲線復帰を果たせたのは、たった2つの手法であった。それは、「市場定義変更」と「支援販路変更」である。前者の「市場定義変更」は今の市場をさらに細分化してカテゴリー市場化することから始まる。今の市場だとフォロワーかもしれないが、細分化されたカテゴリー市場においてはリーダーとなるため、カテゴリー市場自体の拡大を狙う戦略に転換することで、プロモーションのあり方もがらりと変わるパターンだ。成長市場の中で自社だけがダウントレンドの場合などは、この市場定義変更がワークした。つまりは、「ニッチ戦略」であり、集中戦略とも呼べる。カテゴリー市場まで細分化していくことで、ベンチマークする競合ブランドも減り、訴求も施策もシャープになっていく。また、商品ごとの「プロダクトベース」の方が市場の規定を行いやすいことは事実であるが、商品カテゴリーを飛び越える「目的ベース」の市場設定に定義変更することも多かった。これは、たとえば「フィットネスジム」に存在する自社を「痩せたいという目的をかなえる市場」に身を置くことでどうなるかを把握するという事である。その際は、「やせ薬」「サウナ」など多くのプロダクトが入り乱れることになるが、自社が存在するプロダクト市場が停滞するときも、または成長するときも、次の戦略を策定しやすくなる視点の注入である。「フィットネスジム」の提供価値を「やせること」に置き、他の目的ベース市場における競合優位性を説くと、「リスクなしの痩せ体験(やせ薬を競合として意識・リスクのなさを優位性に)」「動かして汗をかくことこそ持続痩せ体形に(サウナを競合として意識・持続性を優位性に)」が訴求方向性となる。ちなみに、この例示は薬機法を全く考慮していないのであくまでイメージとしてとらえて頂きたい。次に、「支援販路変更」について説明する。今は、販路が徐々にECへと推移しつつあるが、当然のことECに近い販路に広告施策及び予算を投下すべきだという考えである。重要なことはインターネット広告が主流になるからといって、コンビニやスーパーのようなリアルチャネルを主販路におくブランドは何もデジタル広告投資にスイッチする必要はないと強く認識することである。この2つの「市場定義変更」「支援販路変更」によって全く出で立ちを変えるプロモーションこそが、V字回復または成長曲線復帰を実現するものだと著者は考えている。成長期に達したら「成長期に行う「正しい広告施策」5つの基本的なポイント」を実行するのみである。



タレント変更や単なるデジタルシフトでは広告が「変わった感」でしかなく、ブランドの売上がV字回復したり、成長曲線に復帰することはない。「今こそ、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を」でも説明しているように、商品の既存市場には必ず栄枯盛衰がある。もしブランドの売り上げが停滞しているのであれば、まずは「市場定義変更」はできないのか、あるいは「支援販路変更」できないのかを考えることをお勧めする。この「市場定義変更」はすなわち、今までにない商品を「同じブランド傘下」で提供する方が、より市場を席捲しやすいことは想像に難くないはずだ。「広告トータルプランニング会社」である当社ではその流れを「BLC」という形でフレームワーク化しているので、ご参考いただきたい。ちなみに、販促施策としては衰退期のブランドを短期的にV字回復または成長曲線復帰を実現するやり方はあるのだが、それは別稿に預けることとする。


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