top of page
  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

データドリブンの今こそ、フレームワークによって視点を定める

更新日:2023年3月23日

IoTも一般化し、購買データも簡易に取得できるようになったことで、あらゆる部分でデータが取得できるようになり、広告戦略立案においてもデータの裏付けがないと成立しなくなっている今の日本のビジネス。世界共通言語である「数字」のチカラは絶大で、理解の速度を速めることへの貢献に全く異論はない。しかしながら、多くのデータが取得でき、数字に囲まれることになった今、逆に「どの数字を見るべきか」が難しくなってしまった。2004年に総合広告代理店に入社した際、著者は某大手通信キャリアの担当となった。広告主には数千万ものデータがストックされ、広告代理店が提供する調査データのサンプル数の少なさから、「データによる説得力」を持ちえなかった。こうして、著者はデータよりもフレームワークを重視してプロモーション戦略を設計するようになっていく。総合広告代理店も、マーケターであっても、膨大なデータに溺れそうな今だからこそ、改めてフレームワークが必要だと著者は考えている。その点を本稿では説明していく。


目次:データドリブンの今こそ、フレームワークによって視点を定める


特権階級のものであった、市場調査

日本においては算数が義務教育の中心として置かれ、その点については著者も全く異論はない。そして、ビジネスにおいても、かつては大企業が調査会社に市場調査を発注して、街中でアンケート調査を行うなどして、何とか市場のデータや自社商品への認知度、理解度、購入意向度、はたまた競合商品に対するそれらなどを取得していた。つまり、データの取得自体が限られた企業しかなしえない特権であり、費用も高かった。市場調査に莫大な費用を払うことができ、分析を行うことができる企業のみが成長し、大きい企業ほどより成長する機会を得ていた。それが、大企業至上主義に至った理由だと、著者は考えている。


AI時代に突入し、データドリブンの世の中に

デジタルの発達によって、そしてネットの進歩によって、一部の限られた企業だけが持つ「データ」という特権が一気に一般化する。大企業でなくても、数多くのサンプル、つまりはアンケート対象者を保有するマクロミルや楽天リサーチなどの定量調査会社も増え始め、どんな企業でも簡単に調査結果を保有することができるようになった。ここまではまだ企業に限られた特権であったかもしれないが、SNSではフォロワー数や、ハッシュタグ検索数、再生回数などがすぐに誰でも把握できるようになり、数字による物事の把握はいとも簡単になり、その「データ」ということ自体に特別感がなくなってしまった。さらに、マーケティングの世界においても、データ取得が簡単になったがために、すべてのマーケティングをデータに準じて戦略策定すべきというデータドリブンマーケティングが主流になり始めている。



データと反比例的に失われたフレームワーク

戦後の大企業が最も保有していた情報は、社員を介して得られる「口頭」での情報であった。当時はそれを「情報」となど思ってもいなかったのだが、それがゆえに「戦略」を重視した。大企業はこぞって戦国時代の勉強をし、兵法を学んだ。マーケティング先進国のアメリカにおいても、このころからマーケティングのフレームワークなどが多く世に出されるようになる。しかし、データが重視され始めた2000年以降、反比例するようにフレームワークが軽視され始める。さらに、データドリブンマーケティングが主流になりつつある昨今では、フレームワークの「フ」の字も登場しない。著者はその点に異常なほどの違和感を覚えていた。


データが多いからこそ、視点が必要

どこを見渡してもデータがあふれる世の中になった今、「どのデータ」を見るべきかの視点が定まらなくなってしまった。多くデータは取得できるだが、どのデータを見つめるべきかの視点が定まらず、世にいう戦略プランナーや調査担当からの目うろこのファインディングスを見なくなってしまった。それは、フレームワークを知らないからであろうと、著者は考えている。データが多くなった今こそ、どのデータを見るべきかの視点は、フレームワークによってシャープになる。例えば、著者は「クープマンの目標値」を多用してきた。この理論値は長年使わているものの反証が出ておらず、著者も実業の中で「合っている」と思う事ばかりであった。今、シェアが何パーセントだから次の戦略はこれだ、とすぐわかる優れ板代物である。つまり、シェアを見れば、「どのデータを見るか」「データのどの部分に着目するか」がすぐにわかるはずなのである。このあたりは「広告に活かせるマーケティング理論「クープマンの目標値」」をご覧いただきたい。また、自社商品が成長しているのか、停滞しているのか、衰退しているのかについても、「プロダクト・ライフ・サイクル」を頭に入れておくと良いだろう。この点は「広告に、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を

」で説明している。著者はそれだけで4Pの視点や3Cの視点、そしてターゲットの視点を即座に把握することができないため、独自で「PLC MIX」というフレームワークを開発したが、「プロダクト・ライフ・サイクル」は極めて大事な視点である。しかしながら、昨今の戦略設計担当はこれらの基礎的なフレームワークを勉強していない方もいらっしゃるため、全データからの変数を探そうとしてしまう。たとえそこが本質課題でなかったとしても。




繰り返しになるが、著者は今こそフレームワークを勉強し、データのどの部分を見るかの視点を定着すべきだと考えている。視点さえ定まればデータの量や質に関わらず、必ず本質課題の発見がある。この点を無視してしまうと、戦術面での解決策ばかりとなってしまい、ビジネスは成長しない。その思いから「広告トータルプランニング会社」である当社では、12種の独自フレームワークを開発した。今後も、フレームワークの重要性を説き続けたいと、著者は強く考えている。

bottom of page