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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告代理店の商品は企画ではなく、企画書である

更新日:2023年3月23日

ペーパーレスが叫ばれだして久しい。確かに出力した企画書は今の時代に必要ではないであろう。コロナが加速させた在宅ワークの一般化によって、ペーパーレスは更に加速しているように感じる。しかしながら、逆に今の時代は、資料ありきになっている。以前は口頭で提案するような営業スタイルも存在したのかもしれないが、今では「簡単にでもペーパーにまとめてください」と必ず言われる。17年勤めた総合広告代理店時代、著者は毎日何かしらの企画書を広告主に提出していた。その著者が考える、広告代理店の「第一の商品である企画書」について説明していく。


目次:広告代理店の商品は企画ではなく、企画書である


口頭や電話一本で仕事ができていた時代もあった

接待営業、太鼓持ち営業、御用聞き営業などは、ここ最近では忌み嫌われる形で使われているが、かつては広告代理店営業の多くがそのジャンルに分類されていたと諸先輩方からよく聞いていた。接待によって仕事をとってくることを褒める風潮があったし、広告代理店には経費が潤沢にあった。会食中の口頭での説明や、ゴルフ中での口頭説明、そして、電話一本で仕事が成立していこともある。それが何もやましいことではなく、当たり前の時代だったのだろう。



高度経済成長期は過ぎ、データが前提となった現代

効率化が重視され、何においてもデータが重視されるようになった昨今、「目に見える形」でのサービス提供が、広告代理店で主流になっている。とかく、雰囲気やイメージといった言語化しづらい広告制作物を商品として扱う以上、いかに事前に広告主と認識の齟齬なく広告施策を実施するかが重要である。かつては企画力に定評のあった大御所たちは、ペーパーワークのスキルに乏しい方もおり、プレゼン前日にようやっとWORD一枚が届くようなこともあった。当然、広告施策実施前の詳細な情報共有は広告主とはなされず、広告主に不安と不満が募っていくのである。


誰でも構わないから、企画書を速くほしい広告主

資料アップが遅いスタッフは、その時点で広告主のスピード感についていけず、スタッフ変更を余儀なくされる。「「提案が遅い」と言われてしまう広告代理店の「裏事情」」でも説明しているように、これは多くの広告代理店営業が経験したことであろう。しかし、問題は、その企画書アップスキルがスタッフに求められているのではなく、営業自身に求められつつあるのである。理由は、広告主はとにかく速く資料が欲しいがために、それがスタッフだろうが営業だろうが構わなくなっているという点である。


調べればすぐに答えがわかる時代の、企画書の重要性

単なる情報はネットで調べればすぐに答えが出てくる。つまり、広告代理店側に広告主は「単なる情報」を求めていない。きちんと広告対象物の課題を解決する、「企画書」を求めていると著者は考えている。その企画書も、プロとしてあらゆる状況のあらゆる商材を担当してきたのであれば、即座に提出されるべきだと広告主は考えているだろう。しかしながら、まだ属人的なビジネスを展開し、一部のスタッフに企画書を依存する広告代理店営業は、その本質的なニーズを把握せず、ひたすらスタッフアサインを行い、スタッフに対してスピーディーな企画書アップを要請するのである。重ねるが、企画書アップは、もはやスタッフの仕事ではなく営業の仕事であると著者は考えている。別稿でも説明しているが、営業以外に、全体を網羅的に、実態をきちんと把握できる人間がいないためである。



企画書が大切であると認識し、営業自ら企画書を広告主に提案する風潮はすぐにでも訪れると著者は考え、「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した。それが時代に即した広告主と広告代理店との関係であるとも考えているが、広告代理店の提案は日増しに遅くなっているという状況ではある。いつか、即座に広告代理店営業から企画書が上がってくる時代が来ることを元広告代理店勤務書としては切に願っている。



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