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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「提案が遅い」と言われてしまう広告代理店の「裏事情」

更新日:2023年3月29日

ビジネスのスピードが日を追うごとに速くなっている。その中で、広告代理店の提案は日増しに遅くなっていると感じる広告主も多いだろう。著者が総合広告代理店に入社した2004年当時は、広告主から夕方にオリエンを受けて、翌日の午前中までに提案することなどもあった。とにかく提案までの時間設定が短かった。現在では1カ月ほどの時間的猶予を頂けることも増えてきたように感じる。なぜ、広告代理店の提案が遅くなってしまっているのかについて、本稿では説明していく。


目次:「提案が遅い」と言われてしまう広告代理店の「裏事情」


スピーディーな提案を常に求められる広告代理店

商品やサービスの移り変わり、つまりはビジネスのスピードが上がり続ける中で、広告代理店への提案も相当なスピードを求められている。しかしながら、広告代理店の提案は、著者の感じている部分だけなのかもしれないが、総じて遅くなっているように感じる。広告主はスピーディーな提案を求めているにも関わらず、逆行してしまっているのである。競合ブランドの動きに従って即座にプロモーションを行いたくても、提案が上がってこない。それが、広告主が日ごろ感じるストレスだと著者は感じている。


提案が遅くなる3つの大きな理由

なぜ、広告代理店の提案は遅くなっているのか。理由は大きく3つあると著者は考えている。担当できる人がいないという点と、36協定順守の高まりによって担当者決定はすべてマネジメントにゆだねられていると言う点と、個々人のスキルの低下である。それぞれが単独で成立するわけではなく、それぞれが相関しながら、「遅さ」を生み出している。おそらくは「データ主義」が4つ目の大きな問題点にはなるが、決してデータという論拠を求められていないにもかかわらず提案が遅くなっていることには上記3つの問題点の存在が大きいと著者は考えている。



担当できる人がいないという問題

コンパクトかつ効率的に企業運営するために、人的リストラも頻繁に行われるようになった広告代理店。スタッフ職の間接部門への異動なども相次ぎ、人的リストラで会社がスリムになったものの、残った人員もバックオフィスへと異動し、輪をかけるようにフロントに立ち案件に対応できる人員がいなくなっている。そのため、広告代理店の営業担当は、常に担当してくれるスタッフ探しを行うことになり、人気スタッフは別案件で確保されていたり、競合排除の観点も相まって、手が空いているスタッフを探し回ることになるのだ。


36協定順守が引き起こす実業への問題

一部のスタッフに業務が偏りすぎることで残業が恒常的になり、残業が増えることで36協定違反になる。このことを今の広告業界は最も避ける傾向にある。36協定違反は管理者責任になるため、人員のアサインも管理者、つまりはマネジメント一任となる。これは速く提案を行う以前の問題として、営業が望むような十分にスキルを持ち合わせたスタッフではなく、スキルに不安の残るスタッフをアサインすることにつながってしまう問題もはらんでいる。


個々人のスキル低下による提案アップ遅延という問題

SEOやリスティングが苦手な広告代理店」や「オウンドメディア中心のプロモーションに総合広告代理店はどう向き合うか」でも触れてきたが、デジタルの発展によってデジタル知識のないオールドスタイルなスタッフは、今のプロモーションのトレンドを把握していない。または、デジタルしか担当しておらず、きちんと工数管理をされていたようなデジタル領域の会社に勤めていた中途社員などは、広告代理店のスピードに付いて来りことができない。著者も、総合広告代理店時代は、スタッフからの企画書の上がりがプレゼン前日もしくは当日になることを経験していた。都度、どうなっているかと確認するのだが、一向にあがってこなかった。極めつけの事例は、報告書提出が3週間遅れてしまうこともあった。このあたりに、提案こそが職業命題である広告代理店の限界を感じたことは事実である。



大きな3つの原因がそれぞれ相関しあいながら、広告代理店の提案は遅くなっている。業界が衰退期に突入し、人員の入れ替わりが速く、36協定を順守しなければならないことは、個々人でどうにかできる問題ではない。されとて、個々人のスキル低下については、個々人の努力次第の側面も大きいが、その手法論が広告代理店社内で確立されていない。著者は「広告代理店の商品は企画ではなく、企画書である」や「広告主の最大の悩み~「担当営業を選べない」~」でも説明しているように、営業自らが戦略を描けるようにならなければ、この問題の解決には至らないと考えてはいるが、広告代理店の提案が遅くなっている理由に対して、広告主も理解を示していただきたい。それと同時に「提案の遅さ」を問題視したことこそ、著者が「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した理由の一つでもある。

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