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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「代理店は使えない?」広告代理店が業者化する理由と広告主のデメリット

更新日:2023年3月22日

著者が総合広告代理店に勤めた18年の間、自分で気づいていないだけかもしれないが、幸いなことに広告主から業者扱いをあまり受けてこなかった。下請けであることは間違いなく、当然本来は業者ではあるのだが、お叱りを頂いたことも極めて少なく、一度お仕事をすれば末永くご一緒させてもらえていた。しかしながら、周りでは業者扱いを受けている広告代理店担当者が多いように思う。下請けなんだからやれよ、といった論調で指示を受けているケースが散見できる。はっきり言って、これは広告主にとって損である。確かに「二分する広告代理店タイプ「スポット型」「パートナー型」」でも説明するように、「プロ」としての接することができる広告代理店は少ないのだが、なぜ損なのかについて、本稿では説明していく。


本稿はこのような方におススメです!

✔ 広告代理店を業者としか思っていない広告主

✔ 広告代理店が「言ったことすらできない」と感じている広告主

✔ 「こんなつもりで入社したのではない」と感じている広告代理店勤務者

✔ 業者ではなくパートナーとして扱って欲しい広告代理店勤務者


目次:広告代理店が「業者化」する理由と広告主のデメリット


広告代理店が業者に成り下がってしまう理由

18年勤めていたからこそよくわかる、広告代理店が業者に成り下がってしまう最も大きな理由は「広告代理店もサラリーマンである」ということである。自ら提案し、広告主のビジネスを成長させ、自らの知見を増やしたいというモチベーションの人間はほとんどいない。広告代理店に入ったからモテるだろうとか、面白い広告を作って世に名前を残そうだとかが大半である。そして、そんな野望も年をとるごとに薄れていってしまう。上司が、「そんな無茶ぶりばかりするクライアントには人を割かない」「効率的にまわせ」と常日頃言うのだから、サラリーマンである限りはそれに従ってしまう。広告主のビジネスを成長させる提案とは、その多くが広告代理店にとって非効率だったりするものである。そうなのであれば、社内で怒られながらも、提案することはなくなり、いずれ、広告主の指示を待ってから動くようになる。広告主からすれば、指示しないと何も動かず、動きも遅く、ストレスが溜まる。結果的に業者に成り下がってしまうのである。



広告主が広告代理店を業者と決めつけている

稀に、自主的に広告主の成長を期して提案を行うものもいる。しかしながら、逆に広告主側が過去の経験上、広告代理店を業者としか見ていない場合もある。著者もかつては「業者指定コンペ」と題されたコンペに呼ばれたものだ。その時はさして気にしていなかったが、広告主側に根強く「広告代理店=業者」という伝統が残っているのだと思う。双方の理由が重なって、広告代理店は業者に成り下がってしまうのだ。


広告代理店が業者からパートナーになるには

広告主からの業者目線があったとしても、常にプロモーション領域におけるプロとして接し、自らが儲かるかどうかは別にして、広告主のビジネス成長を確実にする提案をしなくてはならない。これには、やはり経験が必要になる。その経験とは、多くのCMを手掛けた経験でも、多くのメディアを手がけた経験でもない。成長につながったプロモーション全体の設計および実行によって実際に広告主が成長したというという経験値である。これらを、たとえ定性的であったとしても方程式にしておくことで、いかなる業種/業態の、いかなる市場環境においても、現在広告主が置かれている状況に応じて適切な提案が可能になる。成長の方程式を手に入れ、プロとしてプロモーション領域の提案を、日夜行うことで、広告主からはパートナーとして認められることになる。



広告代理店を業者扱いする事での広告主側のデメリット

上記のように、広告代理店がプロして成長につながる提案を行うことの難しさはある。しかしながら、プロとして広告主に認められれば、広告主も業者としてではなく、パートナーとして広告代理店と接することは可能になる。ただし、常に業者として広告代理店を扱ってしまう広告主もいる。一言でいうと、これは損をすることになる。しかも、2つの視点で損をすることになるのだ。


広告代理店の担当者が疲弊し、すぐに担当者変更に

業者であると認識すると、広告代理店側は指示されたことだけを行うことになり、遅い、クオリティが低いなどの理由で広告主から責められるようになる。広告主側としては当たり前なのだが、常に監視下に置かれ、ネガティブチェックをされ続けると、広告代理店の担当者が疲弊し、退社や異動希望を出すようになる。かつては、転職することが稀であったが、退社意向が芽生えた広告代理店担当者は同業界または異業種への転職も簡単にできるようになってしまっている。また、働き方の見直しにより、異動希望も可能な限り叶えようとする企業内人事政策もあり、いとも簡単に部署異動できてしまう。これらによって、せっかく自社のことを教えた広告代理店担当者が頻繁に変更することとなり、広告主は自社のことを一から教える稼働を割くことになる。この点も「広告主の最大の悩み~「担当営業を選べない」~」という問題につながっていく。


短期的な付き合いになると考えられ、割高に

パートナーとして持ちつ持たれつ、末永くお付き合いをしようと広告代理店側が考えれば、どこかで割安であっても回収見込みが立つため、一度の費用は割安になる傾向がある。しかし、業者扱いをされ、長期的なお付き合いが難しそうだと判断すれば、取りっぱぐれを防ぐために、一度の業務案件が広告主にとって割高になってしまう。広告代理店側から案件辞退を申し込まれ、新たな広告代理店を探して業務が始まったとしても、またしても業者扱いしてしまうことで、結果的に次の広告代理店からも割高な金額提示がなされてしまう。結果的に、広告代理店を探し続け、常に割高な金額提示がなされ続けることになるのである。特に「広告代理店の高額なフィーに悩む広告主」でも説明しているように、フィーでの請求が高額になりがちだ。


業者に成り下がってしまうプロ意識の低い広告代理店側と、業者扱いしてしまう広告主側双方に課題はありながらも、もし双方の意識改善と広告代理店側のスキルが高まれば、パートナーとして商品やサービスのプロモーションは格段にレベルが上がり、必ずその広告対象物は成長する。こうした考えを伝搬したいという思いから、著者は「広告トータルプランニング会社」である当社を設立したのだが、日本が再び輝きを取り戻すため、正しい広告活動が主流となることを切に願っている。

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