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執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

「効率論偏重」で停滞期を迎えるデジタルのみの広告戦略

更新日:2023年3月23日

データによって飛躍的に効率的になったプロモーション。SNSやYOUTUBEなどの予約型デジタル広告やリスティングをはじめとした運用型デジタル広告においても、常に「効率」が重視されている。確かに「効率」は絶対に忘れてはならない視点だ。この点については全く異論がない。しかしながら、市場のトレンドやシェアによって次の戦略を立案し、各種戦術を立案、実行する際に、デジタル広告から取得できる示唆は少ないと著者は考えている。「新しい広告メニューを実施しよう」は次期戦略でもなんでもない。17年の総合広告代理店時代、効率論を中心としたデジタル広告のみの実施でビジネスが頭打ちになり、広告主から相談されることも多かった。より総体的な「広告の効果が出ない」場合については、「広告が効かない!?」と感じたときに確認すべき8つのポイント」をご覧いただくとして、デジタル専業広告代理店、いわゆるネット系代理店の「持続的成長」提案の難しさについて、本稿では説明していく。


目次:「効率論偏重」で停滞期を迎えるデジタルだけの広告戦略


デジタル広告の真骨頂、効率論ベース提案

数字以外には発言権を持たない、デジタル広告。そのデジタル広告を専門に扱うデジタル専業広告代理店、いわゆるネット系代理店も、すべての提案が「効率」に則って行われていると言っても過言ではない。広告の無駄打ちがあってはならないため、効率が重視されることは今のプロモーションでは必須事項である。しかしながら、企業の持続的な成長は、効率論だけではなく、いかに成長戦略を描き続けるかにかかっている。成長戦略について、外部機関である広告代理店が提案するべきなのかという議論もあるのだろうが、効率を説いている以上、マーケティング予算再構築、いわゆるリーマーケティングを行って成長分野への投資をしなくてはならない。ネット系代理店の「成長市場への投資」は、常に「今まで実施していない広告メニューの実施」となっており、それは決して成長戦略ではないのである。


総合広告代理店も効率運用の提案がメインに

無駄打ちとなりかねないマス広告を主として取り扱ってきた総合広告代理店も、デジタル広告の「効率論」の余波によって、効率提案が主となりつつある。自己否定をするかのように、これまでのTVCMの在り方に異を唱え、「運用型」などを提唱し、効率化の提案を行っている。こちらについても、プロモーション活動活動が効率的であることは推奨すべきであると著者も考えている。問題であるのは、効率論の提案ばかりがなされ、成長戦略の提案がなされることが少なくなっている点である。


成長戦略を提案できない大きな理由

「認知こそが企業成長のカギである」と説き続け、マスマーケティングを行ってきた総合広告代理店ではあるが、今は販路が増えたことによって認知が成長のキードライバーではなくなってしまった。この点は「広告における認知神話の崩壊~販路至上主義へ~」でも説明しているが、高度経済成長期であれば、認知さえすれば限られた販路で人々は購入したことも多かった。しかし、今は購入場所が多く存在し、認知よりも販路への投資がかさむようになっているのだ。そのような状況で、認知に「依存しない」形での成長戦略を総合広告代理店は持ち合わせていない。かえって、データドリブンマーケティングのように、データを見ることに注力しており、成長戦略からは遠のいてしまっている。「データドリブンの今こそ、フレームワークによって視点を定める」でも説明したように、フレームワークが軽視されていることも大きく影響していると著者は考えている。



広告代理店の理想的な提案は、「効率的」に「成長」

効率化の提案はどの広告代理店も可能となってきた。しかし、成長戦略を提案する広告代理店は減っているし、そもそもケイパビリティがなくなってきている。そのような状況下において、広告主は何を期待するのか。それは、効率論だけではない、地に足の着いた、持続的な成長戦略である。そのためには今一度、どういうプロモーション施策が持続的な成長を実現するかの「方程式づくり」が必須なのである。停滞期を乗り越えV字回復すれば成長期に戻ることができる。成長期に至った場合は「成長期に行う「正しい広告施策」5つの基本的なポイント」をご覧いただきたい。



効率的かつ持続的な成長を可能にするプロモーション戦略が提案できるのか。広告代理店に課せられたミッションは難題なのかもしれない。しかしながら、持続的な成長を視野に入れると、その提供価値は避けては通れない。ヒントは、プロダクトのライフサイクルをどう見るのかと、ブランドのライフサイクルをどう見るのかの2点にあると著者は考えている。「広告トータルプランニング会社」である当社ではそれらを「PLC MIX」「BLC」としてフレームワーク化しているが、今後どのようにして広告代理店が両輪の提案を可能にしていくのか、注視してきたい。

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