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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

広告代理店シニアクラスへのエール

更新日:2023年3月23日

人材の流動性が高まる日本において、20代30代の転職は当たり前のものになった。総合広告代理店においても、人材の流動性は高まっている。17年、総合広告代理店に勤務したが、晩年の数年間はこの人材流動性がもたらすいくつもの問題に直面した。自身もそうであったが、特に総合広告代理店では、シニアクラス、つまりはマネージメントが若手の部下不足に悩むことが多い。40代以上のシニアクラスでも転職も可能ではあるが、簡単に転職先が見つかる状況ではなく、逆に若手社員はすぐに転職先を見つけ、転職していってしまう。こういったビジネス環境において、総合広告代理店の実態がどうなっているか、本稿では説明していく。


目次:シニア層比率が上がり続ける広告代理店の内実


日本の人口構成通りの企業、総合広告代理店

少子高齢化が進む日本において、当然のごとく若手社員よりもミドルクラス、シニアクラスの社員比率が高まり続けている。まさに日本の人口構成通りとなっており、どの企業も同じだとは思うが若手社員の確保に苦しんでいる。業界最大手の電通も二期連続営業赤字に転落するなど、業界の衰退は進んでいるが、その中での若手不足、そして若手流出は、未だ労働集約的業務内容が多く残る広告代理店においては深刻な問題である。このあたりは「広告代理店を取り巻く厳しい環境~人材・働き方篇~」で説明している通りである。



中途採用市場の活性化がもたらす3つのこと

転職が当たり前のものとなり、人材の流動性が高まることがもたらす広告代理店の問題は大きく3つあると著者は考えている。1つ目に、若手の流出である。せっかく育てた若手社員がようやく独り立ちを迎えるころ、異業種などに転職してしまうことが多い。業務をある程度任せていたマネジメント層は、代替人員確保などで東奔西走することとなる。問題の2つ目に、未経験中途入社人員が増えることである。「広告代理店を取り巻く厳しい環境~人材・働き方篇~」でも説明したことであるが、業務のいろはから教える必要がある。そして最後にして最大の問題が、ミドルクラスやシニアクラスはなかなか転職できない上に、入れ替わりが激しい若手社員の対応に追われることにある。しかも、デジタルを中心とした激しい変化によって、かつてのマスマーケティング知見を活かすことも難しくなり、勤勉な一部の人間は勉強するものの、それ以外のミドルクラス、シニアクラスは、若手に知識をつけてもらって運用してもらうことを期待している。その中での若手人員の不安定さがあるのだ。



シニアクラスができる2つのこと

人材の流動性については一人の努力で止めることはできない。そして、若手の職業選択の自由を阻むことも、違憲行為に当たるので、難しい。シニアクラスにできることはたった2つしかない。1つ目は、自らが今のプロモーションで必要なスキルを体得することである。しかも、セミナーや座学ではなく、自らリスティング運用をしてみたり、SEOの記事を広告主から代行して仕上げてみるなど、実践をしなければならない。この点は「SEOやリスティングが苦手な広告代理店」で説明している。2つ目に、すぐに誰でも即戦力化できる教育スキルを付けることである。ミクロな視点に立つと、現場が抱えている本質的な課題は、「知らない」「わからない」ことにある。知識はネット検索で得ることはできるが「ウラ話」がわからないのである。その「ウラ話」を中心に、ネットには載っていない実務的なノウハウをいかに若手社員に教育し、瞬く間に自走できるように仕上げていくかが重要なのである。


若手人員に悩むシニアクラスの嘆きをよく耳にする。著者も総合広告代理店勤務時代は頭を抱え続けたものであった。人材の流出は誰もが止めようがない。著者は目まぐるしく状況が変化する広告において、いつまでも「その道のプロ」でありたいと思い、安定した総合広告代理店を辞め、「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した。どのような自助努力が、今の総合広告代理店のシニアクラスに求められているのであろうか。

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