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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

【決定版】広告代理店が悩まないオリエンシート7つのポイント

更新日:2023年12月13日


17年の総合広告代理店勤務時代に、広告主から数多くのオリエンシートを受け取ってきました。得たいビジネスの成果に結びつくには広告主と広告代理店が、それぞれの軸足は違えど、一つのチームとして同じ目的をもって、プロモーション戦略の設計、具体戦術化、遅滞なき進行を行って初めて成立します。


会社によって、そして担当者によって異なるオリエンシートの構成をしていましたが、結果的にビジネスの成果を得るオリエンシートには、抑えられている構成要素があありました。


本稿では、指定作業か競合コンペに関わらず、数百のオリエンシートを見てきた著者が、結果的にビジネスの成果を得ることになったオリエンシート7つのポイントについて説明していきます。

※なお、競合コンペであればより詳細の情報提供が必要となるため「広告施策コンペを開く時に大切な6つのオリエンポイント」をご覧下さい。


 

本稿はこのような方におススメ!


✔ 宣伝担当に移動してきたばかりでオリエンシートの骨子がわからない

✔ これまで多くオリエンしてきたがフォーマットが定着していない

✔ 部下にオリエンシートの基本骨子を説明したいが言語化できていない

✔ オリエンの良し悪しで成果がわかれるのではという仮説をお持ちの広告主


目次:広告代理店が悩まないオリエンシート7つの構成要素


 

▽記事を読む時間が無い方向け▽


 

ポイント①MISSION・VISION・VALUEが記載されている


クリエイティブの誤解~クリエイティブは左脳作業~」でも説明していますが、今やクリエイティブ領域も含めて、プロモーションは極めて左脳的な作業となっています。


企業、サービス、商品が最も大切とする「ブランドのルール」に従い、そのルールに逸脱することなく、顧客接点でプロモーションを展開します。


その場合、広告対象となる「企業」「サービス」「商品」が何を目指し、何を世の中に提供したいのかを、まずは把握しなければなりません。広告は、表現やメディアプランといった戦術領域を問わず、その広告対象物の成果を目的としたソリューションであるため、この部分は必須となります。


MISSION/VISION/VALUEというコトバを用いずとも、同義のコトバで定義しているものであればそれで十分です。いわゆる「想い」「情熱」をきちんと共有することから全てが始まります。


もしこういったブランドの基本ルールが制定されていない場合はコンパクト型ブランドワークショップサービス「BRAND PALETTE」または当社記事「【完全版】ブランディング戦略とは?」をご覧ください。



 

ポイント②市場規模とトレンド、広告対象物シェアとトレンド


次に必要なものは、どういった市場にその広告対象物は存在していて、その市場自体のトレンドがどうなっているかの情報となります。市場自体は伸びているのか、停滞しているのか、衰退しているのかによって、新規顧客を獲得すべきなのか既存顧客に多く購入または利用してもらうものなのかが、この時点で決まるためです。


さらに、自社がその市場においてどういった立ち位置なのか、たとえばリーダーなのかチャレンジャーなのかフォロワーなのかによって、キーメッセージの方向性も確定します。余談ではありますが、日本のプロモーションにおいては、このシェアを無視したキーメッセージが横行しているように思えて仕方ありません。


「ぐっとくる良い言葉」は、えてして漠然と「大きいワード」となりがちですが、そのキーメッセージを使えるのは、リーダーのみで、さらにシェアが40%以上もあるようなものに限られます。例えばシャンプーのブランドだとして、1%もシェアが無い場合に、「もっとシャンプーをしよう!」といった市場拡大メッセージに大切な広告費を使ったとしても、新規でシャンプーを始めた人の1%しか自分たちのユーザーにならないことになります。


つまりは、99%の競合に送客してしまったということになるわけです。そのあたりがキーメッセージの方向性として、日本の総合広告代理店やクリエイティブブティックでは整理されていないように思えます。

*シェアによる戦略の差は「広告に活かせるマーケティング理論「クープマンの目標値」」をご覧ください。


次に、自社が伸びているのか、停滞(成熟)しているのか、衰退しているのかによって、どういった接点に投資をするべきかのアロケーションも決まってきます。伸びていれば、新規顧客獲得が重要であるため購買接点よりも「外側」で「呼び込み」をしなければなりません。


つまり店頭や自社ECなどの購買接点よりも、外側のマス広告やYOUTUBE広告、SNS広告などの認知施策に予算を割くべきとなります。逆に、衰退していれば、既存顧客に「多く・長く」買ってもらわなければなりません。つまり購入接点に非常に近い場所で「複数個・継続的に」買ってもらうための施策を実施しなければならないとなります。こうして、ようやく市場や広告対象物の状況を把握できます。


オリエンシート7つのポイント
オリエンシートもポイントをおさえる


 

ポイント③ターゲットが「意識」によって定められている


まず、コミュニケーションターゲットとマーケティングターゲットについて整理できればと思います。この部分も混在して考えられていることが多いためです。コミュニケーションターゲットは、広告等のマーケティング・コミュニケーション施策によって購入または利用に促したいターゲットであり、決して最終購買者全体のことではありません。


マーケティングターゲットを広くコミュニケーションターゲットに設定してしまうと、当然のことながら、誰でも当てはまりそうでいて、実際は誰も動かせない広告が出来上がってしまいます。この現象は、大手企業であるほどよく起こります。市場ポテンシャルを測る際には、マーケティングターゲットのボリューム予測で問題ないのですが、その中で「コミュニケーションで態度・行動変容を促すべき生活者」を絞り切っていないことが多いのです。よって、必ずコミュニケーションターゲットが誰なのかを明確に記載する、という意識を持って頂ければと思います。


次に、そのコミュニケーションターゲットについて、性年代といったデモグラフィック情報しか記載されていないオリエン資料も多くありました。今は、性年代よりも「意向」「意識」の方が大切であることは言うまでもないかと思います。若々しい気持ちを持つ50代男性もいれば、活力に欠ける20代もいます。そのため、どういう意向や意識を持つ方をターゲットにするかが極めて大事となります。この「意向」「意識」をサイコグラフィックと呼びますが、現代は、例えば学割商材であれば学生限定、50代以上が加入可能な保険であれば50代以上ではあるが、それ以外は意向や意識であるサイコグラフィックで消費する時代となっています。



 

ポイント④ターゲットは認知者未購入か非認知者か


特にマス広告などは間口拡大、つまりは新規顧客獲得に貢献するメディアです。その場合、「非認知者」をターゲットにするのか、「認知非購入者」をターゲットにするのかでも大きく方向性が変わります。


特に後者は、購入障壁を「下げる」、または「なくす」ための広告となるため、注意が必要です。「非認知者」「認知日購入者」のどちらをターゲットにするのかは、当該時点認知率がまず重要になります。その次に、ライフサイクルによって変わるため、ご注意ください。

*ライフサイクルについては「広告に、プロダクト・ライフ・サイクルの視点を」をご覧ください。



 

ポイント⑤売上達成目標、広告予算、展開時期、使用想定メディア


これまでの市場設定、ターゲット設定の次に、広告対象物によって得たい売上目標と広告予算を記載します。業種業態によって売上高広告宣伝費率はある程度決まっているため、この時点で広告費が適正なのか過大なのか過少なのかがわかります。


広告代理店にとっては広告予算が多ければ多いほどうれしいことに間違いありませんが、この売上達成目標と広告予算との乖離について、すぐに気づけるような広告代理店担当者に巡り合えた広告主はとても幸せだと思います。


また、使用想定メディアについて、本来採用すべき購買行動モデルではないモデルを採用してしまう場合もあるため、適さない購買行動モデルに則った使用想定メディアであった場合は、広告代理店担当者は広告主に対して疑義を投げかけなければならないと思います。



 

ポイント⑥認知率目標は、「あれば入れておく」程度


認知率の目標値があれば入れておく方が良いかもしれませんが、広告対象物の売上とは無関係に「単純に広告認知を高める」「単純に商品認知を高める」ことを目標にしてしまう広告代理店が多いため、注意が必要です。


現代ほど広告投資対効果が「見える化」されていなかった時代は、定期的に市場調査をて「商品認知率」「広告認知率」「広告好意度」を割り出し、それらをKPIに設定する他ありませんでした。なので「企業名・商品名・サービス名連呼型」「オリジナルソング」「タレント」型のCMが横行していましたし、「それで良い」と広告主も言っていました。


実際に、それらが広告対象物の売上に「本当に直結」していた可能性も否定はできませんが、現代において「企業名・商品名・サービス名連呼型」×「オリジナルソング」×「タレント」型のCMを実施することが適する企業・商品・サービスは極めて少ないと思います。


しかしながら、上記の3つの掛け合わせを行い、大量にTVCMを出稿し、CM出稿年度は大赤字になり、その時もその後も商品やサービスが市場浸透せず、資金枯渇に陥っているケースも散見できます。著名クリエイターであってもその結果ですから、著者としては忸怩たる思いで眺めています。


確かに現代でも、「広告のソリューション提供範囲は広告認知率や広告好意度であり、商品が売れるかどうかは広告主の努力次第」と広告代理店が定義することは一般的かもしれません。


著者は、プロモーションに軸足を置きながらもクライアントに対してパートナーとしてビジネス成長に貢献することが多かったため、商品設計や流通戦略も提案範囲だとは思っており、おかげさまで「成長の方程式」らしきものを持つことに成功しましたが、それは総合広告代理店においては「珍しくて変な奴」でしかなかったと自認しております。


適するオリエンは関係者全員を正しい方向へ導く
適するオリエンは関係者全員を正しい方向へ導く


 

ポイント⑦最後に重要なTONE&MANNER


ここで規定しなければならないのは、中心色とフォントを定めるにあたり「すべての表現のもととなる言語」です。たとえば「安心感」だとするならば、自ずと色はブルーで、フォントは明朝、トーンはゆったりとしたようなものになります。


これは何もTVCMなどの広告表現だけのことではなく、デジタルであっても、Web動画、LP、バナーなどあらゆる領域で必要になります。言語を規定すれば、色やトーンやフォントですら、ある程度の範囲内にとどまることになります。


この「言語化による規定」を行わないことが多いこともまた事実です。こういった領域はえてして抽象的かつ非言語的な扱われ方をしますが、「優秀なアートディレクターは言葉を持っている」でもご説明していますが、表現開発は極めて論理的であり言語的な作業なのです。


オリエンシート項目
オリエンシート項目

 

いかなるプロモーション領域においても、これまで記載してきたことをすべて網羅すれば外部である広告代理店との円滑な進行は実現できるかと思いますし、これで対応できないようになると、広告代理店に対して窓口変更依頼をかけた方が良いと思います。


著者は幸いなことに優秀なクライアント担当者に恵まれ、さらに幸いなことに担当者変更を言い渡されたことはありませんが、その理由は適切なオリエンを受けていたからだと考えています。


詳細は「ありそうでなかったオリエンシート入門書」をご一読ください ※営業電話やメールは致しません

また、作成したオリエンシートに自信がある方は問題ありませんが、作成したオリエンシートに不安を覚える方もいらっしゃるかと思います。その場合は、当社にお問い合わせください。成果の得られる広告活動が日本を埋め尽くし、成果の出ない広告活動がゼロになることを期待しております。






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