top of page
  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

ブランドが成長する広告表現の方程式

更新日:2023年3月23日

総合広告代理店時代の17年の間に、著者は、企業ブランド、事業ブランド、商品ブランド、サービスブランドといった様々な「ブランド」を担当してきた。その中で幸運にも成長を遂げ、今や「当たり前」のものとなったブランドも数多く担当する機会に恵まれた。そうした中で、「成長しない」プロモーションについての知見も同時に増えていくことになった。本稿では「成長しない」方程式にフォーカスを充てて説明していく。


目次:ブランドが成長する広告表現の方程式


人口減少をはじめ、少子化に歯止めがかからない日本

世界2020年の日本の人口は1億2650万人で世界ランキングは11位。しかし、問題は人口の多さではない。問題となるのは、少子化である。まず、2018年のデータになるが、出生率は1.42、世界のランキングで182位である。そして、世界銀行が2019年に発表したデータだと、14歳以下の人口比率が、日本は12.84%、世界一位の台湾に次ぐ2位である。いや、ワースト2位と呼ばざるを得ない。有史上、人口減少の中で成長した国がないと言われているが、この少子化は経済的に極めて大きな問題を孕んでいる。シンプルに記載すると、「モノを買う人の母数が減っている、そしてもっと減っていく」ということである。つまり、購入者が減っているということを考えなければならない。


高度経済成長期には商品を発売さえすれば売れた時代

戦後、毎年平均120万人ずつ人口が増え続けた日本は、1980年を境に少しずつ人口増加のトレンドが鈍り、2009年をピークに人口減少に転じている。戦後の高度経済成長期は、少品種大量生産時代であり、富こそが幸せという価値観が蔓延し、富の象徴たる「消費」を何の疑いもなく行っていた。新商品を告知するTVCMや新聞広告やラジオ広告、雑誌広告に目をやり、実際に店舗まで足を運び、富の象徴である商品購入をしていた。人口増加に陰りが見え始める1980年代もバブル全盛期であり、多様化が叫ばれ始めて多品種少量生産ではありつつも、人口が減っていない分、バブル崩壊のその時まで消費性向低下、および消費者が減ることはなかった。



バブル崩壊以降収入が減り続ける日本

2021年になった今、平均収入は約400万円強となっており、バブル期に比べて低いものの、リーマンショックや東日本大震災、そしてコロナという経済に大打撃を与える事象が発生しても、さして変わっていない印象を受ける。しかしながら、あくまで「平均」であって、企業がターゲットにする一般の国民の平均収入は下がり続けている。どういう事かというと、一般の国民の平均収入は下がり続けているが、いわゆる資本家と呼ばれる一部の大金持ちの所得が上がっているがために平均収入は維持できている。これをよく理解するには平均収入ではなく「中央値」にフォーカスしなくてはならない。今の日本人の中央値は370万円程度であり、平均収入の400万円強を大きく下回っているのである。これが何を意味するかというと、人口減少によって消費者の数が減ってしまっているのみならず、さらに一人当たりの消費金額も下がっていることも意味する。収入が減っているため、支出が減るのは当然のことだ。


「良いこと」を伝えようとする広告がワークしない

そういった状況下の日本において、たとえ「良いモノ」であっても、買おうと思わないのが、当然である。大企業のようにある程度収入が安定している広告主が陥りがちなのが、そして高度経済成長期の広告業を謳歌してきた広告クリエイターも誤解しがちなのが、この点である。相変わらず、商品やサービスの「良いこと」を伝え、記憶してもらい、その商品やサービスを売ろうとする。しかし、消費者の財布の紐はきつく、たとえ「良いモノ」であっても、買わないのが当然なのである。この、「良いこと」を伝えようとする努力をしたとしても、サービスや商品の売上が上がることはないのである。この重要なポイントが抜けてしまっていると、著者が総合広告代理店に勤務しているころ、常に感じていたことだ。


買い増しの広告は無意味、買い替えの広告のみ

つまり、一般の国民を対象としていながらも、買い増しを促すような広告は、ワークしないと断言できる。ではどういう広告であるべきかというと、「今支出している何かを、こちらに替えた方が良いですよ」という買い替え提案しか意味をなさないのである。これまでの眼鏡からのスイッチがきちんと見えたハズキルーペのCMなどはその典型であろう。著者はすべてその意識をもってプロモーションの戦略立案を行っているが、幸いなことに担当させていただいたブランドはすべて成長またはV字回復している。この視点を導入するか否かだけではないが、この視点も極めて重要である。



人口減少、収入減少の2大問題が、プロモーションのあり方を問うている。単に認知を獲得することが広告の目的ではなく、商品やサービスを購入または契約してもらうことを目的にしているがため、買い増しの提案をしていないのかの確認作業が必須だと「広告カウンセリング会社」である当社では考えている。当然、それだけではなく、ブランドの大きな戦略の方針がないことも共通項であった。このあたりは、「ブランディングとは」もぜひご覧いただきたい。

bottom of page