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  • 執筆者の写真バイタイム_西村 昭二

複雑化するプロモーション

更新日:2023年3月23日

かつての大企業におけるプロモーションは、マスマーケティングを中心としたものだった。TVCMや新聞広告、雑誌広告、ラジオ広告があり、店頭ツール制作があり、クローズドキャンペーンやオープンキャンペーンなどが中心であった。そこに、2000年代に入るとPRの重要性が叫ばれ、戦略PRが加わる形になる。さらにとても大きなうねりとしてデジタルが加わり、SNSやブランドサイトも加わった。著者も、17年勤めた総合広告代理店において、シンプルだったプロモーションが加速度的に複雑化する中で奮闘していた。「「プロモーション」と「広告」の違い」でも説明してるが、「広告」は「プロモーション」の一部なのである。非常に複雑化する現代のプロモーションについて、本稿では説明していく。


目次:複雑化するプロモーション


増え続けるプロモーション施策のあり方

TVCMや新聞広告、雑誌広告やラジオ広告で認知を獲得し、店頭接点でフェースを取りながらPOP等で誘引し、クローズドキャンペーンで購入に至らせる。それが高度経済成長期における大企業のプロモーション施策の典型だった。しかし時は流れ、1990年代後半からデジタル広告が登場し始めると、たとえばYahooのトップバナーなどで広告を行うことが増え、それが瞬く間に検索連動型広告、いわゆるリスティング広告まで発展し、YOUTUBEの登場、Facebook、LINE、Twitter、InstagramとSNSが隆盛を始める。オフラインを中心としたメディア接点に加え、この20年ほどでオンラインの接点が急増し始めた。


購入接点も増えつづける

1985年には約5800店舗しかなかったコンビニエンスストアも、30年後の2015年には約60,000店舗まで増えている。またGMSといった大型ショッピングセンターも増え続けている。しかしながら目を見張るのは、デジタルにおける購入接点の増加である。2019年に調査会社のニールセンが発表したデータによると、今やモノを購入する際49%の人がまずはAmazonを開いて購入を行うという。日本においては、楽天市場、Yahooショッピング、LOHACOといったECモールでの購入も増え続けている。リアルの購入接点における広告・販促施策については店頭POPやディスプレイ広告が主流であった。オンラインの購入接点が増えたことで、広告代理店の役割も増えている。わかりやすい例が、リスティング広告運用やAmazon内広告運用である。しかもこれらは、広告主にとっては欠かせない経済活動であるため、受発注関係というよりは業務委託やパートナーシップ契約のような様相を呈する関係性になっていく。


複雑化の極みたるデジタル広告の領域

デジタル広告に関する記事はネットの中で数多存在するため、ここでは簡潔に説明をしていくのみとする。デジタル広告には大きく予約型と運用型の2種類がある。予約型は主にリーチ型広告で、認知を獲得するために用いられることが多い。Twitter内の投稿内に掲出されるフィード広告やプロモトレンドと呼ばれるトレンド検索面に掲出される広告(2021年4月に広告メニュー名変更)、Instagramの投稿内に掲出されるフィード広告、ストーリーズ内に掲出されるストーリーズ広告、その他FacebookやLINEなども数多広告メニューが存在する。どのSNSにも予約型と運用型があるが、最近では運用型が増えていることもあり、認知のためにあるのか、コンバージョンを目的にするのかが曖昧になってしまうことも多い。さらに、デジタル動画広告の出稿先といえば、まずはYOUTUBEが最初に選ばれる。YOUTUBEも、マストヘッド、6秒バンパー、15秒インストリームなど、多種多様な広告メニューを揃えている。これらSNS及びYOUTUBE広告はいずれも、ターゲットをデモグラと呼ばれる性年代のみならず、居住地域、興味や過去購入商材データ活用などによって精緻に設定することができ、無駄打ちというものを極力減らすことができる。よって、マス広告よりも効率的であり、昨今ではマスよりもデジタルを初めに考えることが基本である。この複雑の極みたるデジタル広告は「パートナー選び」も重要だ。ネット系代理店選びについては「10社以上付き合ってわかった「ネット系代理店選び」3つのポイント」をご覧いただきたい。



セールスプロモーション、つまりSPも極めて重要

SP専門の会社も日本には多く存在し、広告市場が約6兆円に対し、同額程度の市場規模はあるだろうと言われている。以前はサンプリングやイベントもSPの領域に含まれていたが、コロナの影響で屋外での活動が制約される中、いわゆるフィールドプロモーションビジネスは大打撃を受けている。それでもなお、商品を購入すると特典がもらえるクローズドキャンペーンや購入に関わらずアンケート等のアクションを起こすことで特典をもらえるオープンキャンペーン、店頭POP制作、チラシ、ノベルティ制作など、SPの領域も多岐にわたっており、デジタルとの比較で当然衰退傾向にはあるが、まだまだ需要はある。さらに、デジタルでのSPも増えている。たとえば、LINEや楽天が購入した対象商材のレシートを送付することでキャンペーンに参加できる店頭購入サンプリングメニューを用意しているが、これがデジタルにおけるSPにあたる。


公式SNS運用、ブランドサイト運用の重要性

LINE公式アカウントや公式Instagram、公式Twitterなど、公式SNS運用に力を入れる企業も増えている。ここでの運用は大きく広告主が社内で運用するか、外部に運用を委託するかに分かれるが、SNS運用の専門会社もその数を増している。自社または自ブランドのトンマナを維持しつつ、顧客または顧客候補と日常的に接点を持ち、発話を促すことでの認知率維持や新商品情報、キャンペーン情報の提供によって購入を促すなど目的は様々だが、そのいずれも運用を行わない企業は少なくなっている。しかしながら、「SEOやリスティングが苦手な広告代理店」で説明しているように、この領域への総合広告代理店の苦手意識があるのは事実である。また、ブランドサイトも、企業にとっては極めて重要なブランドの提供価値を定めるルールブックでありながら、同時に購入接点の役割も担う存在である。ブランドサイトにおいては、制作の知識のみならず、SEOという未だ成功の方程式が確立していない分野も知見として必要となる。これら、オウンドメディア領域も重要なプロモーション施策の一環である。


成功すればとてつもない威力を放つPR

最後にPR領域について説明を行う。広告とPRの違いについては「広告代理店とPR会社の違い~最大の違いは「効果の確率」~」で説明をしているが、PRと広告の違いは、端的に言うと主語の違いにある。商品やサービスが主語の広告と、社会が主語のPRである。これはマーケティングにおいてどういう意味を持つかというと、普段置かれている商材のカテゴリー市場ではなく、社会の課題を解決する商品カテゴリーがいくつかあり、自社の商品もそのうちの一つである、という見方をするため、目的ベースの市場を見ることになるのである。メディア、特にTVに取り上げられさえすれば、広告投資の何倍もの売り上げ効果を持つのだが、そこにかかるTV局に出入りするPR担当の稼働や、メディアで取り上げられやすい情報の開発など、想像以上の費用がかかるものの、メディアに取り上げられるかわからないという不透明さがPRの特長である。しかしながら、一度TVに取り上げられれば、その威力のすさまじさに驚くことになる。また、PRは同様にSNS内での話題創出という側面もあるため、デジタルにおけるPR専門会社も登場してきている。


プロモーションは8類型

これまで説明してきたように、広告、SP、オウンド、PRの4類型があり、さらにそれがオフラインとオンラインとがそれぞれあるため、今のプロモーションは8類型あると言える。それぞれに異なる知見が必要となり、ただでさえそれぞれの専門家・スタッフをアサインするだけで広告代理店は日が暮れてしまう。日夜変わり続ける販路やメディアの状況にあわせて、この8類型の中で最適なプランを提案し実行しなければならない総合広告代理店に寝る暇は与えられないのである。




プロモーション8類型について説明してきたが、もっとも大切なことは、広告主の商品、サービスの業種業態、売り上げ目標、中心販路、市場規模、市場トレンド、競合設定などによって、8類型からいかに持続的な売り上げを実現する戦略を組むかや、伴っての予算配分が大事なのであって、決して各戦術のクオリティが大切なわけではない。「広告代理店が「広告全領域の専門家」と思われない理由」でも説明していように、いかにこの複雑なプロモーション領域において適切な戦略立案をするかが、本来の広告代理店の役割なのだ。この点を間違えてしまうことが多いため、著者は「広告トータルプランニング会社」である当社を設立した。各戦術で利益を出そうとするあまりフラットな視点にならなくなるのを防ぐためだ。過去の自分への戒めの意味も込めて全体設計の重要性を今一度説きたく思う。



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